森林貸し出し 地域活性化
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毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は「森林貸し出し」という、ちょっと不思議な取り組みの記事に注目しました。
森林を貸し出す「forenta(フォレンタ)」とは!?
これは、森林をキャンプ愛好家などに有料で貸し出す、というサービスなのですが、このサービスを始めた岐阜県東白川村の木材製材会社「三共」の社長で、森林レンタルの「forenta(フォレンタ)」を運営している、シシガミカンパニー代表取締役CEO、田口房国さんに、なぜ、森林のレンタルを始めたのか、お話を伺いました。
シシガミカンパニー代表取締役CEO 田口房国さん
「コロナのときにアウトドアがブームになって、その代わり全国のキャンプ場がすごく混雑しているという状況があったんですね。その中で、もう森林を買って自分専用のキャンプ場にしたいっていうような動きがあったんですけれども、そのニュースを見た時に、森林を買うというのは管理をしていくのも大変ですので、借りてそこでキャンプをするような仕組みができれば、山村も賑わいが生まれますし、キャンプをされる方もいいんじゃないかなと思って、このサービスを考えました。
なかなか木材生産だけですと、収入が多くなかったりで、それで、もう森林を手放してしまいたいという森林所有者の方も、今、日本中に多くいらっしゃって、そういった森林を開放して、一般の人にも使ってもらうという仕組みを作ることで、この森林の維持管理というのにも役に立つんじゃないのかなと思ってます。」
たしかに、森林を買うのはハードルが高いですよね。買うとなると維持管理も大変ですし、例えばキャンプ熱が冷めてしまって、放置されると、地元が迷惑を被ってしまいます。そこで、フォレスト(森)をレンタルする、「フォレンタ」を思い付きました。
一区画は約200坪。年間契約で6万6千円。使われていない森林を、貸しています。
コロナ禍の2020年に始めたこのサービス。初回は17区画用意して、応募を開始しました。
田口さんは、「自分でサービスを考えておいてなんですが、水道も電気もない、整備もしてない森を借りる人がいるのか?」と、かなり不安だったと振り返ります。しかし、ふたを開けてみれば、17区画に対して440組も応募があり、何もしてない森をお金を払って借りたい人がこんなにいるんだ!と本当にびっくりした、と話していました。
めちゃめちゃ楽しい!仲間内では仙人とか言われてますけど
では、実際に、コロナ禍にキャンプ場の予約取れないことをきっかけに、森林レンタルを始めたという、愛知県在住の68歳、大嶋俊彦さんにその楽しみを伺いました。
forenta利用者 大嶋俊彦さん
「ホントの山の斜面そのまま貸すという形だったので、最初の一年は笹を刈ったり、平らな所を作ったり、キャンプと言いながら長靴履いて農作業みたいな形でずーっとやってたんですけど、いやあ、めちゃめちゃ楽しいですね、やっぱり自分でやるのは。荷物置き場を作ろうとか、自然の木とかで自分の小屋を作って泊まったり、うん。
森に行くと自然の中で、焚火を見つめて、食べたいもん食べて、のんびり鳥の声とかそういうのを楽しんだり、あの、月が満月だと、森の中に月明りが差し込むんですよ、夜。そうすると刈ってない笹なんかが光に反射して白く浮き上がるんですよ、そういう幻想的な世界も見えるし、星がうわーっといっぱい見えるんで、外で寝転んで星を見たりしますけど、そんな色んな変化があるんで、楽しいですよね。まあ、仲間内では仙人とか言われてますけど、森の中で(笑)。」
(こちらが大嶋さんの森。秘密基地、と大嶋さんは呼んでいましたが、まさに!ですよね!)
(小屋の背面はコケを葺いて、森に調和するよう工夫しています。 写真は大嶋さん提供)
整備が一段落して、今は、森での静かなゆとりの時間を楽しんでいる大嶋さん。今年で森を借りて5年。行けば行くほど、自然の中に居ることの心地よさに、ハマっているようでした。(およそ8割の人が継続更新をしているそうです。やっぱり、楽しいんですね~!)
また、通っているうちに、村の人と顔見知りになり、薪を持って行っていいよ、とか、おばあちゃんが作った笹寿司をお裾分けされたりといった交流も生まれています。
貸し出す前より、森の中が綺麗になっています!!
森を貸している山主さんにはレンタル料が入り、年間で数十万~100万円以上の収入になる人もいて、山主さんや林業者の副収入としてとても良い仕組みになっている、この森林のレンタル。
初めてみて分かった利点もあったと田口さんはおっしゃいます。
シシガミカンパニー代表取締役CEO 田口房国さん
「僕も始める前に、例えばそこがすごいゴミ捨て場みたいになっちゃたらどうしよう、とか、不法投棄とかあったらどうしようとかって思っていたんですけど、逆にキャンパーのみなさんが、ゴミはすべて自分たちで持ち帰ってもらってますし、自分たちで草刈りなんかもしてくれてますし、貸し出す前に比べて、非常に森の中が綺麗になっていっているというのが現実で、不法投棄なんかはホントに減りましたね。
そうなんです、森林のある所っていうのは、気づくと、どっか、誰かがゴミを捨てていくんですよね。今まで、例えば『不法投棄やめましょう』って看板立てたとしても、もうそんなのお構いなしで、電子レンジが捨ててあったりとか、やっぱり人が来ない、誰も見ていないと思うから、そういう所に不法投棄が起きてしまうわけですけれども、そういう風に貸し出すことによって、そこに誰かがいるかもしれないと思うと、わざわざそこでゴミを捨てる人もいないので、それはやってみて、逆に気づかされたことでしたね。」
森に捨てられるゴミも減りました!人の出入りがある、人の気配がある、というのは大きな影響があるんですね。
また、田口さんのいる東白川村もそうですが、観光資源が少ない山間地は、ここをゴール地点にする人が少なかった。しかし、森を貸し出すことで村が集客拠点になってきました。
森林の存在価値もあがり、人流も増える、ゴミも減る。良いことがたくさんの森林レンタルは、他の地自体からも注目が高く、問い合わせが続いています。田口さんたちは、そのノウハウを提供してフランチャイズ契約し、現在16の道府県にフォレンタは広がっています。使われていない森林は全国にたくさんあることもあり、3年後に全都道府県制覇が目標だそうです。
人と森がちょうどいい距離でいられるこうしたサービスは、昨今問題となっている、獣害などを減らすためにも役に立つと田口さんは話していましたから、こうした取り組みがぜひ、ますます広がってほしいですね。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)