賃上げ パート・中小企業に波及 日銀の利上げの動きに懸念
7月9日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、パート・中小企業の賃上げについて意見を交わした。
今後は「日銀の利上げ」で地方の中小企業にショックを与えかねない!
厚生労働省が7月8日公表した毎月勤労統計ではパートタイム労働者の給与が増加した。同日には、日銀が中小企業にも賃上げが広がっているとの声を盛り込んだ地域経済報告(さくらリポート)もまとめた。
毎月勤労統計によると、基本給にあたる所定内給与は5月に前年同月比2.5%増えた。伸び率は31年4カ月ぶりの高さだった。実質賃金はなおマイナスだが、春季労使交渉での賃上げの成果が反映されつつある。特にパートタイム労働者の時間あたり給与は1328円で前年同月比4.0%増となった。
正社員の賃上げは年1回が基本なのに対しパートの時給は月ごとに変わることがあるため、労働需給の逼迫がリアルタイムに反映されやすいといわれる。
(寺島アナ) 「深刻な人手不足に企業は賃上げで対応している、と見て良いんでしょうか?」
(田中氏)「そうでしょうね。ただ、専業主婦でパートやアルバイトをしている人は、賃金率を上げても労働時間自体を増やすことをそれほどしない傾向が強い、と言われているんです。つまり一定時間働いて収入が増えるのは良いんですけど、人手不足を解消するほど、企業の都合がいいように労働時間を増やすことはしないと言われています。人手不足解消効果は分かりませんが、家計を支える点では賃金が上がれば、物価高ですから家計の補助には十分なりますから、いい傾向だと思います」
日銀が公表した7月のさくらリポート。全国9つの地域のうち「北陸」と「近畿」の2つの地域で景気判断を引き上げました。「北海道」「四国」の2つの地域で判断を引き下げ、他5つの地域では前回から据え置き。
前回4月時点では支店長会議を終えた日銀の評価、「期待できる情勢にある」だった。今回は実際に地方の中小企業に広がる様子が確認でき、昨年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりが見られる、と一歩前進している。
(寺島アナ)「7月のさくらリポート、これは田中さん、どうご覧になりますか?」
(田中氏)「地方の中小企業に賃上げの動きが広がったのはとても良いですが、それを日銀のさくらリポートが強調し始めているのが非常に懸念なんですよ。なぜなら日本銀行は利上げしたいわけです。利上げ自体が目的化していますから、こういった賃上げがあるとコスト高になって物価に乗っかって、物価がさらに上がっていく。だから利上げするという話になっちゃいます。利上げすると当然、経営の体質が弱い地方の中小企業にショックを与えかねないので、今後はむしろ日銀自体が妨害するんじゃないか?と懸念しています」
〈出典〉賃上げ、パート・中小企業に波及 日銀「地方で浸透」 | 日本経済新聞(https://www.nikkei.com/)