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ローソンも実験店舗で導入 ワンストップで「レジなし店舗」を実現するZippin

TECHBLITZ

既存の店舗インフラを活用し、導入コストを抑えて「レジなし店舗」を実現するZippin(本社:米カリフォルニア州)。AIや視覚認知技術を搭載した自動決済システムやカメラ、商品棚の重量センサーなどを組み合わせるシステムをワンストップで開発・提供している。日本ではローソンがオフィス内店舗(富士通新川崎テクノロジースクエア、神奈川県川崎市)に導入しており、今後の日本市場での本格的な展開が期待されている。Zippinの共同創業者でCEOのKrishna Motukuri氏に話を聞いた。

システム導入で人件費を15〜20%削減

―Zippinのサービスの全体像について教えてください。

 Zippinは、入店ゲート、商品棚、在庫管理、決済機能など「レジなし店舗」を実現する上で必要なインフラを開発しています。レジなし店舗を可能にする一連のテクノロジーをワンストップで提供しているのが特徴です。客は入店ゲートで決済カードなどをかざし、欲しい商品を手に取って、そのまま出口から退店すれば買い物が完結します。

 現在は世界の100店舗以上でZippinの導入が進んでおり、通算250万人以上がZippinを介して買い物をしました。主な店舗フォーマットはスタジアムや空港、駅、大学、オフィスに併設されている小型店舗で、店舗面積は10平方メートルから200平方メートルといったサイズ。これらの店舗で販売される約4000品目に対応しているほか、技術的には1〜2万品目を展開する大型店舗でもZippinを導入することができます。現在の主戦場は小型店舗ですが、今後は大型店舗でも導入を進めていきます。

―小売店にとってはZippinを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

 大きく分けて3つあります。1つ目は、収益性向上につながること。例えば、スタジアムの店舗でZippinを導入したところ、売上が平均78%アップしたというデータが出ています。小型店での買い物は買い物体験を楽しむというより、「物を買う」ことが直接的な目的ですから、「レジで並ぶ」という不快な体験を回避したいという欲求が強く働くのでしょう。スタジアムが典型例で、みんな早くビールを買って試合を観たいと思っているのではないでしょうか。

 2つ目は、コスト削減になること。昨今は人手不足で人件費が上がっていますが、レジなし店舗を導入すれば、人員にかかるコストを削減できます。Zippinを導入した店舗では平均して15〜20%程度人件費を減らせています。

 最後に、小売店にとって比較的導入しやすいプラットフォームであることです。Zippin対応店舗へと「生まれ変わる」には、天井に設置するAIカメラ、店舗の出入口に設置するゲート、重量センサー搭載の商品棚などを導入すればオッケーです。つまり店舗自体をイチから作り直す必要がないのです。低い初期投資で導入できるZippinは企業にとって検討しやすいオプションと言えるでしょう。

image: Zippin

DXの波にのる日本の小売業

―Zippinを創業したきっかけはなんだったのですか。

 約10年前、外出中に妻から電話がかかってきて「家の牛乳がなくなったから、帰りに買ってきて」と言われ、行きつけの食料品店に立ち寄ったのですが、夕方ということもありレジに長蛇の列ができていました。牛乳のために5分間並ぶ気には到底なれなかったので、車をUターンさせて別の店で安い牛乳を買って帰宅しました。

 帰宅すると妻は不機嫌でした。私が買った牛乳がオーガニックではなかったからです(笑)。その時の体験を元に、レジに関する調査を進めると、全体として、米国人は年間100時間以上もレジで待っていることを知ったのです。そこで、この問題の解決に取り組んでみようと決意しました。

Krishna MotukuriZippinCo-Founder & CEOUniversity of Illinois Urbana-ChampaignでComputer Scienceの修士号を取得後、AmazonでAssociate Directorを務める。2006年に書籍検索サイトのuGenieを共同創業し、CEOに就任。2012年からは、Naspers GroupのEC事業南米部門でCEOを務める。2014年10月にZippinを共同創業し、CEOに就任。現職。

―日本では富士通とはパートナーシップ契約を締結し、ローソンが2020年春に実験店舗をオープンしました。NTT Docomo VenturesはZippinに投資しています。日本市場進出にも精力的ですね。

 日本市場は当社にとっても魅力的な市場です。高齢化で人手不足という小売業にとって世界でも普遍的な課題を抱える日本は、Zippinのようなプラットフォームの導入に非常に向いていると実感します。

 特に、日本の小売業は、新型コロナウイルスのパンデミックが明けた2023年からすごい勢いで店舗DXを加速させていると実感しています。Zippinは米国では2021年に急速に導入店舗数を拡大させましたが、今その熱が日本に移っていますね。

決済パートナーを増やしたい

―日本ではどのような業界との接点を持ちたいと考えていますか。

 第1にリアル店舗を有する小売店でしょう。コンビニエンスストアはもちろん、空港や駅、オフィス、スポーツ施設のキオスクにも関心があります。

 第2に決済パートナーである金融機関です。われわれはAmerican ExpressやMaster Cardといったブランドと契約しているほか、富士通の決済システムを通じてSuicaにも対応しています。日本にはその他にも主要な決済手段がいくつもありますから、それらを提供している金融機関とも話がしてみたいです。

―具体的に日本の大企業とのパートナーシップを組むことを考えた場合、どのような形態が理想でしょうか。

 最も重要なのはZippinの技術をシームレスに導入できる企業です。ですから、日本の小売市場を知り尽くした代理店契約は考えられますね。

 それと、フィンテック関連企業との戦略的提携も考えられます。形態というよりも、実際に技術をスムーズに動かせる相手を希望しています。

―日本はコンビニエンスストア市場が大きく、各社とも都市型の小型店舗の開発に力を入れています。Zippinの導入は期待できるのではないでしょうか。

 世界的に見ても、日本のコンビニエンスストア市場は巨大ですよね。小型店舗でわれわれは多くの実績を残しています。例えば、現在、米国の全スタジアムの店舗のうち30%の店でZippinが導入されています。Zippinは他の無人店舗ソリューションとは異なり、ソフトウェアアップデートや防犯機能も搭載しているほか、遠隔での操作も可能と、使い勝手の良さが特徴です。日本市場の支持も獲得できる自信があります。

工場、ジム、病院…広がるZippinの可能性

―最後に、今後の目標を教えてください。

 コンピューティングの力を物理的空間に広げる第一人者になることです。われわれのやっていることを一言で表すとアンビエント・コンピューティング(コンピューティングの力を日常生活に融合させることで、顧客の目には見えないが利便性が高まる概念のこと)だと言えます。

 例えば、AIカメラは顧客の行動を追跡していますし、商品棚は重量センサーがあることで、商品の在庫管理を担っています。これらの技術は全てコンピューティングの力を利用していて、顧客は気付きませんが、買い物体験は非常に便利になっているのです。

 現在のところ、Zippinの技術は買い物に最適化されていますが、本質的には3次元の空間であればどこにでも導入できます。例えば、工場や倉庫、ジム、病院、銀行など。今後は、こうした場所にも当社のテクノロジーを活用していきたいですね。

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