クレープが食べられる柏崎市のお花屋さん「りとるがぁでん萌」。
今年30周年を迎え、現在の店舗では20年以上営業を続けている柏崎市の生花店「りとるがぁでん萌」。昨年からはクレープの販売をはじめ、併設するスペースにはカフェ「Opus(オーパス)」がオープンしました。お店の遍歴やクレープ販売をはじめた理由など、オーナーの中村さんにいろいろとお話を聞いてきました。
りとるがぁでん萌
中村 洋子 Yoko Nakamura
1967年柏崎生まれ。地元企業で8年間働いた後、知人が経営する生花店に勤務。その後、独立し「りとるがぁでん萌」を立ち上げる。2025年3月に30周年を迎えた。
同期へのウェディングブーケ作りが、花屋さんへの入り口。
――中村さんが、お花の仕事をはじめたきっかけを教えてください。
中村さん:会社勤めをしていた頃の同期が結婚するとき、「ウェディングブーケを作って欲しい」と頼まれたんです。といってもお花をいじったことはなかったんですけどね。手先が器用だったので、作れるんじゃないかということで。
――ウェディングブーケを作るなんて、大役ですよ。
中村さん:「さぁ、どうしましょ」困りました(笑)。でも、いとこがお花を教えてくれる先生を紹介してくれたんです。それでしばらく先生と生徒という関係でお世話になっていたんですけど、あるとき先生がお花屋さんをはじめることになって。私は、結婚を機に会社を辞めるつもりでいたので、「何かできることがあれば手伝います」と先生のお花屋さんで働きはじめたんです。
――そういうご縁でお花屋さんで働くことになったわけですか。
中村さん:でもその頃の私には、生花の知識なんてありません。だから結局、役立たずで。「このままじゃダメだ」と思って、働きながらフラワーアレンジや花束の作り方を習うためにいろいろ学びました。先生のところで3年働いて、独立したのは30年前です。
――「いつか独立しよう」という気持ちはあったんですか?
中村さん:その考えは、持っていなかったんですけどね。でも働くうちに「自分が経営者になってもいいかもな」と思うようになったんでしょうね。すごく小さいスペースでしたけど、物件が空いたと聞いて、そこで「りとるがぁでん萌」をはじめたんです。最初の場所では、8年営業しました。
「くすみカラー」が得意な理由。
――お花屋さんの仕事には、どんなおもしろさがありますか?
中村さん:最初のきっかけは「先生のお手伝いをしよう」でしたけど、それから花の魅力に取りつかれたんですよね。見た目が美しいし、お花を束ねているとワクワクしてくるんですよ。それに種類がとても豊富でしょう。「無限に組み合わせの可能性があるんじゃないか」と思うくらい。
――お店によって、扱っているお花にカラーがあるような気がします。
中村さん:だんだん自分のカラーができあがってくるんですよ。「萌」の場合は、ちょっとアンティークっぽいくすんだ色使いに「らしさ」があると思います。お客さまから「萌さんっぽい」と言っていただくのは、そういうお花ですね。
――「りとるがぁでん萌」さんならではのお花があるんですね。
中村さん:他のお店には並んでいないお花を仕入れているんです。花屋の大定番、バラ、ユリ、かすみそうは、置いていません。チューリップは、咲き方が変わっているものとか落ち着いた色合いのものとかを選びます。
――それには、どんな狙いがあるんですか?
中村さん:そう「している」っていうより、そう「なっちゃった」んですよ(笑)。お花を売っているところって、お花屋さんだけじゃないんですよね。スーパー、ホームセンター、物産店、八百屋さんの店先にもあったりして。柏崎市内にもいくつもお花屋さんがありますけど、それぞれ得意分野があるように私は思っているんです。「『りとるがぁでん萌』はアンティークカラーを得意としていこう」とあえてそうしてきたわけじゃなくて、他のお店にない特色を求められた結果、こういうテイストにたどり着きました。
週のはじまり、2日間だけ食べられるクレープ。
――「りとるがぁでん萌」さんでは、クレープも売っていますよね。
中村さん:この建物には「りとるがぁでん萌」と「Opus」さんというお店が入っています。でも数年前まで、「Opus」さんのスペースには、私の姉と息子が切り盛りするカフェ「PEACE」があったんです。「カフェのある花屋」「花屋のあるカフェ」と相乗効果があったんですけど、コロナ禍で飲食店営業が厳しくなったので一旦カフェは閉じたんです。
――確かに2つお店が営業できるくらい、立派な建物です。
中村さん:コロナ禍が落ち着いてきてからは、お客さまからカフェ再開の要望を度々いただくようになって。でも姉も当時のスタッフも別の仕事に就いていますし、私には人を雇ってカフェをはじめる元気もない。「既存の厨房設備を使って、自分にできることはないかな」と考えた結果、クレープのテイクアウトであればできそうだと思ったんです。お花屋さんは、月曜日と火曜日に少しゆったりできるんです。それで、月・火にクレープを焼くことにしました。
――週に2日だけ楽しめる味ですね。
中村さん:クレープがきっかけでここを知ってもらえることもあるんですよね。それがすごく嬉しくて。私、どんなかたちであっても、この建物をずっと閉じないでいたいと思っているんです。
――素敵な建物なので、思い入れがあることに納得です。
中村さん:「Opus」さんが隣のスペースを借りてくれることになったとき、オーナーの猪浦さんに話したことがあるんです。「ここを絶えず誰かが来て、楽しめる場所にしたい」って。お花屋のくくりに限らず、「この場所に来たら楽しいことがある」「癒される空間だよね」とみなさんに思って欲しくって。理想としては、私たちができること以外を得意とする方にも、どんどんこの建物に関わってもらいたいと思っているんです。お花屋さんと関係なくてもオッケー。この前はライブの開催もしたんですよ。
りとるがぁでん萌
柏崎市田中3-4
0257-21-7495