罹患者数1位のがん
3月は大腸がんの啓発月間。公益財団法人日本対がん協会によると、2020年の部位別患者数は、14万7725人で大腸がんが1位となっている。また、死亡者数は、2023年で5万3131人で肺がんに続き2位となっており、私たちにも身近な病気だ。ただし、早期に発見して治療すれば約90%で完治が望めるといわれており、医療機関は検診を呼び掛けている。
大腸は、水分の吸収を行い便を作る役割を担っており、最大で1日6リットルの水分を吸収できるとされている。全長は約1・5mから2m、直径約5〜7cmで、盲腸、結腸、直腸に区分され、結腸はさらに、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられる。
大腸がんは、その大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがん。便が長い間貯留しているS状結腸と直腸にがんができやすいといわれている。
食生活が要因
日本では昔と比べて肉類、卵、乳製品など、脂肪分や動物性たんぱく質の摂取が増えている一方で、腸内環境を整える役目を果たす食物繊維などの摂取量が減少している。これが大腸がんの発症に影響しているとされ、便が腸内に長時間とどまり、それだけ腸内の粘膜に発がん物質などが接する時間も長くなることが原因という。
食生活では、穀類や豆類などの食物繊維が多く含まれる食事を摂っていると大腸がんになりにくいという報告もある。緑黄色野菜にも大腸がんの危険度を下げる効果があるという。
早期の症状はない
大腸がんは進行すると、腹痛や出血、便秘や下痢、便が細くなる、残便感があるなどさまざまな症状があらわれるが、排便時の出血で異常に気付くことが多い。肛門に近い場所の出血は赤く鮮明だが、遠い場所では黒っぽく変色する。血液と粘液が混じっていることもある。早期の大腸がんは無症状なことが多い。
検査と治療
自覚症状のない大腸がんを見つけるため、大腸がんの危険年齢に差し掛かる40歳以上を対象に「便潜血検査」による検診が市区町村単位で実施されている。検査結果で「潜血陽性」となった場合は、医師に相談し、大腸内視鏡検査を受けることになる。
内視鏡などの検査で腸内の壁が隆起したポリープが見つかったら、大腸がんの危険信号。数mm程度の小さなものであればまず心配はなく、1cm以上の大きさになったものは切除し、早期の大腸がんの多くはこれで完全に完治することができるといわれている。
ブルーリボン
大腸がんの啓発活動のシンボルマークはブルーリボン。3月の啓発月間では、日本各地のシンボルマークであるような建築物で、啓発カラーのライトアップが行われる。川崎市でも、今年、3月1日から5日まで、市役所の本庁舎が啓発シンボルカラーであるブルーにライトアップされた。
川崎市の状況
宮前区医師会の中田雅弘会長によると、2022年度の川崎市大腸がん検診の受診者は7万276人で、要精密検査者は5602人(8・8%)となっている。その中で、精査受診者は3472人(61・2%)で、大腸がんと診断されたのは232人だった。
中田会長は「国の3年に1回の大規模な調査では、がん検診受診率は51・3%に対し、川崎市の2020年度の受診率は18%、2021年度は16・9%(推計値)です。この数字を皆さんどう思いますでしょうか?大腸がんは早期に発見すれば95%以上で十分な余生が過ごせます。市内の検診協力期間は388ありますので、ぜひ利用していただければと思います」と呼び掛けている。