取り壊しが決まった庁舎に「ありがとう」の気持ちを込めて。まるごとペインティングアート開催【山口県周南市】
山口県周南市鹿野(かの)で、2025年6月15日に開催された「まるごとペインティングアート」。
イベントの舞台になったのは、1971(昭和46)年に鹿野町役場として建築され、合併後は周南市役所鹿野総合支所として地域を見守ってきた旧庁舎です。解体が決まった今、「最後に何かできれば」という思いから、地元住民で構成される鹿野地域活性化研究会と、周南市の主催で行われました。
当日の朝は、曇り空のスタートとなりましたが、やがて青空が顔をのぞかせ、会場には子どもたちの声やかつての思い出を語り合う声が聞こえてきます。
外壁や室内には、5月下旬から少しずつ絵が描かれはじめ、イベント当日には会場を訪れた地域の子どもたちが、手形やゲームのキャラクター、鹿野にちなんだ動物や風景など、思い思いのイラストで旧庁舎を彩っていきました。
旧庁舎外壁には地域の方が書いた力強い書を囲むように描かれた手形やイラスト、窓には桜をイメージした紙に、感謝の思いを込めたメッセージが寄せられていました。
庁舎内に入れば、総合支所長室を鹿野こども園の園児たちによる川をイメージした手形アートが彩り、床面にもたくさんのイラストが描かれていきます。
庁舎裏の駐車場では、風船や水鉄砲、バケツを使った大胆なペイントも行われ、旧庁舎の建物全体が鮮やかに染め上げられました。
まさに旧庁舎を「まるごと」アートで染め上げた一日。きっと、たくさんの人の記憶に残る時間になったと思います。
自分にとっては、旧庁舎は「生まれた時からそこにあった」存在です。すでに旧庁舎は解体が決定し、工事に備えて敷地内への立ち入りは禁止されています。
しかしながら、こうして多くの人が集まり、絵や寄せ書きという形で別れの思いを寄せたことは、忘れがたい記憶となりました。
もう、二度と同じように写真に収めることはできない……そう思うと、これまではなんとも思わなかった景色でさえ、とても貴重なものに思えて、何度もカメラのシャッターを切っていました。
記念写真に並んだ笑顔の一人ひとりが、旧庁舎に感謝の気持ちを込めて見送った一日。50年以上にわたり鹿野を見守ってくれた旧庁舎に、心からのエールを送りたいと思います!