水族館のラッコが消える?一方で北海道では野生のラッコを確認!
政治も、経済も、スポーツも、生活情報も。新聞を読まなくても今日のニュースがわかる、自分の視点が持てる!首都圏で一番聴かれている朝の情報番組。
きょうは水族館の人気者についてのお話です。今月、「水族館のラッコが死んだ」というニュースがあったんですが、じつは近い将来、国内の水族館でラッコが見られなくなるかもしれません。
国内の水族館のラッコ、残りはたったの2頭
この件について、この1月までラッコの「リロ」を飼育していた福岡県にある水族館「マリンワールド海の中道」の副館長、岩田 知彦さんに伺いました。
「マリンワールド海の中道」副館長 岩田 知彦さん
今回死んだラッコのリロですけども、年齢は17歳。今度の3月で18歳になるような子だったんですけども、1月3日からちょっと容態が悪くなりまして、4日に亡くなるということになりました。人間に換算したら70~80歳くらいかなっていうふうには思ってたんですけども。
以前は非常に人気動物でしたので、国内であちこちで飼育してましたので、本当にちょっと20~30年前の記憶だと、ラッコは水族館にいて当たり前ぐらいのイメージで皆さん持たれていたかと思うんですけれども、だんだん世代を重ねる度に繁殖率が落ちていきまして、最終的にはほとんど繁殖しなくなったということですね。
うちが死んでしまいましたので、残ってるのは三重県の鳥羽水族館に、メスが2頭いるだけですね。オスはもう、リロが最後でしたね。
<ラッコのリロ①(2024年11月ごろ)>
<ラッコのリロ②(2024年11月ごろ)>
現在は水槽の横に献花台が設置されて、遠方から花を手向けに来るお客さんもいるそうです。
ラッコが日本にやってきたのは、およそ30年前。1994年には、全国28施設で122頭が飼育され、ラッコは水族館の人気者として親しまれてきましたが、その後は減少。この福岡の水族館でも、かつて6頭いたラッコが、ついにゼロになりました。
現在、国内にいるラッコは、三重県にいるメス2頭。最後のオスがいなくなったことで、国内の水族館での繁殖は、事実上不可能になってしまいました。
日本にラッコを輸入することは原則できない
でも、どうしてここまでラッコが減ってしまったのか?ラッコはアラスカなど極寒の地域に生息する動物なので、「それならまた新しいラッコを迎えればいいのでは?」と思うかもしれませんが、簡単にはいかない事情があるようです。
「マリンワールド海の中道」副館長 岩田 知彦さん
それまでは大体アメリカから輸入してきてたんですけれども、アメリカがいろいろな事情によって輸出することを認めなくなったと。
元々ラッコ自体は「ワシントン条約」で、輸出国が認めれば輸出できる動物だったんですよ。ですからアメリカ政府が許可を出して輸出するという形で続いてたんですけれども、だんだんアメリカ自体がその環境保護に関して非常に敏感になってきたということがあって、なかなか許可は出せないという形ですね。たしか日本に入ってきたのは1998年が最後だったと思いますけれども。
「ワシントン条約」によって国際取引が規制されたことで、一大生息地「アラスカ」があるアメリカから日本へのラッコの輸出は、許可がおりなくなりました(1998年)。
さらに、2000年には「近い将来、絶滅の危険性が極めて高い」ということで、国際的な自然保護団体によって、ラッコが絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されています。
一方で、国内では水族館同士が協力し合って、でラッコの貸し借りを行う「お見合い大作戦」で繁殖を試みたんですが、ラッコは神経質でデリケートな生き物。残念ながらうまくいかなかったようです。
加えて、人間と同じようにラッコも高齢化が進んでいて、繁殖の見込みもなくここ数年は打つ手なし。
この問題はラッコに限ったことではなく、動物園のゾウやゴリラなどほかの動物もどんどん高齢化。このままだと、直接目にすることができない動物が増えていくのではないかと心配されています。
北海道にラッコが帰ってきた!100年越しの復活
輸入も繁殖も困難な状況で、打開策はあるのか?そんな中、日本のラッコに希望をもたらす動きが北海道で確認されています。「根室市歴史と自然の資料館」の学芸員、外山 雅大さんに伺いました。
「根室市歴史と自然の資料館」学芸員 外山 雅大さん
今、北海道の道東の沿岸=根室~釧路町ぐらいにかけての沿岸部や、沿岸から近い無人島の周辺などで、「野生のラッコ」が繁殖するのが確認されるようになっています。
ラッコっていうのは昔、一回、北海道から姿を消してしまっているんですよね。18~20世紀の初頭に毛皮を目当てに乱獲されてしまって、北海道を始め世界中の多くの生息地で姿を消しちゃったんですよ。
その後、わずかに生き残っていたラッコたちが少しずつ数を増やしてきて、北海道でもまた長い年月かけて見られるようになってきたというような実情ですね、今現在。「あ、本当にいるんだ!」と言う感じで、喜んで大騒ぎをした記憶があります。
ラッコはもともと北海道にいたのですが、乱獲で一度ゼロに。それが2014年ごろから、北海道浜中町の霧多布岬(きりたっぷみさき)などで、繁殖が確認され始めています(千島列島周辺からやってきたと考えられている)。
ただ、国内でラッコの捕獲を禁止する法律が制定されているため、基本的に野生のラッコを水族館に連れていくことはできません。野生のラッコが復活したのは喜ばしい反面、水族館は、ラッコのような人気動物頼みの集客から、脱却する時期かもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)