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「買って住みたい街ナンバーワン」の勝どき駅で進められている「勝どき東地区再開発」とは

LIFULL

なぜ、勝どきは「買って住みたい街」でナンバーワンなのか?

勝鬨橋 ※出典:ponoponosan / PIXTA(ピクスタ)

LIFULL HOME’Sが毎年公表している「住みたい街ランキング2024(首都圏版)」で1位である「勝どき」。2020年から5年連続で首位をキープしていることはご存知だろうか。

勝どきエリアは、隅田川と朝潮(あさしお)運河の間に位置している埋立地で、東京港の埋立事業により街並みが形成された歴史を持つ。1894年に現在の勝どき1〜4丁目が、1913年には現在の勝どき5・6丁目が誕生し、港湾施設や工場・倉庫などに加えて、勝どきエリアで働く方々の住宅や商店などの生活サービス施設が混在する街として発展してきた。

また、勝どきエリアといえば、隅田川に架かる「勝鬨橋」が象徴的ではないだろうか。「勝鬨橋」は、1940年に完成、現在では、大型の船舶が通ることができる跳開橋(ちょうかいきょう)としての役割は終えている。しかし、当該橋は国の重要文化財に指定されており、勝どきエリアの歴史を見守ってきた土木遺産の一つを成している。

さらに、勝どきエリアは、周辺エリアとともに歩んできた歴史があり、都営大江戸線「勝どき駅」を中心に、北東側には、月島・佃島エリア、南西側にはで豊海エリアが広がっている。現在、勝どき地区は、中央区の中で人口が最も多いエリアで、全人口の約16%・約3.1万人が暮らしている。

パークタワー勝どきミッド1F(A5出口) ※2025年6月撮影

なぜ、これほど勝どきエリアは人気なのか。一つは、「銀座」や「築地」、「八重洲(東京駅)」などへ徒歩・自転車圏内という圧倒的な都心への近接性と、中央区という名のブランド力。また、都営バスや都営大江戸線に加え、TOKYO BRT(バス高速輸送システム)が整備されており、職住近接を重視する人々のニーズに適合していることに人気の理由があると考えている。

さらに、大規模再開発により住環境が整っていることも大きな魅力の一つといえ、広々とした歩道や公園などの公共空間、潮風香る運河など、都心に近接しているエリアとは思えないほど潤いのある空間が広がっている。余談だが、肌感覚として筆者が約15年ほど前に東京港の整備に関する仕事に携わっていた頃よりも湾内の水質はさらに改善しているように思え、湾岸エリアの住みやすさに寄与しているではないかと感じる。

話を戻し、再開発により誕生したタワーマンションの足元にはスーパーや子育て支援施設、診療所、飲食店などが充実し、エリア内で快適な暮らしが完結していることも魅力といえる。これらに加えて、将来性への期待感が人気を後押ししていると考えられる。

ご存知の人も多いかも知れないが、隅田川を挟んで位置する徒歩圏内の築地市場跡地の再開発計画や、将来的な「つくばエクスプレス(TX)延伸」計画が実現すれば、交通利便性とエリア全体のブランド価値は飛躍的に向上する可能性がある。勝どきエリアは、こうした「交通」「生活利便性」「将来性」の三拍子がそろっていることが、特に都心で働く子育て世代のファミリー層や、パワーカップルから絶大な支持を集める理由といえる。

勝どきの姿を変えた「勝どき東地区市街地再開発」の全体像

正面:パークタワー勝どきサウス、パークタワー勝どきミッド ※2025年6月撮影

勝どきエリアでは、これまでに「勝どき一丁目(1992年認可/1996年建築工事完了)」、「勝どき6丁目(2004年認可/2008年建築工事完了)」、「勝どき駅前(2006年認可/2010年建築工事完了)」、「勝どき5丁目(2011年認可/2016年建築工事完了)」の4つの市街地再開発事業が行われ、約5,000戸の住宅が供給されてきた。

さらに、現在、事業が進められている「勝どき東地区(パークタワー勝どき)」での市街地再開発事業では、約3,300戸の住宅供給が予定されている。このうち、「パークタワー勝どきサウス」ならびに「ミッド」については、2023年に完成している。それぞれの総戸数は1,665戸、1,121戸と、合計で約2,800戸近い住宅供給が行われている。

大規模な市街地再開発というだけあり、再開発でもたらされた広々とした公共・広場空間が広がっている。また、市街地再開発事業に合わせて再開発施設と直結している駅出口(勝どきA5出口)や晴海地区とをつなぐ歩道橋(黎明橋)が新設されている。

解体工事の状況 ※2025年6月撮影

今回の市街地再開発事業では、「臨港消防署月島消防出張所」の建替工事も行われている。そうした中で現在、現地では、パークタワー勝どきのB棟(名称は現時点で未定。B棟は市街地再開発事業の名称)の建築着工に向けて解体工事が進められている。

最終棟となるタワー「B棟」計画の概要とスケジュール

勝どき東地区第一種市街地再開発事業 ※出典:東京都「市街地再開発事業について」公式ページhttps://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/machizukuri/shigaichi_seibi/sai-kai/saikaihatsu

「勝どき東地区」の市街地再開発事業において最終棟となるパークタワー勝どきB棟については、現在、解体工事が進められている。現地に掲示されている建築看板等によると、解体工事は2026年3月まで、建築工事の着手は2026年4月が予定されている。また、市街地再開発により整備される建物の建築概要は次のとおり。

・建物用途:共同住宅、店舗
・敷地面積:3,782.14m2
・建築面積:2,130m2
・延べ面積:5万2,130m2
・容積率 :約990%
・階  数:地上29階、地下1階
・高  さ:103.00m
・総事業費:約1,806億円(A棟を含む全体)

住宅戸数については、事業計画書(2023年6月15日時点)によると、すでに竣工しているパークタワー勝どきサウスならびにミッドを含めて、総戸数は約3,250戸を予定している。このことから、すでに供給を終えている2,786戸を除くと残り戸数は464戸となり、以上のことから、B棟については、450戸前後の住戸が計画されると考えられる。また、名称についてもサウス、ミッドと続き、ノースになるのではないだろうか。

ちなみに、事業計画書上、住戸タイプは、1K・1〜4LDKが予定されている。ファミリー層に人気なエリアであることから、2〜4LDKが中心に供給されると想定される。

なお、現地に掲示されている看板(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項によるもの。2025年6月10日時点)によると、設計者は清水建設株式会社一級建築士事務所となっているが、施工者については未定となっている。

外観完成予想CG ※三井不動産レジデンシャル株式会社(2020年11月18日)『GRAND MARINA TOKYO「パークタワー勝どきミッド/サウス」11月20日(金)よりミッド棟販売開始 ~【参考】三井不動産レジデンシャル:「アフターコロナのすまいとくらしの意識調査」実施~』

B棟についての建築工事の竣工時期は、2029年5月下旬が予定されている。事業計画書によると建築工事期間の末月は2028年10月を予定、事業施行期間は2029年10月を予定している。このことから、現時点において、事業の進捗に遅れが生じていると想定される。現地では解体工事が進められており明確な動きがあるのと、人気のあるエリアのため白紙撤回のような事態になることはないと考えられる。

再開発は交通問題を解決できるか?勝どきの将来性

人口推移および一日平均乗降者数 ※出典:中央区「町丁目別世帯数男女別人口」、東京都、東京メトロ

勝どき東地区で進められている市街地再開発事業については、勝どき駅にA5出口が新設され、飛躍的に利便性が改善されている。この新設出口(A5)は「パークタワー勝どき」の地下と直結しており、朝の通勤ラッシュ時における既存出口の混雑を緩和するだけでなく、雨の日でも濡れずに駅へアプローチできるなど、住民の暮らしの質を大きく向上させている。

加えて、近年のTOKYO BRT(バス高速輸送システム)の運行も交通問題の緩和に貢献している。環状第2号線(都道484号戦線)上を走行し、かつPTPS(公共車両優先システム)が導入されているため、公共交通が優先的に運行される仕組みを導入しており定時性が高く、虎ノ門ヒルズや新橋といったビジネスの中心地へダイレクトにアクセスできる。

これにより、従来、都営大江戸線の勝どき駅に集中していた交通需要が一定程度分散されていると考えられる。明確なデータ分析を確認していないため確実なことは言えないが、BRTを利用すれば晴海・勝どきエリアから新橋・汐留エリアまでダイレクトにアクセス可能なことから多くの通勤客が利用していると想定される。

しかし、これらの改善策をもってしても、勝どきエリアが抱える根本的な交通課題として、「都営大江戸線のラッシュ時の混雑」が完全に解消されたわけではなく、勝どきエリアの人口増加傾向は著しいものがある。この問題の解決策のキーは何になるのか。その解決の切り札となるのが、「都心・臨海地下鉄新線」である。

この新線は、TX延伸先である東京駅を起点に、銀座、築地、そして勝どきや晴海を経由して、有明・東京ビッグサイト方面へと至るルートが検討されている。これが実現すれば、勝どきは「大江戸線のみの駅」から「複数路線が乗り入れる駅」へと進化を遂げることになる。東京駅へダイレクトにアクセスできることのインパクトは計り知れず、交通利便性は飛躍的に向上する。輸送力が格段に増強されることで長年の混雑問題が解消に向かうだけでなく、事故などによる遅延時のリスク分散も可能となる。

現時点では、事業計画の検討段階であるものの国の交通政策審議会の答申(2021年7月)において、「つくばエクスプレス(TX)との接続を含め、事業化に向けて検討の深度化を図るべきである」とされており、より具体に事業計画の検討が進められている。

まとめ:進化を続ける勝どき、今後はどこに注目すべきか

勝どき駅(A5出口) ※2025年6月撮影

勝どきエリアは銀座や築地などへ徒歩圏という圧倒的な立地、再開発によって完成された生活利便性を誇る非常に魅力的な街区が形成されており、加えて、同時に再開発が進められている。そのこともあり、近年では急速に人口密度が高くなっており、東京23区の平均である約150人/haを大きく上回る約615人/haとなっている。100m四方に約600人以上が居住していることになる。

一方で、駅の混雑という課題を抱えながらも、「都心・臨海地下鉄新線」という大きな未来への可能性を秘めた街でもある。今後、勝どきの価値や住み心地を見極める上で、どこに注目すべきといえるのか、最後に、3つの注目ポイントを挙げたい。

注目ポイント①:「都心・臨海地下鉄新線」の事業化はいつ決まるか
これが最も重要なポイントとなる。現在、事業計画の作成に向けた検討が進められている。今後、具体的なルートや駅の詳細、事業化決定の発表がいつになるのか。このニュース一つでエリアの不動産価値が大きく動く可能性があり、最大の注目点となる。

注目ポイント②:「築地市場跡地」再開発の進捗
勝どきのすぐ隣で進む、5万人収容のスタジアムを核とした大規模再開発も、勝どきの未来に大きな影響を与える。新たな人の流れや商業的な相乗効果が生まれ、エリア全体のブランド価値をさらに高めることになる。どのような用途を伴った施設がいつオープンするのか注目したい。

注目ポイント③:「勝どき東地区B棟」計画の始動
現在、進行中の再開発における最後棟B棟が2026年度の着工、2029年度の竣工が予定されており、これにより約450戸近い住戸の供給が予定される。また、B棟の完成を持って、「パークタワー勝どき」が全体竣工となり、正式なまちびらきとなる。

勝どきは、現在の利便性だけに満足するのではなく、未来の大きな変化に価値を見出す人々にとって、注目されるエリアとなっている。今回挙げた注目ポイントの動向を追いながら、この街の進化を実際に体感してはいかがだろうか。

都市整備局 勝どき東地区第一種市街地再開発事業

この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。

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