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221年の伝統を、未来の手に――地域の伝統「花火づくり体験会」開催【福島県浅川町】

ローカリティ!

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福島県南部に位置する浅川町で5月下旬、心あたたまる学びのイベント「花火づくり体験会」が開かれた。テーマは、江戸時代から地域に受け継がれてきた「供養の花火」。子どもたちは花火の仕組みを学びながら、その背景にある地域の歴史と“祈りの心”にふれた。

花火を学び、体験する子どもたち

▲今回使った玉皮は3号玉サイズ。紙製で、直径10センチくらいの大きさ(筆者撮影)

会場となった浅川町歴史民俗資料館には、町内の親子連れや関係者など15人が参加。子どもたちは、火薬を詰める球状の容器「玉皮(たまがわ)」に模擬火薬を詰める「玉詰め」体験に挑戦した。実際の火薬は使用せず、安全に配慮したレプリカだが、その細かい作業に、子どもたちの表情は真剣そのもの。

▲参加者は小学生が中心だったが、なかには未就学児も(筆者撮影)

打ち上げ花火の“中身”を目にする機会など、そうあるものではない。思わず「えっ、花火の中ってこうなんているんだ!」と、私自身が声を漏らしてしまったほどだ。作業の最後には、紙製の玉皮に折り紙やカラーペンで装飾を施し、それぞれの個性が光る、色とりどりの作品が並んだ。

町内から参加した内野さんは「昨年の夏、テレビ番組『鉄腕DASH』で花火づくりの回を偶然見て興味を持ったんです。その体験が地元でできると知って、すぐ申し込みました。身近な場所でこうした機会があるのは、とてもいいですね」と笑顔を見せた。テレビ越しの感動が、実際の体験へとつながっていく。その「知る→動く」という連鎖こそが、地域の未来をつくっていくのだと感じさせられた。

花火に込められた“祈り”の心

このイベントを主催したのは、「花火の里あさかわ2.0プロジェクト」。地域おこし協力隊のメンバーを中心に、町の文化を未来へつなぐことを目的に活動している団体だ。

▲浅川の花火の歴史や文化、また、それに込められた想いを説明する塩村忠信さん。今回の企画を担当した(筆者撮影)

「浅川町の花火には、200年以上の歴史があります。もともとは疫病や火災、一揆で亡くなった人々の供養のために打ち上げられたのが始まりです。今も毎年8月16日には、亡き人を思い、祈りを込めて花火が打ち上げられます。」

▲会場となった浅川町歴史民俗資料館には浅川の花火に関する資料が多く展示されている(筆者撮影)

かつて火薬の製法は、特定の家にだけ受け継がれる“秘伝”とされていたという。現在では法律により一般の住民が製作することはできないが、「花火青年会」と呼ばれる若者グループが資格を取得し、伝統的な手作業でその技術を守り続けている。

「花火=エンタメ」という固定観念を覆すような、静かな“祈りの文化”。その深さに、胸がじんと熱くなった。

小さな手のひらが、未来へつなぐ

浅川町は今、花火文化の継承にとどまらず、高齢化や担い手不足、交通の不便さなど、さまざまな地域課題と向き合っている。

それでも塩村さんたちは、花火大会に加えて、高校生との連携、資料館の利活用、情報発信などにも力を注ぎ、一歩ずつ未来への道を開こうとしている。

▲最後には一人ひとりに修了証が手渡された(筆者撮影)

「町内には高校がないため、子どもたちは進学を機に町を離れてしまいます。でも、小さい頃からふるさとの文化にふれることで、自信や誇りを持てるようになると信じています。将来的には観光まちづくり会社(DMC)をつくって、高校生とコラボしたり、花火の魅力をもっと発信したりしたいですね。」(塩村さん:談)

この日のイベントは小規模ながら、一人ひとりの顔がよく見える、あたたかな体験会となった。初めての花火づくりに目を輝かせ、真剣なまなざしで取り組む子どもたちの姿が強く印象に残った。小さな町にも、できることはたくさんある。工夫と人の力があれば、文化は続いていく。筆者もまた、この花火の“祈り”にふれ、心の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

浅川の花火は、ただの打ち上げ花火じゃない

 浅川町では現在、年4回の花火イベントを継続しており、今年は町制施行90周年の節目。2025年8月16日に開催予定の花火大会では、さらに大きな発信を目指しているという。

夜空に一瞬輝いて消える光――その裏側には、何世代にもわたる思いや努力が込められている。浅川町の花火は、ただ空に消える光ではない。人と人をつなぎ、記憶と祈りを未来へと手渡す“ひかり”なのだ。

▲城山からの地雷火の光跡、浅川花火の魅力的な閃光(タケルさん撮影、協力:こおりやま広域観光協議会)

色とりどりの光と音に包まれる夏の風物詩。その奥に、これほど深い“祈り”と“歴史”があったとは。私にとっても、驚きと発見のひとときだった。

次に花火を見上げる時、その光の向こうに込められた思いや、受け継がれてきた願いに、ふと思いを巡らせてみてはいかがだろうか。

昆愛

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