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忌野清志郎に似たZERRY率いる覆面バンド「THE TIMERS」のアティテュードは今も有効なのか?

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2024年11月13日 ザ・タイマーズの35周年記念エディション「THE TIMERS 35周年祝賀記念品」発売日

「THE TIMERS」リリースから35年「THE TIMERS 35周年祝賀記念品」が発売


反戦・反核・反権力のアティテュード、浪曲から歌謡曲、グループサウンズ、ブルース、パンク、ソウルミュージックと、多岐にわたるジャンルを飲み込み、アコースティックで奏でるという極めて独自性の高いサウンド。音楽シーンのみならず、世間を騒然とさせたザ・タイマーズ(以下:タイマーズ)は、周知の通り “忌野清志郎に似た人物ZERRY率いる覆面バンド” というコンセプトも当時その話題性に拍車をかけた。

1988年、バブル景気の最中に登場し、翌年にはファーストアルバム『THE TIMERS』をリリース。浮かれた世の中に、人々が忘れかけていた危機感を警鐘する本質を突きつけ、風のように去っていった彼らのアルバムリリースから35年、2024年11月13日にユニバーサルミュージックより『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』と題された3枚組BOXセットがアナログ、CDでそれぞれ発売された。

“バンドマン忌野清志郎” の真骨頂とも言えるタイマーズの音楽性


日本中の誰もが知るカバーソングの金字塔であり、春の陽射しに包まれたような優しさが心に染み込んでゆくスイートでドリーミーな至極のラブソング「デイ・ドリーム・ビリーバー」。そして、これに相反するようにラディカルかつ、今の世の中にも通じる普遍性を兼ね備えた「偽善者」「偉人のうた」「総理大臣」といったプロテストソングの数々。

デビュー時に配布するアーティスト写真は、メンバーのみならず、スタッフも土木作業員のコスチュームに変装し、数種類の写真を作成。メディアを騒然とさせる。夢と現実、フェイクとリアル、コミカルとシニカル…。相反する要素を織り交ぜながら、これまで誰もなし得ず、今も誰も真似することができないスタイルで伝説となったのがタイマーズだ。

当時、ラディカルなメッセージばかりが先行したタイマーズだったが、その音楽性はまさに “バンドマン忌野清志郎” の真骨頂とも言える。1988年、反核メッセージが込められたRCサクセションのアルバム『COVERS』発売中止騒動を発端にタイマーズは動き出し、清志郎自身も “RCサクセションではやれないことを” という思いが込められていたと思う。しかしタイマーズは清志郎のソロプロジェクトという枠を超えたものであり、メンバーそれぞれのキャリア、特性は、ボーカリスト “ZERRY” を別の次元に昇華させたと言っても過言ではないだろう。

MOJO CLUBの三宅伸治、杉山章二丸に似たTOPPI、PHA、ヒルビリー・バップスの川上剛に似たBOBBYという設定のメンバーは、ZERRYに最大限のリスペクトを注ぎながら、プレイヤーとしての独自性を極めていった。それはMOJO CLUBのロックンロール、ブギーの根源である居ても立っても居られないような性急さを体現したグルーヴ、そしてヒルビリー・バップスの根源であるロカビリー、カントリー的なエッセンス。ここに圧倒的にソウルフルなZERRYのボーカルが溶け合っていく。

まさに、この4人でしか成し得ない唯一無二のサウンドを構築。タイマーズは圧倒的にバンドサウンドであった。ちなみに、エレキを導入し、1994年にリユニオンした第2期タイマーズは、よりメンバーの個性が前面に打ち出され、バンドとしての個性が際立っていた。

タイマーズというバンドの個性を最大限に際立たせ最新マスタリング


今回リリースされる『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』は1989年にリリースされた『THE TIMERS』そして2006年にリリースされたリイシュー盤、2016年にリリースされた『THE TIMERS スペシャル・エディション』に収録された未発表曲、さらに今回初蔵出しとなる発掘音源9曲が追加されている。

これに加え、当時のプレスキットや貴重なポートレイト&ライブ写真を載せたブックレットを詰め合わせた豪華版だ。特筆すべきは、かつて彼らがレコーディングを行ったロンドンのメトロポリススタジオで全曲に最新リマスターが施され、ヴァイナルカッティングが行われたこと。この工程による音のダイレクトな臨場感、スタジオで目の当たりにしているようなエッジの効いたバンドのグルーヴはタイマーズというバンドの個性を最大限に際立たせていた。

タイマーズの歴史を俯瞰する上でも極めて貴重なライブ音源


例えば、2024年追加トラック(DISC3)に収録された「デイ・ドリーム・ビリーバー」(2024MIX)は、傍らで語りかけるようにクリアなZERRYのボーカルに、決して時に流されない普遍的な愛の形を再確認できる。また、忌野清志郎名義でソングライティングを手がけ1986年にリリースされたヒルビリー・バップス「バカンス」をレゲエフィーリング溢れるアーシーなリズムでアレンジした「BAKANCE」にはバンドの懐の深さを感じ取ることができる。

そして、結成当初の目的であった1989年の広島ピースコンサート出演時の「LONG TIME AGO」(1989年8月5日広島サンプラザホール)のライブ音源が当時の熱量を再現して収録されたことは、タイマーズの歴史を俯瞰する上でも極めて貴重なことだ。走り気味のビートに絡まり加速していくZERRYの反核への強い意思表示を痛烈に感じる剥き出しのボーカルは当時のバンドの勢いを象徴している。

DISC3ラストには、『COVERS』に収録された「ラブ・ミー・テンダー」のアンサーソングと言える「君はLOVE ME TENDERを聴いたか?」を収録。同曲は1988年にRCサクセションがリリースしたライブアルバム『コブラの悩み』に収録された30秒のショートバージョンをタイマーズとしてレコーディングした完全版。『コブラの悩み』のラストで唐突にカットアウトされた同曲がくっきりと輪郭を現した姿で蘇ることは、清志郎が今も生きて、僕らに語りかけているようでこの上なく感慨深い。涙が出そうだった。

35年の時を経て、タイマーズのアティテュードは今も有効なのか? という問いがこの『THE TIMERS 35周年祝賀記念品』に凝縮されている。そして、歌いたいことがあるから曲を書き、歌う。紡いだ歌はバンドのグルーヴによって時代を超えて転がり続けるという、あるべきロックバンドの姿を体現したタイマーズの軌跡を肌で感じ取ることができる。そこには、生涯 “バンドマン” という呼称にこだわり続けた忌野清志郎の本質が表れていた。時を経てリマスターされたオリジナルナンバーには懐かしさは微塵もなく、令和の今も、曲に秘められた決して媚びないロックの力強さを痛感することができる。

THE TIMERS 35周年祝賀記念品

1989年11月8日、衝撃のメジャー1st ALBUM『THE TIMERS』リリースから35年。
謎の段ボールに隠されていた幻の発掘トラックを含め、35周年記念エディションとして3LPと3CDの2形態でリリース。

<3CD>
▶ EPサイズ3つ折りデジパック
▶ 当時のEPサイズ20Pプレスキット復刻版付

<3LP>
▶ 180g重量盤
▶ 3つ折りLPサイズケース入り
▶ 当時のEPサイズ20Pプレスキット復刻版付

リマスター&バイナル・カッティング
STUART HAWKES(Metropolis Studios, London)

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