フットボールアワー後藤輝基の音楽活動♪プロデュースは藤井隆で芸人のお遊びじゃない!
今1番ホットなヴォーカリスト、後藤輝基
甘い声で思わぬ色気を感じさせるアラフィフのボーカリストが音楽ファンを中心に話題を集めている。その名は後藤輝基。
そう、あの『M-1』でグランプリも獲ったお笑いコンビ “フットボールアワー” のツッコミ担当だ。現在、全国5ヵ所をまわる『後藤輝基 “ホイップ” ツアー2024 plus 藤井隆!』と題し、後藤と藤井のスプリットツアーが開催中。即日完売したツアー初日の名古屋会場は、終始 “てるきん”(歌手の時のニックネーム)コールで溢れ、期待と熱気で満ちていた。本コラムでは、そのツアーで披露された楽曲を中心に、知られざる彼の音楽活動を振り返ってみたい。
お笑い芸人と違う顔を見せたあの名曲のカバー
ご存じ、後藤輝基と言えば、テレビで的確にツッコミをいれている姿や、MCでの仕切りの印象が強い “芸人” だ。そんな後藤が歌手活動を始めたきっかけは、番組打ち上げのカラオケで後藤が歌う、原田真二の「キャンディ」を藤井隆が耳にしたことだった。
歌のうまさだけではなく、今までと違う魅力にビビッときた藤井は、自身の主宰するレーベルのオムニバスに本田美奈子「悲しみSWING」のカバーで参加させるほどに惚れ込んだという。この「悲しみSWING」は、まだ相手への想いが残る心理描写を描いた失恋ソング。今回のコンサートでは、この難しい楽曲を主人公が見ている風景や感情までも私たちにが手に取るようにわかるぐらい丁寧に、そしてエモーショナルに歌い上げていたのが印象的だった。
ポップスファンを虜にしたカバーアルバム「マカロワ」
2022年5月に発表された最初のカバーアルバム『マカロワ』では、歌のうまさは当然ながら、鳥肌が立つほどの色気を含む歌声が絶賛されている。素直に歌手としての魅力を最大限に引き出すために用意されたのは “わたし" と歌う “女うた” で構成された楽曲の数々。
B面に収録されながらもファンには絶大な支持を集めたWink「Cat-Walk Dancing」や、EPOもカバーした伊藤銀次の名曲「こぬか雨」など、隠れた名曲たちも話題を集めた。中でも聴かせどころだったのは宝生舞の「Carnival」。R&Bやクラブサウンドが色濃かったオリジナルが、澤部渡 (スカート)のアレンジによって、メロウなサウンドに生まれ変わった1曲だ。
2年ぶりとなるセカンドアルバム「ホイップ」
そして、今年2024年5月にリリースされたカバーアルバム第2弾『ホイップ』。前作の “女うた” と対をなす “男うた” で構成されている。松本隆のセンチメンタルさが爆発している原田真二の「てぃーんず ぶるーす」。レコーディング当日に三谷泰弘がスタジオに来て、その出来栄えに大絶賛したというスターダスト☆レビュー「想い出にかわるまで」。よりダンサブルになったTo Be Continued「逃げたりしない」などを収録している。
本アルバムのオープニングでもあるSelfishのカバー「自由になって」は、かねてから歌のうまさで定評のあった実の姉とのデュエット。そして、『ホイップ』の中で最も注目すべき曲は、安藤秀樹の「はじまりの予感 ーあなたを見ているからー」だろう。
先日のライブで、MCの藤井はこの曲について、「後藤輝基がデビューして20年以上経った現在。ファンへ向けたメッセージとして、コンサートのお客さまとの架け橋になるような1曲として選びました」と紹介。後藤いわく、歌うのが難しい楽曲らしいが、ステージの上で「♪僕を信じて」と歌う姿に照れはなく、客席のひとりひとりの顔を見ながら実直に歌っている姿が印象的だった。
名プロデューサー藤井隆の存在
“シンガー・後藤輝基” の魅力を最大限に引き出すために、全ての選曲や音楽面はもちろん、ジャケットデザインや、衣装も自身で選ぶなど細部にまでこだわり抜いたプロデューサー・藤井隆の存在も忘れてはいけない。
だれもが知る楽曲を上手く歌い上げるカバーアルバムが出回るなかで、一癖も二癖もありながらも “あ、知ってる…” “聴いたことがあるかも” “私、大好きだった!” と聴き手が忘れていた楽曲や、その良さに気づける楽曲を選曲している。シティポップとして昭和や平成の楽曲が再注目されているが “じゃぁ、この曲はどう?” と私たちの記憶の中に投げかけられた名曲にハッとさせられた方も多いのではないだろうか。
サウンド面でも、KASHIF、澤部渡(スカート)、奥田健介(NONA REEVES / ZEUS)、斉藤伸也(ONIGAWARA)など、まさに今の音を作り出すクリエイターによってアップデートされたサウンドは、オリジナルを知らない若い世代にも新たな出会いをもたらすキッカケになっている。
今年1番熱いコンサートを見逃すな!
もし、彼らの音楽活動をお笑い芸人がネタでやっていると思っているなら、考えを改めていただきたい。芸人のお遊びではなく、1人の歌手と1人のプロデューサーが音楽と真摯に向き合った作品としてぜひ聴いてもらいたいのだ。
そして、すでに完売しているツアーチケットを手にしたラッキーな方々は、てるきんのステージングに更にハマることだろう。もちろん藤井隆のパフォーマンスも存分に味わえる、ひとつぶで何度もおいしいこのライブは、会場の誰よりも2人が楽しんでいるように見えた。
さて、ツアー日程は東京を残すだけとなったが、ライブの様子はブログ『てるきんらんど』でも日々更新されており、ふたりが楽しんでいる様子がじんじんと伝わってくる。我々客席も彼らのホットホットなパフォーマンスに負けないぐらい歌い踊りたい。