【ネタバレ】『エイリアン:ロムルス』旧キャタクターのカムバック、いかに実現したか
SFホラー映画の金字塔、『エイリアン』シリーズの最新作には、映画の前半からひとつのサプライズが用意されている。監督・脚本のフェデ・アルバレスは、「シリーズのすべてを活かさなければ」と考え、ある人物を再登場させることにしたのだ。
思いがけない人物の、思いがけない形での再登場。その裏側では、いったい何が起きていたのか?
この記事には、映画『エイリアン:ロムルス』のネタバレが含まれています。
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この記事には、映画『エイリアン:ロムルス』のネタバレが含まれています。
©2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.アンドロイド・ルークの「顔」
『エイリアン』シリーズでは、過去に一人の俳優が複数のキャラクターを演じたことが2度あった。ランス・ヘンリクセンが『エイリアン3』(1992)でアンドロイドのビショップと『エイリアンVSプレデター』(2004)でウェイランド=ユタニ社長チャールズ・ビショップ・ウェイランドを、マイケル・ファスベンダーが『プロメテウス』(2012)『エイリアン:コヴェナント』(2017)でアンドロイドのデヴィッドとウォルターを演じたのだ。
アンドロイドならば、同じ見た目で異なる内面をもつキャラクターを登場させられる。『エイリアン:ロムルス』では、主人公のレインたちが出会うアンドロイドのルークが、シリーズ第1作『エイリアン』(1979)のアッシュと同じ容姿をしているのだ。2020年に逝去した俳優イアン・ホルムの姿が、本作では最新技術を駆使して再現された。
イアン・ホルム Photo by CossieMoJo at English Wikipedia https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ian_Holm.jpg | Remixed by THE RIVER
米国メディアにて、監督・脚本のフェデ・アルバレスは「ランス・ヘンリクセンとマイケル・ファスベンダーが数回登場しているのに、アッシュの見た目が一度も使われていないのは不当だと感じた」と語っている。アッシュの容姿をもつ新たなアンドロイドを登場させることは、シリーズの創造主であり、本作のプロデューサーでもあるリドリー・スコットと話し合ったうえで決定したそうだ。
「このキャラクターの容姿をリドリーと考えはじめてすぐ、胴体と頭部を作ることにしようと決めました。だから、そっくりな俳優を探してくる必要はなかったんです。リドリーは、“アッシュは最高だ、戻ってくる必要がある”と言っていました。そして、ご遺族全員の許可を得ることができました。彼の容姿を復活させるというアイデアに全員が賛同していてほしかったから。」
アルバレスは「どんなテクノロジーをもってしても俳優の才能を再現することは不可能。演技や選択のニュアンスを捉えることはできない」との考えをもっており、ホルムの演技自体をCGで再現する方法はとらなかった。ホルムの容姿を蘇らせ、新たなキャラクターを作り出すことは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)で故ピーター・カッシング演じるターキンが“デジタル復活”を果たしたこととはまた別物なのだ。
ホルムの妻だったソフィーは、このアイデアに喜びの言葉を語ったという。アルバレスは「イアンは人生最後の10年間、ハリウッドから冷遇され、あまりオファーが来なくなったと感じていたそうです。彼女からは、“彼(ホルム)はリドリーと『エイリアン』シリーズが大好きだったから、きっと喜んで戻ったでしょう”と言われました」と振り返った。
フェデ・アルバレス © 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
実際にルークを登場させるため、特殊効果チームは、ホルムが出演した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズから彼の頭部模型を探し出し、これを基にアニマトロニクスを制作。演技には『エイリアン』の4Kスキャンが活用され、目の表現にはAI技術も使用されているという。せりふの声はイギリス人俳優のダニエル・ベッツが担当した。むろん、この作業は想像以上に大変だったようだ。
「ある人が、“もうおしまいだ、俳優はテクノロジーに取って代わられる”と口にしたとき、僕は、“いやいや、君を雇ったら一人分のコストしかかからないけど、これを実現するには45人を雇い、さらに演技をする俳優を雇わなければいけないんだぞ!”と言いましたね。」
むろん、『エイリアン:ロムルス』のルークは『エイリアン』のアッシュとは別のキャラクターだ。アルバレスは「別のアンドロイドなので、見た目は同じでも振る舞いが違う。ただし、母親(マザー)は同じなので知識は同じ。同じマザーの意識が移ってきているんです」と説明した。
「僕は観客の偏見を使いました。オリジナルのファンはアッシュの顔を知っているし、信用すべき人物でないこともわかっているから。けれども、彼(ルーク)はある意味とても正直で、嘘をついたり、策を弄したり、他人の嫌がることをやらせたりはしない。だからこそ楽しいのは、“彼はアッシュのようになるのか、それともビショップのようになるのか?”というところ。『エイリアン』の世界におけるアンドロイドへの偏見が、私たちの疑念を呼び起こし、彼を信用できなくさせる。それはアンディに対しても同じなんですよ。」
映画の仮編集版が完成したあと、アルバレスは真っ先にホルムの遺族に連絡を取り、彼女たちの感想を聞いたという。「とても感情的な電話でした。彼らは少し前に父を亡くし、私も同じ頃に父を亡くしています。ですから彼らの痛みと、イアンが映画に戻ってきたことへの興奮には非常に共感しました。我々がやり遂げたことと、彼らとの協力を心から誇りに思っています」。
映画『エイリアン:ロムルス』は公開中。
Source: Variety( )