初めて倍率2倍割った県職員の採用試験 「安定」より民間企業を優先する若者たちの本音
■静岡県職員「行政Ⅰ」の最終倍率 前年の3.0倍から1.9倍に下降
かつて人気だった職業も新規人材獲得に苦戦している。静岡県の職員採用試験で、「行政Ⅰ」の最終倍率が初めて2倍を割り込んだ。民間企業でも幅広い業種で人材不足に直面している以上、県職員の志望者が減少するのは自然な流れとも言えるが、若い世代の求職者には「公務員の安定」は魅力でなくなりつつある。
変化を恐れない経営で売上アップ 静岡県にある異色の製紙メーカー
受験者の減少に歯止めがかからない。昨年度の静岡県職員の採用試験で、「行政Ⅰ」の最終倍率は1.9倍にとどまった。2倍を下回るのは初めてだという。
県によると、「行政Ⅰ」は教養試験に加えて法律・経済などの専門試験がある。ただし、選択回答としているため、得意な分野での受験が可能。一方、「行政Ⅱ」は教養試験や専門試験がなく、時事や社会政策といった総合能力試験となる。行政Ⅰに比べて面接の比重が高くなる。
行政Ⅰは昨年度募集した29職種のうち、最も採用人数が多い。一次試験の受験者は245人で、そのうち最終合格者は131人。倍率は1.9倍となった。
行政職が2区分となった2015年度、行政Ⅰの最終倍率は4.3倍だった。そこから減少傾向は止まらず、2022年度は3.4倍で、2023年度は3.0倍。そして、昨年度は2倍を割り込んだ。
県は新規職員を確保するため、今年度から一部の職種で秋採用を導入する。近年は売り手市場が続き、民間企業も人材不足に直面する中、かつては狭き門だった県職員も、門戸を広げて人材獲得を狙う。
■かつての人気職業が… 就職・転職活動中の若者の本音は
なぜ、県職員は人気の職業でなくなりつつあるのか。就職、転職活動中の若者からは次のような声が漏れる。
「県職員になるメリットは、よほどの問題を起こさない限り、定年まで働けるところ。ただ、そのために公務員試験の勉強をするのはしんどい。転職する可能性の方が高い中で、試験勉強を頑張って得られるものが『安定』となると、あまり魅力を感じない」
「県民、市民として何度か職員と接したことがあるが、個々の職員に決定権がない印象を受けた。何でも上司に確認して、決裁をもらわないといけないイメージ。受け身の仕事で、民間企業と比べて、やりがいや成長につながらない気がする」
「県の情報発信を見ているとものすごい非効率で、古い体質から抜けられない働き方が見えてくる。県職員で社会人をスタートすると、民間企業への転職を考えた時、自分のスキル不足を痛感して、転職をあきらめる結果になりそう」
「どんなに成果を出しても、その評価が給料に反映されない仕事はモチベーションが上がらない。しかも、公務員の評価は加点法ではなく、減点法のイメージ。挑戦よりもミスをしない働き方は消極的に感じる」
実際に県職員の仕事が、民間企業と比べて「受け身」、「非効率」なのかは分からない。間違ったイメージが先行しているのかもしれない。ただ、採用試験の受験者を増やすには、若い世代の印象を変える必要もあるだろう。
(SHIZUOKA Life編集部)