さんたつ読者&編集部おすすめの「たまらない坂」10選
みなさんは日々、坂を歩いていますか? 今回は、さんたつサポーター&さんたつ編集部が「たまらん!」と推している坂を1カ所ずつ選び、記事としてまとめました。文豪ゆかりの坂や絶景坂など、何気ない街なかの坂にも奥深い魅力や歴史、人の営みが息づいているかもしれません。坂に注目して街を歩くきっかけにしてもらえたらうれしいです。
【夏目坂】文豪・夏目漱石ゆかりの坂を上る
早稲田駅2番出口を出ると、早稲田通りから若松町交差点まで続く緩やかな坂が見える。これが夏目漱石ゆかりの坂として知られる「夏目坂」だ。
漱石の生家は現存していないが、早稲田駅近くに生誕100周年を記念して建てられた「夏目漱石誕生之地」と刻まれた石碑がある。なるほど、漱石生誕の地だから夏目坂と名づけたのかと思ってしまうが、命名したのは漱石の父というから驚きだ。
標識には「漱石の父でこのあたりの名主であった夏目小兵衛直克が、自分の姓をつけて呼んでいたものが人々に広まり、やがてこう呼ばれ、地図にものるようになった」と記されている。このエピソードは漱石最後の随筆『硝子戸の中』でも紹介されているので、興味のある方はぜひ読んでみてほしい。
[せき けい子さん]
鳥居から新幹線が見える!【「赤羽八幡神社」の縁起が良い坂】
「赤羽八幡神社」は赤羽駅から徒歩10分とアクセスが良好な上に、高台にあるため、境内から見渡せる景色も魅力の一つです。かわいらしいと評判の御守や御朱印帳も人気を集めており、地元の方だけでなく幅広い層に親しまれている神社となっています。
そして、こちらの神社へは、急な坂道(または階段)を上って辿り着きます。坂を下る際には、隣を走る新幹線やJRの電車を鳥居越しに眺めることもでき、その光景から縁起の良いパワースポットとしても知られています。坂からの赤羽の町並みの眺めも素晴らしく、景色も楽しめます♪
この日も、時間をかけて、景色を堪能しながら坂を下りました。また訪れる機会があれば、いつまでもこの坂を元気に上り下りできるような健康体でありたいと願っています。
[もーみん山猫さん]
世田谷区の富士見坂【岡本三丁目の坂】は東京23区屈指の急勾配と好展望が絶品!
東京には富士見坂と呼ばれる坂がいくつもありますが、そのうちのひとつが世田谷区にある「岡本三丁目の坂」。国土交通省による関東富士見百景にも選定されています。
東急田園都市線用賀駅から歩いて約30分。国分寺崖線上から始まる急坂は滑り止めを施された急傾斜。一説によれば勾配は約22%、高低差は約20m。東京23区内でも屈指の激坂としてチャリダーたちにも親しまれているようです。高く遮るものが視界の先になく、晴れた日には富士山を遠く望めます。またダイヤモンド富士の観望スポットにもなっており、おおよそ2月9~10日および11月1~2日の日没時に見ることができるそうです。
坂を下った先には丸子川が多摩川と並行するように流れています。小魚も泳ぐ川のゆったりとした流れに沿って東に向かえば、岡本民家園、静嘉堂文庫美術館や玉川大師なども点在するルートを二子玉川駅まで30分弱の散歩も楽しめます。
●富士見坂(岡本三丁目の坂)
所在地:東京都世田谷区岡本三丁目の27番と28番の間
[上町嵩広さん]
桜木町にある【紅葉坂】は日々アップデート中
かなり急に見えるが斜度約6度の「紅葉坂」。開港後に神奈川奉行所ができるのにあわせ、カエデの木を移植。明治5年(1872)に「紅葉坂」と名づけられた。かつての奉行所跡には「神奈川県立図書館」などの文化施設が勢揃い。現在、旧本館である「前川國男館」は工事中なので、新本館を初利用した。
館内には公開書庫や静寂読書室なども。『猿田彦珈琲』もあるので、横浜観光の途中に立ち寄るのもあり。その後は、「神奈川県立青少年センター」を訪問。小学校の校外学習、中学校の演劇発表会鑑賞、大人になっての舞台鑑賞など思い出の場所だ。かつては坂の下に日本丸の帆が見えたが、今はランドマークタワーが正面に。通り沿いには、団地の代わりにマンションが並び、時の流れを感じた。
[柿生亜実さん]
ここも六本木!イルミ見物で出会った吸い込まれそうな【丹波谷坂】
地下鉄のアナウンスで「六本木一丁目」と聞こえた時、「けやき坂に行こう」と思い立った。ワイドショーで見た、東京タワーが真ん中に浮かぶイルミネーションを私も見なくっちゃ。2024年の年末のこと。
地上に出てから、私の知っている六本木ではないことに気づく。けやき坂は500mくらい先。ビルの谷間を歩きだす。闇の底に落ちそうな坂道と「丹波谷坂」の看板が現れた。立派な名前のこんな急坂、さぞ有名な坂だろうと思ったが、そうでもなかった。港区のホームページには「旗本岡部丹波守の屋敷ができ、坂下を丹波谷といいました。明治初年この坂を開き、谷の名前から坂の名称としました」とある。あと、永井荷風の日記にもでてくる場所らしい。
丹波谷坂を下りて少し歩くと、すっかりにぎやかだった。いろいろな国の人たちの中で大喜びしながら、イルミネーションと東京タワーを写真におさめた。
[へいあらんさん]
愛知県瀬戸市の【窯垣の小径】 、時代の痕跡を上ったり下りたり!
坂! といわれて思い出すのは、愛知県瀬戸市の「窯垣の小径(かまがきのこみち)」。
「せともの」という言葉の由来になった瀬戸市には、陶磁器の街として栄えた痕跡があちこちに残り、「窯垣の小径」はその象徴ともいうべき場所。上ったり下りたり……起伏に富んだ里山を実感。「瀬戸本業窯」に「用の美」を見出した民藝運動の柳宗悦が、独特の石垣に目を留めた。狙って作られたものではなく、登り窯で使い終えて不要となった窯道具を組みこんでできた石垣の小道である。
名古屋駅から電車で40分ほどで尾張瀬戸駅に到着、駅から約20分歩くと「窯垣の小径」に行ける。
[まやぎはとこさん]
文京区【播磨坂】で季節の変化を楽しむ緑道散歩
ひと目惚(ぼ)れでした。神保町から後楽園、茗荷谷周辺へとぶらぶら散歩していた休日のこと。文京区の吹上坂を『小石川植物園』方面へ下っていると、ヨーロッパの街中に迷い込んだかと錯覚するような外観の建物(『ARISSARA CAFE & THAI RESTAURANT』)が現れ、そこから茗荷谷駅方面へ延びる「播磨坂」に胸がときめきました。中央部は緑道が整備され、気持ちよく散歩できる憩いのスポットです。
この坂は桜の名所としても知られていますが、新緑や紅葉の季節など、折々の変化も楽しめておすすめ。また、周辺は湯立坂、庚申坂など、いい坂の宝庫です!
[編集部・阿部]
その先の街をもうちょっと歩きたくなる【上野公園通り沿いの坂】
JR上野駅の公園口から山下口方面に下る、上野公園通り沿いの坂。「下る」と書いたのは、上野公園を散歩したり美術館に行って公園口に戻ってきたとき、「せっかくだから広小路口のほうから帰ろうか」と思い立ち、この坂を下ってみることが多いからです。電車が行き交う駅のホーム、にぎやかな街の明かり、暮れゆく空に、いつも心奪われます。
もう帰ろうかと思っていたのに、この風景を見ると不忍池に寄ってみようか、『みはし』であんみつでも食べようか、御徒町まで歩いて『吉池』で買い物でもしようか……と、坂の下に広がる街へ、ほんの少し散歩を延長したくなります。
[編集部・渡邉]
急な階段、ありがたい近道【男坂】
神田駿河台にある編集部からもほど近い、千代田区の「男坂」。私はこの道を使って職場に通うのですが、台地への崖を一直線につないだこの階段はありがたい近道ともいえる場所です。
さまざまな時間帯にここを通るのですが、誰かの日常みたいなものを感じることが多くて、近隣の学生が部活の練習をしていたり、かと思えば編集部がなにかの撮影をやっていたこともありました。すいすい登って行く人もいれば、ちょっと嫌そうな人もいるし、座って休む人がいることも。
もちろん、街のあらゆる場所が誰かの日常なのですが、「急な階段の近道」を行き交う人々には少し興味が湧いてしまいます。そんなことを考えながら、今日も職場に来ました。
[編集部・小野]
小金井市の「はけ」沿いにある【質屋坂】で癒やされて
小金井市周辺には「はけ」と呼ばれる地形があります。かつて武蔵野台地を古多摩川が侵食した名残でできた国分寺崖線のことで、このはけ沿いには坂がたくさん。
なかでもお気に入りなのが、武蔵小金井駅から5分ほど歩いたあたりにある「質屋坂」。敷き詰められた石畳が美しく、傾斜は緩め。その分雄大なカーブを描いています。途中からは木々が鬱蒼(うっそう)と茂ったゾーンに突入し、葉のやさしいざわめきが。そんな自然の音を感じながら下っていると、だんだんと穏やかな気持ちになれる癒やし効果抜群の坂なのです。
[編集部・桑原]
構成=さんたつ編集部