新潟ラーメン界のレジェンド職人がオープンした「らぁめん 紬麦」。
新潟市の古町に「らぁめん 紬麦(つむぎ)」というお店がオープンしました。ラーメンのメニューは「淡麗醤油らぁめん」と「生姜醤油らぁめん」の2種類のみというあたり、かなりのこだわりを感じます。いったいどんなお店なのか、店主の齋藤さんを訪ねてお話を聞いてきました。
らぁめん 紬麦
齋藤 雄司 Yuji Saito
1972年千葉県生まれ。音楽事務所に所属してバンド活動を行った後、1999年より新潟市のラーメングループに就職し経験を積む。2024年より新潟市の古町で「らぁめん 紬麦」をオープン。現在も趣味でバンド活動をしており、ギターとボーカルを担当している。
30年ラーメンをつくり続けてきた、レジェンド職人。
——齋藤さんは30年近くラーメンをつくり続けてきたんですよね。最初からラーメン店で働いていたんでしょうか?
齋藤さん:若い頃は音楽事務所に所属してバンド活動をしていたんですよ。僕はギター兼サブボーカルを担当していました。
——へぇ〜。いつ頃から音楽を?
齋藤さん:中学2年のときにギターを買って、高校に入ってからバンド活動をはじめました。当時はバンドブームだったので流行に乗っかってはじめたんです。自分が表現することで人々に感動を与えたいという思いがあったんです。
——その後、音楽活動は?
齋藤さん:CDを2枚出しましたが、プロとして活動することには見切りをつけました。それで27歳のときに人気ラーメングループで働きはじめたんです。
——どうしてラーメンの仕事を選んだんですか?
齋藤さん:実家がラーメン店をやっていたので、僕も10代の後半から手伝ってラーメンをつくっていたんです。その店を継ぐために2〜3年、その会社で修業させてもらうつもりで入社しました。
——ラーメンづくりの下地はあったんですね。
齋藤さん:いや〜、お店が変わればつくり方も変わりますから、最初は覚えるのが大変でしたね。しかも僕が働きはじめたのは27歳のときだったので、年下の先輩に怒られることが多くて辛かったです(笑)
——それは大変でしたね。
齋藤さん:でも楽しいことの方が多かったので、気がつけば30年近く働いていました(笑)。自分の努力がちゃんと結果につながって、社内での役職もどんどん上がっていくのは嬉しかったですね。グループが経営するすべての屋号を経験しましたし、自分でも何軒か新しい店舗を立ち上げました。たくさんの職人も育ててきましたね。
——そんな齋藤さんが、自分のお店をはじめたのはどうしてなんですか?
齋藤さん:グループのなかで役職が上がるほど、自分でラーメンをつくる機会が少なくなってしまったので、ラーメン職人として自分の思うままにラーメンをつくれる場所がほしかったんですよ。
「淡麗醤油らぁめん」と「生姜醤油らぁめん」。
——「紬麦」という店名には、どんな思いが込められているんでしょう?
齋藤さん:「ラーメンの鬼」として有名だった「支那そばや」の佐野実さんが麺づくりに使っていたのが「紬(つむぎ)」という名の小麦粉なんです。奥さんにお願いしてその粉を使わせていただけることになったので、その名前を店名に使わせてもらいました。ラーメンづくりの経験や思いを、若い世代につないでいきたいという意味も込められています。
——なるほど、それで小麦の風味がしっかり香る麺なんですね。「淡麗醤油らぁめん」と「生姜醤油らぁめん」のふたつを選んだのはどうしてなんですか?
齋藤さん:世の中のトレンドになっているラーメンに、自分なりのアレンジで挑戦してみたかったんです。
——では、ふたつのラーメンのこだわりについて教えてください。
齋藤さん:「淡麗醤油らぁめん」は化学調味料を使わず、うま味を引き出したラーメンに挑戦しました。そのために名古屋コーチンをベースに使って、魚介と合わせてしっかりしたコクのあるスープをつくっています。
——トッピングも丁寧につくられている感じがします。
齋藤さん:ありがとうございます。チャーシューには一頭買いした豚肉の、6種類の部位を調理して使っていて、「淡麗醤油らぁめん」にはバラ肉とレアロースをトッピングしているんです。たけのこメンマも有機栽培されたものを使っています。
——こだわりだらけですね(笑)。「生姜醤油らぁめん」についてもを教えてください。
齋藤さん: 30年のキャリアのなかで一度もつくったことがなかったのが「生姜醤油らぁめん」だったので挑戦してみたかったんです。こだわりはスープに使う生姜を高知の生産者から直送してもらっていることと、たまり醤油を長時間かけて煮込んでタレをつくっていることでしょうか。
——そうしたこだわりが、どこにも表記されていないのはもったいない気がします。
齋藤さん:先にこだわりを伝えてから食べてもらうのは、なんだか押し付けるような気がするので、まずはまっさらな気持ちで食べてみてほしいんですよ。詳しく知ってもらうのは食べた後でいいと思っています。
——ベースのラーメンは2種類だけですが、トッピングの種類は多いんですね。
齋藤さん:「チャーシュー淡麗醤油らぁめん」「味玉淡麗醤油らぁめん」のようにメニューを増やすよりも、お好みのトッピングを選ぶことで、自分だけのラーメンを楽しんでほしいんですよ。
次の世代にラーメンをつなぎ、古町を盛り上げたい。
——カウンターがすっきりしていると思ったら、引き出しのなかにいろいろ収納されているんですね。
齋藤さん:はじめてご来店くださった方は、箸やコショウを探してキョロキョロしていますね(笑)。カウンターの上をごちゃごちゃさせたくなかったし、SNSに投稿する写真を撮る人のためにも、すっきりしている方がいいのかなと思って(笑)
——自分専用の引き出しみたいで嬉しくなりますね(笑)。あと「オーダー伝票」を使った注文方法も珍しいです。あれはオペレーションを効率化するためなんですか?
齋藤さん:それもあるんですけど、口頭で注文するよりも頼みやすいんじゃないかなと思って……。例えばインスタ映えを狙って海苔を何枚もトッピングしたいけど、口に出して注文するのは恥ずかしいときがあるじゃないですか。
——そんな心遣いがあったんですね。それにしても、どうして古町に出店したんでしょうか? もっと広い場所で駐車場があったり小上がりがあったりした方が、お客さんも来やすいと思うんですけど……。
齋藤さん:確かにそういう面もあるかもしれません。でも僕は若い頃に古町で音楽や人生の経験を積ませてもらったので、ラーメンで古町を盛り上げて恩返ししたいんですよ。だから古町で開催されるイベントには、できるだけ協力していきたいと思っているんです。
——古町で営業してみて、どんなお客さんが多いと感じますか?
齋藤さん:お昼どきにご来店くださるお客様は時間がない方が多いので、席が空くのを待っていただけないですね。だから僕はめちゃめちゃ早く提供するようにしています。スピードではまだまだ若い人に負けませんよ(笑)。お客様にもぜひ、ちょっと待っていただけたら、と思うんですけどね。
——最後に、これからやってみたいことがあったら教えてください。
齋藤さん:次の世代へラーメンをつないでいくためにも、いろいろなラーメン店とコラボしていきたいと思っているんです。独立してラーメン店をやっている店主には、僕が育てた人も多いので、そうしたつながりを生かして新しいことをしていかたらいいなと思っています。
らぁめん 紬麦
新潟市中央区古町通7番町951-5
11:00-14:00/17:00-20:00(水曜昼営業のみ、日曜は11:00-15:00)
不定休