有明海の珍味にして幻の<ミドリシャミセンガイ> 今はもう食べられない?
九州北西部に広がる有明海には、特徴的な生きものが多く生息しています。そのなかに、緑色をした貝殻をもつ「ミドリシャミセンガイ」という生きものがいます。
珍味としても親しまれる不思議な生きものです。
ミドリシャミセンガイは「貝」ではない
ミドリシャミセンガイ(学名:Lingula anatina)は、その名前や見た目はまるで貝類のようですが、貝の仲間ではありません。実は、古生代に最も反映していた腕足動物の一種で、“生きた化石”とも呼ばれる生物です。
ミドリシャミセンガイは二枚貝のように2枚の殻を持ちますが、一般的な二枚貝に見られるちょうつがい構造とは少し異なる構造をしています。
ミドリシャミセンガイが持つ水管様の長いものは肉茎と呼ばれる器官で、海底に固着するために使われます。危険を感じた場合は肉茎を素早く収縮させ、泥の中に身を隠すことが可能です。
三味線のような形をしている貝(実際は貝ではないが)で、緑色をしていることから「ミドリシャミセンガイ」と呼ばれているそう。肉茎の部分が三味線のサオ、殻の部分が胴に相当するそうです。
有明海付近では、「メカジャ(女冠者)」と呼ばれ、珍味として愛されてきました。
ミドリシャミセンガイの生態
ミドリシャミセンガイは、有明海のほか、瀬戸内海の一部や奄美大島、朝鮮半島、中国、インド洋沿岸に生息しますが、環境汚染と砂泥地減少の影響により、生息場所が減少しています。
また、同種は有明海周辺で古くから食用とされてきましたが、現在は食用に捕獲することすらままならないほど生息数が激減しているといいます。
そのため、熊本県では絶滅危惧種IB類に指定されています。
ミドリシャミセンガイ(メカジャ)料理
筆者が佐賀に住んでいた18年前には、まだミドリシャミセンガイ(メカジャ)料理を食べられるお店がいくつかありました。
その頃には既に捕獲量が少なく高価でしたが、有明海の珍味が食べたくて、色々と食べ歩きをしたのが懐かしいです。
ミドリシャミセンガイの殻は硬くて食べられないため、多くの貝と同じように内臓と身、肉茎を食べます。
実際に食してみると、コリコリした触感と貝の旨味を感じられ、絶品でした。
なかでも、塩ゆではシンプルにメカジャの美味しさを味わえる料理法です。煮付けも、コリコリ感と共に醤油風味が効いて、お酒のおつまみとして最適となります。
味噌汁の具材としても食べられますが、殻を剥くのが少し面倒でした。
有明海の珍味を食べてみませんか?
ミドリシャミセンガイはもう気軽に食べることができないかもしれませんが、有明海にはまだ食用とされる特徴的な魚や貝などの水生動物が生息しています。
「ワラスボ」「ムツゴロウ」だけでなく、「ウミタケ」「ハゼクチ」「クツゾコ」「イシワケイソギンチャク」といった生きものが食用として親しまれてきました。
独特な生態系を持つ有明海の海の幸。見た目と味の違いに驚くこと、間違いなしですよ!
(サカナトライター:額田善之)