新たな“ヴィルレ”の息吹──ブランパン、日本旅館で新作披露
現存する世界最古の時計ブランドで創業290年を迎えたブランパンがこの秋、ドレッシーな「ヴィルレ」コレクションに新作を追加。お披露目の舞台に選ばれたのは、スイスの森を想起させる日本旅館。自然と建築、伝統と革新が調和するこの特別な空間で、新たな“ヴィルレ”が宿す美意識と精神性を見事に映し出した。
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10月下旬、ブランパンは「ヴィルレ」コレクションの最新作16モデルを、ヴィルレの森を想起させる日本旅館にて披露した。
現地を訪れるとまず、敷地の中央に広がる池が目に飛び込んでくる。静謐な水面には滝が流れ込み、そしてその自然の中に能舞台が静かに浮かぶ。部屋や廊下のいたるところからこの情景が望め、古の雅と自然の息づかいが、訪れる者の感性をゆっくりと研ぎ澄ませていく。
その一方で、館内にはモダンで芸術的なサロンなどのスペースもあり、伝統と現代性が美しく同居する。この“古と今の共存”は、まさにブランパンが体現してきた哲学そのものだ。ブランドの工房が位置するヴィルレもまた、自然豊かな土地であり、静謐と創造性が共存する環境であることを思い起こさせる。
今回披露された「ヴィルレ」の新作は、40mmのコンプリートカレンダー ムーンフェイズ、同じく40mmの3針ウルトラスリム、そして33.2mmのデイト ムーンフェイズを含む全16モデル。ケースは18Kレッドゴールドとステンレススティール、文字盤は細やかなグレインが美しい“オパリン”と、新色の“ゴールデンブラウン”の2種類が用意される。
一見すると既存のヴィルレを継承した“控えめなアップデート”に映るかもしれない。しかし細部に目を凝らすと、そこにブランド290年の節目を飾るにふさわしい刷新が確かに息づいている。
まず、インデックスのフォントはより彫刻的でシャープな輪郭へと進化し、12時位置には創業者ジャン=ジャック・ブランパンのイニシャルを象った「JBロゴ」が初めて採用された。このモチーフは新たにデザインされたスケルトンローターにも反映され、面取りとサテン仕上げが施された美しいオープンワークがムーブメントの鼓動を引き立てる。
ムーンフェイズの月は、既存モデルよりわずかに膨らみを帯びた18Kゴールド製を採用し、光を受けて生き物のような温度を感じさせる。またリーフ針のスケルトン部分には新たに蓄光素材が組み込まれ、実用性とモダンな表情が加えられた。
さらに、コンプリートカレンダーのケースは再設計され、若干の薄型化を実現。軽やかで品のある佇まいながら、腕元での快適性も向上させている。なお、既存モデルは継続となり、併売される。
緑溢れる舞台で新作に触れていると、湖面をそよぐ風や、能舞台に落ちる木漏れ日が、そのままヴィルレの美学に重なって見える。伝統を受け継ぎながら、静かに、しかし確かな変革を続ける姿勢。数百年の歴史を受け継ぐ旅館と、290年の歴史を刻む時計ブランド。その精神性は時を超えて響き合い、この日、唯一無二の瞬間をつくり出していた。
「ヴィルレ」の新作の登場とともに、ブランパンは未来に向けて新たな章を歩み始める。その幕開けを、修善寺の静寂とともに目撃した貴重な一日であった。
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