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目指すは勝浦タンタンメンのような名物ラーメン! 千葉県・館山駅近く「猪そば匠」のモーレツにウマい猪肉の絶品まぜそば

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白い壁にオレンジ色の瓦屋根が印象的な、JR内房線の「館山駅」。東口には、東京と館山を行き来する高速バス停があります。ロータリーの中央には、ヤシの木と季節の花が植えられた花壇。駅を出て視線を右寄りに移すと、小さなウッドデッキがあるテナントビルが目に入ります。施設の名前は「sPARK Tateyama(スパークタテヤマ)」。無人の古着屋やカフェ、クレープ店などが入った複合施設です。おしゃれな雰囲気漂うなか、ほかとはちょっと違う空気を放っているお店、「猪そば匠」。入ってすぐの場所にありますが、ふつうにスルーしてしまうくらい目立ちません。が、この店を目指してやってくる人たちがいます。どんな経緯で「猪そば匠」が生まれたのか、店主に話を聞いてみました。

自分がやるつもりじゃなかったのに……

まぜそば好きの店主、高橋新志さんは横浜から君津市へ移住し、現在は君津市と館山市の二拠点生活をしています。横浜とは違う、洗練されていない房総エリアでの暮らしが気に入っていますが、まぜそば屋がありません。「誰かやってくれないかなぁ」と、自分好みのまぜそばをつくれる仕組みを考えていました。

麺は茹でるだけ。豊富なトッピングは、嫌いなものを避けて好きなものを自由に入れられるように設置。途中味変もできるようにして、厨房はアルバイト一人でもワンオペでまわるようにする。

そんな仕組みを、10年ほど前から温めていた高橋さんですが、やってくれる人にはなかなか出会えませんでした。

そんなとき、「空き店舗があるから、誰かやってくれる人いないかな?」と知人から声をかけられました。温めていた仕組みの話をすると、「やってくださいよ」と言われてしまいます。

「猪そば匠」の店主、高橋新志さん

フリーランスで仕事をしている高橋さんは、「休みながら空いてる時間にやればいいかなと思って、自分でやることにした。けど、ビジネスはそんなに甘くなかった」と、苦笑しました。

イノシシ肉まぜそば「猪そば匠」は、こうして生まれた

館山市にも拠点を持ち、さまざまな人たちと交流を続けるなか出会ったのは、イノシシ肉でした。バーベキューでイノシシ肉を食べたとき、「もうれつにおいしいと思った」と、当時を振り返ります。

「館山ジビエセンター(TGC)」の沖浩志代表とも交流を深め、罠にかかったイノシシの9割は捨てられているという現実を知ります。このおいしいイノシシ肉を、なんとか広めて使うことはできないかと考え、「南房総バーベキュー協会」の立ち上げにも関わりました。ジビエを使うBBQを特色に、イノシシの丸焼きイベントにも携わってきた高橋さん。

南房総市内で開かれた、バーベキュー初級検定会場。 写真提供:高橋新志さん

イノシシへの熱い思いはあったものの、鶏肉や豚肉でもまぜそばの食べ比べテストを行いました。結果、イノシシ肉が圧倒的に人気だったそうです。値段だけみるとイノシシ肉は高くなりますが、館山市で採れるジビエであり、圧倒的なおいしさを誇るイノシシ肉を使わないわけにはいきません。

「猪そば黒」は、しょうゆベース、「猪そば赤」は、豆板醤ベースで、イノシシ肉のミンチ肉を茹でた麺に乗せてベースを回し入れ、卵黄が盛られた小皿と一緒に出されるイノシシそば。自分で味をつくるのが楽しいトッピングは、玉ねぎ、ネギ、ニラ、ショウガ、ニンニク、紅ショウガ、フライドオニオン、揚げ玉、魚粉、刻み海苔、小エビ、食べるラー油、ラー油、鶏油、酢を取り揃えています。

人生初、イノシシまぜそばを食らう

私はまぜそばを食べたことがなかったので、まぜそばの食べ方を聞いてみました。「好きなトッピングを乗せたら、ぐちゃぐちゃになるまでよく混ぜて。酢は味変で入れてみて」とのこと。特に好き嫌いがない私は、酢以外のトッピングを贅沢に全部乗せて、よくかき混ぜてから食べてみると濃厚! 濃厚な味わいを堪能したあと酢を加えると、まろやかに変身しました。

「sPARK Tateyama」へ入ってくる人は、入口右手にある「猪そば匠」の存在にはほとんど気づいていないようです。流れるように通り過ぎる人が多いなか、まっすぐと「猪そば匠」を目指してやって来る人たちが。釣りをしに茨城から来たという男性二人組は、ラーメン好きなためいつもはラーメンを食べるそうですが、イノシシ肉のまぜそばがあると知って来店しました。「臭みもなくて、味も濃いめでおいしかったです」と、感想を聞かせてくれました。

フロアに馴染みすぎて気づかれにくい「猪そば匠」。

館山名物「館山まぜそば」?

「猪そば匠」を今後どんなお店にしていきたいのか、目指していることを聞いてみました。

「チェーン展開して、勝浦タンタンメンみたいに『館山まぜそば』が名物になったら、まちおこしになるし面白い。海の食材も薬味に使えるし、サンガトッピングとかの応用もきくし。館山に限らず、全国各地でできる。夢は世界征服だな!」

と、高橋さんが思い描いている大きな夢を語ってくれました。オープンしてみたら「ビジネスはそんなに甘くなかった」と漏らしていた通り、さまざまな困難を乗り越え、2024年12月で2周年を迎えようとしている「猪そば匠」。「館山に来たらイノシシそば」と思ってもらえるよう、どんどん認知度を上げて廃棄されるイノシシの数が減ることを願います。

■猪そば匠
住所:千葉県館山市北条1880-1房州第一ビル(sPARK館山)Instagram:https://www.instagram.com/inosoba1713_staff/

写真:高橋新志、鍋田ゆかり
文:鍋田ゆかり

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