【被災地支援と防災】静岡県内からできる支援とは?「何かしたい」という思いに突き動かされ、学生が立ち上がる。今後の広がりに期待!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「被災地支援と防災」です。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年4月4日放送)
(山田)今日は防災の話ですね。
(山本)そうですね。衝撃が大きかった能登半島地震の発生から3ヵ月。石川県の資料によると、245人の方が亡くなり、住宅も7万6000棟以上に被害が出ました。いまだに市町村の避難所で過ごしている方が3470人もいるそうです(2日現在)。これだけ見てもかなり大きな災害だったと思います。
こうした状況を見ると、何かしたいと思うのが人情です。その動きの1つを4月2日の静岡新聞で紹介しました。被災地のために静岡からできることはないかと共通の思いを抱いた県内の大学生たちが、能登半島復興支援ネットワークという組織を設立したという記事です。
メンバーは7人。日頃学生と一緒に社会課題解決を目指す活動をしているNPO法人「ESUNE」(静岡市駿河区)の代表が声掛けして、何ができるかを輪を広げながら考えていこうということでネットワークという形になったそうです。
何かしたいが、何から始めたらいいかがわからないので、まずはそこから模索していこうという動きです。定期的に会合を開き、ボランティア派遣や能登の特産品販売などの実現に向けて準備を始めました。
(山田)すごいですよね。何かしたいということはわれわれも考えますが、大抵はそれだけで終わってしまいます。
(山本)そこから一歩進むのにはなかなか壁がありますよね。能登半島地震については報道を通じて被害の大きさというのは数字では分かるのですが、それに対して直接足を運ぶということは隣県でもないのでなかなかできるものではないです。しかも、今回は災害発生当初は受け入れ態勢が整わず、ボランティア活動が始まったのも少し時間が経ってからでした。
(山田)道路が寸断されて危ないからという事情もありましたからね。大学生たちは具体的にどういう活動をし始めているんですか。
まずは現地の課題整理からスタート
(山本)実はまだ具体的には決まっていない段階です。3月末に最初の勉強会を開き、現地でボランティア活動に関わったNPOの方から話を聞いて話し合う機会を持ちました。
そこでは、現地の学生団体と交流する、現地の特産品を集めて静岡県内でマルシェを開く、自分たちが現地に行く機会を調整する、といった案が挙がりました。アイデアベースでいろいろと話し合っているところですね。
(山田)賢いなと思ったのは、まずは現地に出向いた人から情報を集め、自分たちが何ができるのかということをきちんと考えてから動こうという部分ですよね。とりあえず現地に行ってみて考えるという手法もあるとは思いますが、そうではなくて本当に支援が滞っている地域だったり、本当に今必要なものだったりを見極めようとしているんでしょうね。
(山本)やはり物理的に距離が遠いので、静岡にいながらにしてどんな支援ができるかということも頭に入れながら話し合いを始めたということもあるようです。良い取り組みではないかと思います。
(山田)それも大事ですね。実際に彼らが集めている情報から見えてきている課題があるんですか。
(山本)3月中旬から下旬にかけて輪島市でボランティア拠点の管理業務に従事し、勉強会の講師役を務めたNPO法人「ESUNE」の斉藤雄大事務局長によると、まだ被災して手つかずのままの場所があるそうです。重機が入って倒壊した家屋を解体する工事が始まりつつありますが、解体前に必要な物を取り出す作業にも人手が必要だということです。一方で、学生の春休みが終わり、ボランティアの数が目に見えて減っているそうです。
(山田)人手が減っていくわけですね。
(山本)中長期的な人材の支援も必要になります。1泊2日程度の短期的なボランティアは集まりますが、現地に住み込みながら支援する人や、専門的な人材の確保はボランティアではなかなか難しい部分があります。そういう体制づくりと人材が足りないということも話していました。
(山田)こういう支援の形について、学生たちとNPOがピンポイントで模索していくというのは大事ですね。
「静岡で災害が起きた時も動けるように」
(山本)何が求められているのかというところを整理し、現地に行かなくても支援する形というのはあると思います。募金活動というのも立派な支援の形だと思います。静岡新聞・静岡放送文化福祉事業団にも2ヵ月ほどの間に2億2000万円の義援金が寄せられました。これも多くの方が何かしたいという気持ちを持っている表れだと思います。
斉藤事務局長は「学生の活動などを通じて中長期的に能登半島地震への関心を持つ人が増えるような支援ができれば」とも話していました。また、学生の1人は「能登のためだけでなく、静岡で災害が起きた時にも動けるような活動にしたい」と意気込んでいました。
(山田)本当にそうですよね。先日、台湾で大きな地震が起きたときに、現地の知人に連絡を入れたんです。そうしたら、たくさんの応援メッセージが届いていると言っていました。能登半島地震でも台湾は多くの支援をしてくれたので、「今こそ台湾に恩返ししよう」というムーブメントが起きているという報道も見ました。
われわれも「いつかは静岡に大きな地震が来る」と言われているわけですから、互いに繋がりを持っておくというのは大事ですよね。
(山本)そういったことを見据えて、静岡県内のボランティア団体は全国の団体とあらかじめ交流する活動を以前から進めています。
(山田)特に若い学生同士が繋がっておくといいですね。
(山本)学生の活動は卒業後、就職や転居などをきっかけに途絶えてしまうことがあります。これは仕方ない面はありますが、今日紹介したような学生の皆さんには、ずっと同じ思いを抱き続けていただきたいですね。そういう思いを込めて、活動に注目していきたいと思います。
(山田)ぜひ、4月2日の静岡新聞の記事もチェックしてみてください。今日の勉強はこれでおしまい!