ビルダーと彫金師のスキルが宿るハンドメイドの造形美【ショベルカスタム、この一台!!】
クラシカルな造形でありながら、トルクフルな性能を秘めた「コーンショベル」はカスタムベースとして最良の素材。この車両は「セブンスヘブンアートジュエリー」の馬場さんが所有する「FXE」をベースに、「アウトキャスト」の久保田岳さんが特定の時代感に囚われずに、ショベルの個性を活かして製作したフルカスタムだ。
美しさは、緻密に計算された機能から生まれる
カスタムビルドの作業は岳さんと木村旭陽さんが担当し、シルバースミスであるオーナーによるワンオフパーツが各部に散りばめられる。この車両の最大のアイキャッチはワンメイドのフレームラインにある。
「フレーム下部の車高は高く、全高は低く」をコンセプトとしたカスタムフレームは、メインチューブがネック下部に、ダウンチューブがより高い位置に繋がる独特な設計。それはコンセプトのアウトラインを実現するのと同時にネック部分の強度をアップデートする目的も兼ねた、造形と機能美を両立させたディテールであり、緻密な計算に基づくビルダーの堅実なクリエイションを物語る重要な要素といえる。
シンプルかつ柔らかいアウトラインに、繊細なメタルワークスキルを生業とするビルダーとシルバースミスの技術が集約された、ハンドメイドの造形美が唯一無二のオリジナリティを演出する。
「7th-Heaven Art Jewelry」代表・馬場大輔
“The JACK-O’-LANTERN”
カスタムフレームのラインがこのマシンの真骨頂。ネック部分はメインチューブがネック下部に、ダウンチューブがその上に繋がるローボーイフレームのようなデザイン。さらに、メインチューブからリアアクスルに向かうフレームラインがアールを描くように設計されている。
ライザー一体のハンドルをワンメイド。グリップもステップと同様のモチーフで製作。フロントブレーキレスだが、リアのブレーキレバーをハンドルに装着して操作性を高めた。
タンクはマスタングをベースにナロード。センターで割って左右のピースの内側の縁を立てて溶接し、前方にリブを設けている。丸棒のリブより滑らかラインに仕上げられている。
ナローなソロシートはベースをOUTCASTが製作、本革の手縫い作業を「スカンク」が担当。センターにレザーを重ね、リブを立てたハンドメイドのデザインに注目したい。
35㎜フロントフォークはボトムケースを削って、上部にクラウンのキャッスルが天地逆転した模様を生み出すモディファイ。ヘッドライトレンズはオーナー自らレジンでワンオフ製作。
心臓部は1340㏄コーンショベルのストックスペックで、純正を加工したスプリットロッカー。コーンカバーの形状にアールを合わせたダウンチューブのフレームラインにも注目したい。
スプリットロッカー化に伴い、オイルラインはケースから出る1本の配管から左サイドで2本に分かれ、最終的に4つのロッカーボックスに繋がるラインを製作。両出しマフラーはエンドに向かって広がるラインを描き、サイドからエンドに繋がるステンレスの装飾を設けている。
S&S SUPER Eキャブレターのアイドルスクリューはオーナーがブラスでワンメイド。ショーネームをイメージしたかぼちゃをモチーフに緻密な造形を具現化。
外装、フレームまで統一したパールオレンジペイント、ピンストライプはシェイキン清水さんの仕事。各部にポイントで加えられた焼き色のゴールドリーフがアクセント。
ポップアップのガスキャップにオーナーが製作したシルバー&ブラスのパーツをかぶせてドレスアップ。ステップはステンレスを削り出し、「Suicidal Tendencies」モチーフのクロスを立体的な造形で表現。
純正ロッカーカバーを加工してスプリット化。ショベルヘッドのロッカーカバーの角ばった部分を限界まで丸く手作業で削り込み、柔らかいフォルムに仕上げている。