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3年生、冬物語(2) 駅伝女子 自分の世界観を貫き、走り続ける奥本菜瑠海(大分東明) 【大分県】

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自分の世界観を貫く奥本菜瑠海

 宣言通りに区間賞を獲得した。昨年12月の全国高校駅伝に出場した大分東明の奥本菜瑠海(3年)は、各校のエースが集う1区で最初にタスキを渡した。「タイム的には納得していないが、狙っていた区間賞は取れた。この1年はいろいろなことがあったが、お世話になった方々に恩返しできたことがうれしい」と喜んだ。

 

 駅伝強豪校の興譲館(岡山)から3年時に大分東明に転校した。全国高校駅伝では過去2回、1区を走った実績があったが、新しい環境になれるまで時間がかかった。奥本は「興譲館は、部活以外の学校生活でもガチッとした規則が多かったが、東明は自主性に任せる部分が多く、最初は戸惑った。生活環境も変わり、転入当初は体調を崩すことも多かった」と振り返る。4月に足首をけがすると、5月にはインフルエンザに感染し、その後も風邪が長引き、本格的に走り始めたのが7月だった。結果を残せず焦りはあったが、それが逆に奥本のモチベーションとなった。

 

「先頭で走ることでしか見えない景色がある」と言う

 

 「大分の水に慣れたというか、一気に体が軽くなった。誰にも負けたくないという気持ちになった」(奥本)。練習から「自分の世界観」に没入することができるようになり、常に先頭を走った。「前に誰もいないのがいい。自分にしか見られない景色が広がるから。それが気持ちいい」と奥本。徐々にコンディションは上がり、8月の全国高校総体の女子3000m走では7位、10月の鹿児島国体は少年女子Aで3位、9分5秒40で自己ベストを更新した。上り調子で迎えた12月の全国高校駅伝は、「これが最後の大会だと思うと緊張した」。大会前日の夜に同部屋の下級生に胸中を打ち明けると、「初めて菜瑠海さんの人間らしい部分を見ることができた」と言われ、緊張が和らいだという。

 

 大会当日、スタートラインに立ったときは力がみなぎっていた。「よし、やったるぞ」と、いつもの強気の奥本に戻っていた。前半から積極的に前に出る、狙い通りのレース展開だった。過去2度、同じ区間を走ったライバルの山本釉未(立命館宇治3年・京都)との一騎討ちは燃えた。ラスト800mの攻防では、先に飛び出した山本に対し、「ここで離されたらあとで泣くだけ。意地でもついていく」とペースを上げて並走。山本の呼吸、足音を確認しながら「自分の世界観」に没頭した。すると視界が開け、ギアを上げて駆け抜けることができた。

 

 高校卒業後は実業団チームで競技を続けることを目指す。奥本は「またゼロからのスタートとなるが、自分に勝つだけ。誰よりも先に走って、ゴールする。それが3000mであってもマラソンであっても変わりはない。オリンピックで金メダルを取ることが目標」と宣言した。

 

次の目標は「オリンピックで金メダルを取ること」

 

 

(柚野真也)

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