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ARABAKIならではのスペシャルセッションが多数実現! ARABAKI PROJECT/GIP・菅 真良氏に2024年のARABAKIの見どころや出演秘話を聞いた

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ARABAKI ROCK FEST.22

「東北の音楽シーンの」ではなく「東北」の春の象徴的存在、ARABAKI ROCK FEST.の、2024年の開催が迫ってきた。郷土芸能や地元のエンタメやフードや会場の装飾などの、東北に根ざした演出。新人から超ベテランまで、毎年多彩な、かつライブ強者な顔ぶれが集うラインナップ。そして、2日間の間にあちこちのステージで行われる、この年のこの日にここARABAKIでしか観ることができない、特別なセッション企画──。


開催直前に中止を迫られるなど、コロナ禍による困難を乗り越え、2023年にコロナ禍前と同じ規模・同じオペレーションに立ち戻って大成功を収めたARABAKIは、2024年はどのような2日間になるのか。ARABAKI ROCK FEST.の発起人であるGIP・菅真良氏にそのビジョンを訊いた。そして今年のセッション企画について、ひとつずつ解説していただいた。

──昨年(2023年)は、2019年以来久々に、コロナの規制がない本来の形で開催できた回でしたが、いかがでした?

やっぱり久しぶりだったので、お客さんも含めて、楽しみ方を思い出しながらやっていたんじゃないかなと思いますね。お客さん同士の歩いている距離感とかを見ていてそう思ったのと、あと世代が変わった感じも……たとえば前方のスタンディングエリアでのお客さんの楽しみ方もコロナ前の2019年とはちょっと違っていて。おっかなびっくりダイヴしている人もいたし。お客さんも出演者も含めて、空白の数年間によって世代ギャップが生まれた、2024年はそのバランスの取り方がけっこう難しいなとは思いました。でもARABAKIでずっとやってきたレジェンドを大事にすることとか、ここでしか観れない企画を極力たくさん実施するっていうことはできる限り続けていきたいと思って。結果的にセッションの数も相当増えて、いい企画がたくさん組めたな、とは思います。

──ここでしか観れないセッションが毎年あるというのは、ARABAKIの大きな魅力ですが、セッション企画って、労力の割には必ずしも券売に直結しないというのはありますよね。

(笑)そうですね。

──あのポリシーを貫くのは大変だと思って。菅さんの中に相当強い動機があるんだな、と。

第一に僕が、そういう企画に対して、他の人よりも敏感だったかもしれないですね。僕が中学生の頃に『メリー・クリスマス・ショー』という番組があったんですよ(1986年と1987年のクリスマスイブに、日本テレビ系で放送。桑田佳祐が中心となって企画された)。BOØWYの氷室京介さんと吉川晃司さんが一緒にビートルズの「カム・トゥゲザー」を歌ったり、セッションを行う番組でした。それを観て、夢があるなあと思ったんですよね。あと昔、東北で『ロックンロールオリンピック』というイベントがあったんですが、そこでルースターズとTHE ROCK BANDのメンバーが中心になったセッションがあったり(1988年8月7日)。自分がイベントの仕事をやるようになったら、そういう特別なことをたくさんやれたらいいなと思っていた、というのが、根底にあります。

──フェスって、その時の人気アーティストに出てもらって動員を上げようとすると、どこへ行っても同じようなブッキングになるじゃないですか。という中で、横並びではないものを見せたい、という気持ちは──。

あります。ARABAKIを立ち上げる前の年に、スマッシュの日高(正博)さんのところにご挨拶に行ったんですよね。その時に日高さんが話してくださったのは、ヨーロッパのフェスの多くはイベント・サーキットみたいになっていて、どこへ行っても同じ内容でやる、日本もいずれそうなると思うから、続けていくんだったら個性を出しなさい、と。そのお話を受けながらなんとなく描いたのが、東北の郷土芸能を企画の中に入れていこうということでした。それで西馬音内盆踊りや秋田民謡の藤原美幸さんや津軽三味線の夢弦会にオファーをしたんですけれども。ARABAKIを立ち上げる数年前に──フジロックが立ち上がる3〜4年前だったと思うんですけど──ニューオリンズの『ジャズ・アンド・ヘリテイジ・フェスティバル』に行ったんです。地元の商店街のおじさんたちがやっているステージにドクター・ジョンが飛び入りしていてすごいなと思ったんですよね。あと、食べ物がものすごく田舎っぽいんです。ザリガニの串焼きを売っていたりとか。そういうのを、日本の東北っていう特徴的なエリアに当てはめた時にどんなことができるかな、ということを思い描いて始めました。

西馬音内盆踊り(ARABAKI ROCK FEST.23)

川内太鼓(ARABAKI ROCK FEST.23)

津軽三味線(ARABAKI ROCK FEST.22)

チョコ衛門(ARABAKI ROCK FEST.23)

──みちのくプロレスの参加も、同じようなところから始まったアイディアですか?

そうですね。東北に根ざしたエンタメを入れたいと考えた時に、グレート・サスケ社長に相談したのが最初でした。そしたらすぐに話が進んだんです。巡回興行をやっていらっしゃるだけあって、「この場所でこんな感じのことを何試合やってください」っていうことに慣れていて。30分で試合を決めてくれたりするんですよね。

──で、郷土芸能もみちプロも、現在まで毎年続いていますよね。

そうですね。つらかった時期も何度かありましたけど……一回目は、赤字が続いた時ですね。立ち上げから5年間ぐらいは、相当厳しかったんですよね。

──っていう時に、制作費を抑えようとすると、最初に削られる部分ですよね。

でも、フェスの完成形を想像した時に、絶対必要なプログラムだっていうことは、ずっと信じてやってきました。2005年に開催を夏から春に変えたタイミングから、なんとなくお客さんが我々がやりたいことを理解してくれた手応えがありました。そこで最初の正念場を乗り越えられた。だからギリギリだった気がしています。

みちのくプロレス(ARABAKI ROCK FEST.19)

──ではここから、2024年のセッション企画に関して、ひとつずつうかがっていきます。

ARABAKI ROCK FEST.24 MICHINOKU PEACE SESSION


9mm Parabellum Bullet -20th ANNIVERSARY CARNIVAL OF CHAOS in ARABAKI-


TAKUMA(10-FEET)/川上洋平([Alexandros])/石原慎也(Saucy Dog)/徳澤青弦カルテット


27日(土)19:15 MICHINOKUステージ

9mmは15周年の時にセッションの企画に立候補してくれて、こちらからお願いするだけじゃなくて志願してくれる人がようやく出てきたな、と思ったんですよね。ベースの中村(和彦)くんは宮城県の多賀城の出身です。ARABAKIは最初の数年間は宮城県の海沿いで実施してたんですが、その時に中村くんは高校生で会場に自転車で来た、というのを聞いて。ボーカルの菅原(卓郎)くんも山形の出身です。今回20周年のゲストのブッキングは、たくさん出てもらうというよりも、自分たちのステージも大事にしたいし、セッションのブロックも大事にしたい、という申し入れがありました。だからゲストの数は15周年の時の2/3ぐらいだと思います。

リーガルリリー 10th ANNIVERSARY “Deep Trip”〜ARABAKI SPECIAL〜


小山田壮平


崎山蒼志


アユニ・D(PEDRO)


27日(土)20:20 ARAHABAKIステージ

リーガルリリーのたかはしほのかさんと初めてお会いした時にARABAKIに強い思い入れがあるということを伺いました。彼女は岩手県が好きでお母さんとよく旅行に行くそうなんですが、遠野とか花巻の東北の空気がすごく好きみたいなんですね。それで、うちのリーガルリリーの担当者から「周年の企画をバンドに提案していいか」と聞かれたので、「きっとARABAKIのことを理解してくれているバンドだからお願いしようか」と答えました。

GLIM SPANKY 10th ANNIVERSARY


〜ARABAKI SPECIAL〜


LOVE PSYCHEDELICO


ROY(THE BAWDIES)


サイトウタクヤ(w.o.d.)


27日(土)19:10 TSUGARUステージ

GLIM SPANKYとの今回の企画は2年越しぐらいで話していました。去年のARABAKIのLOVE PSYCHEDELICOのゲストでGLIM SPANKYが出たということもありながら、GLIM SPANKYとして10周年にこういう企画をやりたいということは本人たちがずっとイメージされていたそうなんです。GLIM SPANKYは僕がやっている猪苗代湖の『オハラ☆ブレイク』にも常連で出てくれていて、ボーカルの(松尾)レミさんから、音楽のルーツなどの話をきく機会が多く、僕としてもARABAKIでのセッションは想像しやすいと思っていたので楽しみですね。

ARF 25 A GO GO(for CAMPERS)


[バンドメンバー]


隅倉弘至(Ba)


高野勲(Key)


八橋義幸(G)


真壁陽平(G)


あらきゆうこ(Dr)


神谷洵平(Per&Dr)


[ゲストボーカル]


4月27日当日のステージにて発表


27日(土)21:30 HANAGASAステージ

隅倉くんがバンマスのセッションですね。初恋の嵐を母体にして、初恋の嵐の曲もやるし、恋愛をテーマにしたカバー曲もやりましょうっていう話をしていたことがあったんですが、結局コロナで中止になってしまいました。でも、コロナで中止になった時の内容を今回企画の柱に持っていくのはちょっと違うと思いました。隅倉くんがARABAKI中止の後に渋谷で開催した50歳の企画ライブの時のバンドがすごくよかったと言っていたので、それをひとつの柱にして、歌う人は完全シークレットで、キャンプサイトの人だけに企画をしようか、と。ARABAKIは25周年なので、周年をキーワードにするのもいいかなと思って詰めていきました。今演奏する曲を公募しているんですが、結果を開催前に発表して、どんな人が当日歌うのかを想像してもらおう、という企画にしてますね。8曲から10曲になる予定です。

BIG BEAT CARNIVAL〜ロックンロールの夢〜


[バンドメンバー]


池畑潤二(Dr)


花田裕之(G)


ヤマジカズヒデ(G)


ウエノコウジ(Ba)


細海魚(Key)


[ゲスト]


クハラカズユキ(The Birthday)


ヒライハルキ(The Birthday)


フジイケンジ(The Birthday)


浅井健一


奥田民生


SION


TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU/the LOW-ATUS)


松尾レミ(GLIM SPANKY)


亀本寛貴(GLIM SPANKY)


細美武士(ELLEGARDEN、the HIATUS、MONOEYES、the LOW-ATUS)


百々和宏(MO’SOME TONEBENDER)


YONCE(Suchmos・Hedigan’s)


[MC]


スマイリー原島


27日(土)20:00 BAN-ETSUステージ

ARABAKIが立ち上がった経緯も含めて、やはりチバユウスケさんというのはすごく大きな存在です。訃報をきいた時に……みなさんも当然そうだと思うんですけど、我々もすごくショックでした。極論を言うと、ARABAKIを開催することも、はたして正常な精神状態でやれるのかな、と思っていた時期もあったんですよね。いろいろ考えた中で、チバさんがThe BirthdayとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかROSSOといったご自身のバンド以外で出演してくれたのがBIG BEAT CARNIVALっていう池畑潤二さん主幹の企画で。ARABAKIが中心になってチバさんの曲をやるっていうことよりも、池畑さんに委ねた方がいいんじゃないかと思ったのがきっかけでした。チバさんの献花式の時に池畑さんとお会いして、そういうお話をしました。2011年にやってくださったチバさんも出演した池畑さんの企画の時に出演者のサインが書いてある池畑さんのドラムのヘッドを、うちの会社に飾ってるんですよ。ミッシェルが解散してから初めてチバさんとウエノ(コウジ)さんが共演したのがBIG BEAT CARNIVALでもありました。そういうことを池畑さんと話していた時に、「『ロックンロールの夢』っていうタイトルがいいんじゃないか」って、池畑さんがおっしゃって。

──ARABAKIで正面からチバユウスケのトリビュート・ライブをやるのは違う、でも何かしなければ、じゃあ企画を考えよう、という。

そうですね。チバさんのトリビュートをそう銘打って行えるような時期でも立場でもないなって思ったんですよね。一方でARABAKIに来てくれるお客さんのことを考えると、何かを企画を立てた方がいいという思いもあって。以前チバさんがテレビの企画でご自身が影響を受けた40曲を発表してたんですが、その40曲を選曲の軸にするのがいいじゃないかと思って池畑さんに相談したら池畑さんも乗ってくれました。

ARABAKI ROCK FEST.24 MICHINOKU PEACE!!


10-FEET〜アラバキセッション大作戦〜


[ゲスト]


川崎中学校吹奏楽部


茂木洋晃 from G-FREAK FACTORY


片桐 from Hakubi


Tokyo Tanaka & Jean-ken Johnny from MAN WITH A MISSION


NOBUYA&N∀OKI from ROTTENGRAFFTY


28日(日)19:30 MICHINOKUステージ

どこかで10-FEETに陸奥ステージのセッションの企画をやってほしいと思っていた頃に『SLAM DUNK』で10-FEETの「第ゼロ感」が大ヒットしたんです。それで今のタイミングが良いんだろうなと思って連絡をしてみたら、もうふたつ返事で「やりましょうか」と言ってくれました。10-FEETもARABAKIとは長いお付き合いになるバンドですが、どんな時間帯のARABAKIにも似合うんですよね。「Cherry Blossom」っていう曲がARABAKIに似合うんですよ。ゲストとして川崎中学校吹奏楽部が出演しますが、10-FEETは毎年ARABAKIに川崎中学校の吹奏楽部が出ていることを把握していて、「1曲一緒にやってほしい」と言ってくれたんです。それでその日のうちに吹奏楽部の顧問の先生にメールしたら送信した1分後くらいに電話がかかってきてものすごく喜んでいました。誘ってよかったなと思いましたね。

川崎中吹奏楽部(ARABAKI ROCK FEST.23)

the pillows 35th with ARABAKI LITTLE BUSTERS


[ゲスト]


松尾レミ(GLIM SPANKY)


宮崎朝子(SHISHAMO)


TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU/the LOW-ATUS)


28日(日)18:30 ARAHABAKIステージ

ARABAKIにとってthe pillowsのステージというのはかなり特別です。日本武道館をやる前の年(2007年)、仙台で300〜400人くらいの動員だった時代にARABAKIでthe pillowsに大トリを務めてもらいました。その時は、(山中)さわおさんがゲストをいっぱい入れてやるようなライブをイメージできなくて、「自分たちだけでやりきりたい、お客さんが少なくてもいい、そういう心意気でオファーしてくれているんだったら引き受けますよ」ということでした。そこでthe pillowsのことを推すためにいろいろとやった結果、10000人ぐらい入る陸奥ステージがほぼほぼ満員になりました。その後、2019年は30周年トリビュートとして大きな企画をやりました。今回の35周年は、the pillows側は「大がかりな企画は特にやらなくてもいいですよ」と言ってたんですけど、どちらかと言うとお客さん側から「やってほしい」っていう声が多かったので、話し合って3組ぐらいのゲストを呼んだ企画をやることになりました。

古市コータロー


-みちのく還暦のブルース-


[バンドメンバー]


浅田信一(G)


鈴木 淳(B)


古市健太(Dr)


オヤイヅカナル(Key)


真城めぐみ(Cho)


[ゲスト]


大森南朋


TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU/the LOW-ATUS)


増子直純(怒髪天)


28日(日)14:30 TSUGARUステージ

コータローさん及びTHE COLLECTORSとの付き合いは、ARABAKIの立ち上げの前からです。節目節目でお世話になったギタリストですね。しかもコータローさんの実家は岩手の水沢エリア。コータローさんは「照れくさい」とおっしゃってましたが、今回の還暦のタイミングで何かやりたいなと思ったんですよね。最初に決まったゲストはTOSHI-LOWくんです。TOSHI-LOWくんは他にもいっぱい出てもらいますけど(笑)。あと、大森南朋さんはプライベートで親しいらしく、何か一緒にやりたいと。怒髪天の増子さんは同世代だし、深いつながりがありますよね。で、ドラムがコータローさんの息子さんの古市健太さん。

ARABAKI ROCK FEST.19

──最後に2024年のARABAKIの目標について教えてください。

とにかくたくさんお客さんに来てほしいと思ってます。24年も続けてきて、いろいろなことを企画して、乗り越えて、新しい世代の出演者も、長年出てくださっている人たちもいる中で、俯瞰して見た時に……長く続けて来た企画やつながりを当然大事にはしたいと思うんですが、新しい血を入れていかないとも思っています。チバさんもBUCK-TICKの櫻井(敦司)さんもKANさんも、お世話になった方々が続けて亡くなられてしまったのもあって……。リセットするつもりはないですし、継承していきたいと思っているんですが、ARABAKIスタイルっていうことだけを推し続けるっていうのはおそらく今年がひとつの節目なのかなという気はしています。新しいフェスのあり方、新しいイベントのあり方を、ARABAKIだけじゃなくて、全国的に考えるべきなのかもしれないですし。開催している時期についても、急激な温暖化で夏は暑過ぎるため、当初はあまりなかった春の開催も増えてきました。観てほしいことをやり続けるっていう気持ちは変わらずに……。僕はそうやっていきたいですけど、ARABAKIをこれからも末永く続けるために、どこかのタイミングで若い世代に受け継ぐことが必要です。若い世代が時期や規模や見せたいことをきちんと考えて、理想を芯に持ちながら続いていってほしいなと思っています。今年すべてをやってみて、2日目の終わりぐらいに、来年以降のことがはっきりと見えていればいいな、と思うんですけれども。ARABAKIを立ち上げた頃の音楽フェスティバルの役割は年々違ってきているかもしれませんが、毎年その年でしか観れないことをやってきた自負はあります。今年もさらに強く、2024年のARABAKIでしか観れない景色を見逃さないようにしていただきたいですね。

取材・文=兵庫慎司

※この取材は4月16日に行われました。

ARABAKI ROCK FEST.19

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