【お金】いま知っておきたい「社会保障制度」と「年収の壁」をわかりやすく解説!
2024年の衆議院選挙後、国民民主党は「手取りを増やす政策」の中でも103万円の年収の壁を178万円に引き上げるという政策を掲げ、働き控えを解消するために動いています。
しかし、103万円は税金(所得税)に関する年収の壁であって、実際手取り額が大きく変化するのは106万円の社会保険に関する年収の壁になります。
この記事では、知っておきたい社会保障制度と年収の壁の関係と、年収の壁を超えるメリット・デメリットについて解説します。
社会保険が関係する年収の壁とは
まず「年収の壁」とは、その年収を超えると、税金や社会保険料が変わる金額を指します。税金や社会保険料がかからないように、年収を抑えようと意識される金額のボーダーラインになります。
そんな年収の壁は大きく分けて6つありますが、今回は社会保険料に関係する106万円と130万円の壁について詳しく見ていきましょう。
106万円の壁
106万円の壁は、勤務先の企業規模や労働時間によりますが、社会保険に加入することになる壁です。月額賃金など一定の条件を満たすと社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入が義務づけられます。2024年10月から、従業員数51人以上の企業まで適用が拡大しています。
勤務先の従業員数が50人以下の場合は適用対象外となり、社会保険への加入が必須ではありません。
130万円の壁
130万円の壁は、勤務先で社会保険に加入することになる壁です。そして、それまで配偶者の社会保険で扶養されていた人は、扶養から外れることになります。
社会保険の概要
働き方と大きく関係する、社会保険の概要について確認しましょう。
社会保険とは、国民の安心や生活の安定を支える社会保障制度で「年金・健康保険・介護保険」の3つからなる強制加入の制度です。特に年金制度は、老後の生活を支える土台となる収入になりますので、現役時代からの備えが重要になります。
社会保険の適用拡大
社会保険は、事業者側の基準と労働者側の基準、両方を満たしてはじめて適用されます。
社会保険が適用される事業者側の基準として、2024年10月から従業員数51人以上の企業まで社会保険の適用が拡大されました。なぜ今そのようなことが起きているというと、社会保険の適用拡大には国民年金の第2号被保険者(厚生年金加入者)を増やして、社会保険の担い手を増やしたいという国の考えがあります。
また、働き方の多様化が進む中、短時間で働く人も将来受け取る年金額を増やす必要があるとして、社会保険への加入要件をより緩和する方針です。
社会保険が適用される労働者側の基準としては、以下の4つに当てはまることが必要です。
・週の勤務時間が20時間以上
・給与が月額88,000円以上
・2カ月を超えて働く予定がある
・学生ではない
この事業所側の基準と労働者側の基準の両方を満たすことにより、社会保険に加入する義務が発生します。
社会保険に関する年収の壁を超えるメリット・デメリット
社会保険に加入することで、目先の手取り額が減ってしまうと残念な気持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、長期の目線でみると実はメリットも大きいです。
メリット
社会保険に加入することで、将来の安心と安定を増やすことができます。
例えば、以下のようなメリットがあります。
・将来受け取る年金額の増加
・業務外の病気や怪我で会社を休んだ時に、傷病手当金が受け取れる
・出産時の手当金が受け取れる
・社会保険料は労使折半
・働く時間が増えることで、職場での昇給やキャリアアップにつながる可能性あり
これらの中でも、一番のメリットは厚生年金に加入すると将来受け取る年金額が増えることです。
例えば、年間給与120万円で厚生年金に25年加入した場合、年金を65歳~80歳まで15年間受給すると、累計220万円の増額になります。高齢期の収入の柱は年金がメインですので、その金額が増えるのは心強いですね。
デメリット
デメリットは、社会保険料や税金が増額する分、収入に対する手取り額が減少することです。また、配偶者の勤務先からいわゆる配偶者手当が出ている場合、受け取れなくなる可能性があります。
メリット・デメリットそれぞれありますが、年金定期便や年金ネットで自分が将来受け取れる公的年金額を調べてみて、増やしたいと思ったら厚生年金に加入すると上乗せすることができます。
長期目線でみると、年金額の増額だけでなく、傷病手当金が出るので、病気や怪我をして収入が減るリスクをカバーすることもできます。
今の収入は、今の生活のためだけでなく、将来の自分のためのお金でもあります。将来の自分も支えるために、働き方を考えたり社会保障制度を理解したり、年収の壁に捕らわれず、長期の目線で働き方を考えて行動に移すことが重要です。
目先の収入だけでなく、将来にわたっての収入を考えて、経済的な不安を減らして、将来に備えることができる自分に合った働き方が見つかるといいですね。
【執筆者プロフィール】
田端 沙織(たばた さおり)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー
証券・運用会社で10年超の勤務経験を活かし、ファイナンシャルプランナー・金融教育家として「正しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える講座や相談業務を行っています。得意分野は資産運用。小学生2人と保育園児1人の3児を絶賛子育て中。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)