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猫の『寿命』は被毛の長さでも違う?猫の“命の長さ”を決める3つの要素

ねこちゃんホンポ

被毛の長さと寿命の関係

長毛の猫種といえば、ペルシャやメインクーン、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャットなどです。これらの長毛種は、短毛種と比べて寿命に違いはあるのか、被毛の長さと寿命の関係を見てみましょう。

長毛は長生き?

ペット保険を取り扱う保険会社の調査によると、2022年の段階での平均寿命トップ10にペルシャ(14.1歳)、チンチラ(14.9歳)、ラグドール(14.5歳)が入っています。混血種を含む猫全体の平均寿命が14.5歳なので、これらの猫種の多くが平均かそれ以上の長生きをしていることになります。

一方で、この順位には短毛種である日本猫や混血種、アメリカンショートヘア、短毛と長毛が含まれるアメリカンカールなどが入っています。つまり、被毛の長さは寿命を直接的に決定する要因ではなく、むしろ健康管理や生活環境がより重要な要素であることが考えられます。

寿命と被毛の長さの関係

猫の毛の長さは、長いということ自体で寿命を縮める要因になることはないですが、間接的に寿命や健康に影響を与える可能性があります。被毛の長さに関連するケアや環境要因が、健康状態に影響を与えるという点です。

長毛種の場合、毛玉(ヘアボール)形成のリスクが高く、これは健康状態に影響を与え、結果として寿命にも影響する可能性があります。

長毛はグルーミングをする際に飲み込んでしまう量が多く「毛球症」を引き起こす可能性があります。毛玉が胃腸内でフェルト状に硬くなり、詰まってしまうのです。この状態は腸閉塞を誘発したり、胃内で巨大化して摂食量が減ったりするため、命に関わります。

また、長毛種は暑さに弱い場合が多く、特に湿気の多い日本の夏は熱中症になりやすい傾向にあります。熱がこもりやすく体温調節ができない長毛猫は、「暑いなぁ」と思っているうちに命を奪われてしまう危険があるのです。

猫の寿命を決める3つの要因

では、実際に猫たちの寿命を決めている要因には、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。

1.遺伝的要因

純血種は、特定の遺伝的な特徴を残すために、掛け合わせる相手の猫を選択しています。そのため、父猫と母猫が代々引き継いでいる遺伝性疾患のリスクが高まる傾向にあります。

たとえば、ペルシャ猫は多発性嚢胞腎、スコティッシュフォールドは関節炎、メインクーンは肥大型心筋症などの遺伝性疾患を持つ可能性が比較的高いことが知られています。

一方で、混血種(いわゆる雑種)の猫は、遺伝的な多様性が高いため、有害な遺伝子が薄まる効果があります。そのため、一般的に純血種よりも長寿の傾向にあります。これは「雑種強勢」と呼ばれ、多様な遺伝子を持つ個体のほうが健康で丈夫、そして長生きする傾向があることを示しています。

2.栄養や生活環境

日本国内で飼われている猫に関する調査において、20年前の猫の平均寿命は9~10歳ほどでしたが、現在は約14~15歳まで伸びました。その要因のひとつとして栄養状態の向上、ペットフードの品質の向上、飼育方法の変化があげられています。

猫の栄養として欠かせない良質なタンパク質やビタミン、ミネラルをバランスよく含むキャットフードが種類豊富になり、なおかつ消費者が手軽に購入できるようになったためです。

そして、生活環境でも、清潔で快適な室内で暮らすことが長寿の秘訣です。これは外にいて事故や怪我、感染症と常に隣り合わせの生活をしている猫との比較をすれば一目瞭然です。

ただし、室内でも冷暖房の提供がなく、寒暖差ストレスが大きい場合や多頭の過密飼育の場合には、免疫力が低下しやすいため病気を発症しやすくなります。

3.ライフスタイル

猫のライフスタイルは、どうしても家族の生活パターンに影響されやすい傾向にありますが、猫にとっても適度な運動は非常に重要です。運動不足は肥満を招き、関節炎や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。特に室内飼いの猫は、栄養豊富な食事に対して運動不足になりがちです。

同時に休息とのバランスも重要です。猫は本来、朝と夕方に活動的になりますが、この時間を除くと1日の大半を睡眠やグルーミングなど休息に費やしています。不規則に食事を与えたり、猫の望まないタイミングで遊びに誘ったりすることで、猫が本来持っているパターンを崩してしまう危険があります。

ランダムな生活パターンが、慢性的になると免疫力が低下し、病気にかかりやすくなることがあるため、愛猫の健康を守るためには、飼い主自身もが猫の自然な生活パターンを尊重することが大切です。

まとめ

猫の寿命は、被毛の長さというひとつの要素だけではなく、遺伝的な背景や日々の環境、ライフスタイルなど、複数の要因が複雑に関連しあって決まることがわかりました。3つの要因の中には、飼い主にはコントロールできないものもありますが、適切な環境管理や生活パターンの維持など、私たちができることもあります。

遺伝など猫自身の持ちえる疾病リスクについては飼い主が変えることはできませんが、これまでの統計から、適切な食事を与え、快適な室内環境を整えることで猫の寿命は着実に伸びることがわかっています。さらに猫が持っている習性や生理を理解することが重要です。被毛の長さは直接的な寿命を決定するわけではありませんが、長毛種は毛玉対策や暑さ対策など、より丁寧なケアが必要です。

大切なことは、寿命を延ばすことだけを追求することではありません。猫種の特徴を理解し、個々の猫の習性や好みに合わせたお世話を心がけつつ、定期的な健康診断や予防医療を合わせることで、結果として、より長く健康的な生活を送ることができるということなのです。


(獣医師監修:唐野智美)

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