群集墳テーマに特別展「播磨に現れた黄泉国」
今から1300〜1500年前に日本列島各地で数多く築かれた古墳群にスポットを当てた特別展「群集墳―播磨に現れた黄泉国―」が有年楢原の赤穂市立有年考古館で開かれている。
群集墳とは、小型の古墳が密集した古墳群で5世紀から8世紀初めにかけて盛んに築かれた。北海道から鹿児島まで、その数は全国で10万基以上に及んだとされ、「日本列島全体が古墳造りに沸いた、まさに『古墳ブーム』の時代」(山中良平学芸員)だったという。
6世紀になると「横穴式石室」と呼ばれる埋葬用の部屋が設けられ、一つの古墳に数人から十数人を埋葬する「追葬」が始まった。初期群集墳の時代には「軍事や外交で王や有力者に仕えた人々」に限られていた埋葬対象は地域の有力者や豪農にも拡大され、より広い階層が葬られるようになった。しかし、大和朝廷が646年に「薄葬令」を定め、必要以上に大きな墓を造ることを禁止した以降は徐々に古墳は築かれなくなり、播磨でも8世紀初頭を最後に群集墳の築造や追葬はほぼ行われなくなったという。
今展では、上郡町の大酒古墳群、姫路市の丁山頂古墳など播磨各地の群集墳約30か所を時代順に紹介。出土品約220点を展示し、時代に伴い変遷した古墳の構造や埋葬方法などを通して、当時の社会や死生観の移り変わりを考察している。
「群集墳は当時の人々にとって単なる『墓地』ではなく、自らの身分や地位、死生観を表す重要な場所だった。だからこそ、自分や集団を表現するために、競い合うように個性豊かな群集墳を築いたのだろう」と山中学芸員。「展示を通して、遠い昔を生きた人々の豊かな歴史と文化を感じてもらえれば」と話す。
入館無料。11月18日(月)まで午前10時〜午後4時(入館は3時半まで)。火曜休館。TEL49・3488。