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65歳以上の介護保険料の全国平均は月額6,225円!介護費用は計画的な準備を

「みんなの介護」ニュース

阿部 洋輔

65歳以上の介護保険料はいくら?

65歳以上の介護保険料の全国平均は月額6,225円

65歳以上の方が支払う介護保険料は、全国平均でいくらぐらいなのでしょうか。厚生労働省によると、2024~2026年度の65歳以上の介護保険料の全国平均は月額6225円となっています。

介護保険制度が始まった2000年当初の全国平均は月額2911円でした。それから20年以上が経過し、この間に保険料は2倍以上に跳ね上がっています。この背景には、高齢化の急速な進展があります。

厚生労働省の推計によると、2023年10月1日時点の65歳以上の高齢者人口は約3600万人と、総人口の約3割を占めるまでになりました。高齢者の増加に伴い、介護サービスの利用者数や介護給付費も右肩上がりで増え続けているため、介護保険料への転嫁は避けられない状況です。

今後、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上となる2025年に向けて、介護需要はさらに高まることが予想されます。超高齢社会の到来とともに、介護保険料の上昇は避けられない課題と言えるでしょう。公的介護保険制度の持続可能性を高めるためにも、私たち一人ひとりが老後の備えについて真剣に考える必要がありそうです。

都道府県別の介護保険料データと高い理由

介護保険料は、市町村ごとに設定されるため、地域差があるのも特徴です。厚生労働省のデータによると、第8期の保険料基準額が最も高いのは大阪府、月額7486円となっています。一方、最も安いのは山口県の月額5568円でした。

なぜ、こんなにも地域差が生じるのでしょうか。その理由は高齢者の状況が地域によって違うためだといえるでしょう。

高齢化率はもちろん、その地域に介護施設が多いのかということや要介護認定率も関係してきます。介護が必要な方が多ければ、介護サービスの利用者数も多くなり、介護給付費も嵩みます。

保険料は、介護サービスにかかる費用を65歳以上の方の人数で割って算出するため、高齢者の割合が高い地域ほど保険料も高くなる傾向にあるのです。

ほかにも、地域の所得水準の差や、介護サービスの提供体制の充実度なども影響していると考えられます。

介護サービスの整備が進んでいる地域ほど、事業所数が多く、サービスの利用率も高くなる傾向があります。また介護職員の人件費など、サービス提供にかかるコストも地域ごとに異なります。保険料の地域差は、そうした様々な要因が複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。

地域によって高齢化の進み具合や社会資源の状況はさまざまです。画一的な制度設計だけでは、地域の実情に合わない歪みが生じてしまいます。地域の特性を踏まえたきめ細かな施策の展開と、地方自治体間の連携強化が求められる所以でしょう。

75歳以上はさらに負担が増える

75歳以上になると医療保険が後期高齢者医療制度に移行します。介護保険料と医療保険料を合わせると、老後の生活費に占める社会保険料の割合は大きくなります。

「人生100年時代」と言われる長寿社会において、いかに健康寿命を延ばし、社会保障費の増大を抑制していくかは大きな課題と言えるでしょう。

元気なうちから介護予防に取り組むとともに、万一の場合に備えて計画的な資金準備をしておきたいものです。公的保険に頼り切るのではなく、自助と共助のバランスのとれた老後設計が求められる時代と言えそうです。

介護保険料はどのように決まる?65歳以上の計算方法を解説

介護保険料の計算の基礎となる「基準額」とは

それでは、65歳以上の方の介護保険料は具体的にどのように計算されるのでしょうか。保険料は、市町村ごとに設定される「基準額」を基に算定されます。

基準額は、介護サービス利用者数の推移や介護報酬改定率、利用者負担割合などを勘案して、3年に1度見直しが行われます。第1号被保険者(65歳以上の方)の平均所得金額も基準額の計算に用いられます。

つまり、介護サービスにかかる費用総額を推計した上で、65歳以上の方の保険料でまかなうべき金額を算出し、被保険者数で割ったものが基準額となります。介護サービスの充実を図りつつ、保険料の上昇を可能な限り抑えるために、給付と負担のバランスを図ることが重要なのです。

基準額は市町村ごとに異なりますが、介護サービスの利用状況や高齢者人口の増減など、地域の実情を色濃く反映したものとなります。したがって基準額の水準は、その自治体の介護保険財政の健全性を測る上での重要な指標と言えるでしょう。

今後も高齢化のさらなる進展に伴い、基準額の上昇は避けられない情勢です。地域の実情に即した、きめ細かな制度設計が求められます。

所得に応じた介護保険料の段階別設定

次に、基準額をもとに、被保険者個人の保険料がどう計算されるかですが、65歳以上の方の介護保険料は一律ではなく、所得に応じて段階的に設定されています。

所得が低い人は基準額よりも低く、高い人は高く設定されています。所得段階は複数に分かれており、保険料率も段階によって変動します。

各段階の対象者は合計所得金額や年金収入などに基づいて判定され、本人や世帯主の所得に加えて、同一世帯の65歳以上の方の所得も合算して決められます。所得の捕捉については、住民税の課税状況等を基に行われます。

このように、保険料の設定に所得を反映させることで、負担能力に応じた制度設計を行い、負担の公平性を確保しているわけです。介護保険制度の被保険者は、40歳以上のほぼ全ての国民。所得のない学生や主婦なども含まれており、保険料負担の公平性をいかに担保するかは制度設計上の大きな課題と言えます。

近年では、単身高齢者世帯の増加や貧困の高齢者の問題など、高齢者の経済状況は多様化しています。画一的な所得段階の設定では、実情に即さないケースも出てきます。きめ細かな所得把握と、それに基づく段階設定の工夫が求められるでしょう。

年金天引きと普通徴収の選択肢

原則として、介護保険料は年金からの特別徴収(天引き)となります。対象となる年金は、老齢・退職・障害・遺族年金などです。これらの年金の支給額が年額18万円以上の場合は、年6回に分けて年金から直接差し引かれます。

年金天引きのメリットは、本人の手続き負担が少ないことです。年金の受給権者であれば、原則として自動的に介護保険料が徴収されるため、納め忘れの心配がありません。保険者である市町村にとっても、徴収事務の効率化や収納率の向上につながります。

ただし、年金受給額が年額18万円未満の場合や、老齢福祉年金受給者、国民年金の任意加入被保険者などについては、口座振替や納付書などによる普通徴収の方法となります。普通徴収の場合は、市町村から送付される納付書で個別に納めることになります。

特別徴収か普通徴収かは選択できませんが、一定の条件を満たせば申請により普通徴収に変更してもらえるケースもあるので、詳しくは市町村の担当窓口に相談してみるのがよいでしょう。

年金天引きについては、複数の年金を受給している場合の取り扱いなど、まだ改善の余地があると指摘されています。年金受給額が少ない高齢者にとっては、保険料の負担感も大きいものがあります。

介護保険料と公的年金のあり方については、今後も議論と制度改正が求められる課題と言えます。社会保障と税の一体改革など、広く社会保障制度全体の見直しの中で検討されるべき重要なテーマでしょう。

高齢夫婦世帯の介護保険料の目安と賢い備え方

夫婦2人分の介護保険料はいくらになるか

ここまで見てきたように、65歳以上の方の介護保険料は個人ごとに計算されますが、夫婦の場合は2人分の保険料がかかります。

仮に夫婦ともに65歳以上で、それぞれ全国平均の月額6014円の介護保険料を支払うとすると、2人分で月額12028円となります。これは年間で約14万円の負担。介護保険料は年金から差し引かれることが多いので、手取りの年金額は想像以上に少なくなるかもしれません。

さらに、介護保険料以外にも住民税や健康保険料、医療費の自己負担分など、老後の生活費はかさみがちです。仮に夫婦の年金収入が月20万円、生活費が15万円だとすると、介護保険料を含めた支出の総額は夫婦の手取り収入とほぼ同額になってしまいます。

高齢期の生活設計において、社会保険料の存在は無視できません。特に介護保険料については、サービスを利用しなければ支払う必要がないと考える人も少なくありませんが、介護保険制度は40歳以上の国民全員が加入する社会保険方式。いわば「介護のリスクへの備え」として、介護保険料の負担は避けられないのです。
老後資金を考える際は、こうした社会保険料についても十分考慮しておく必要がありそうです。「終身保険料」という考え方を持つことも大切でしょう。

介護保険制度を将来にわたって持続可能なものとするためには、現役世代と高齢者世代の負担のバランスをどう取るかが問われています。世代間の公平性の観点から、現役世代の保険料負担をいたずらに重くすることは望ましくありません。

かといって、高齢者に過度の負担を強いるのも現実的ではありません。社会保障の原則である「世代内の公平」の観点から、高齢者の負担能力に応じた制度設計が求められるわけです。

夫婦で介護保険料を払い続けることの負担感は小さくありませんが、「介護保険があるから安心」と言い切れる状況ではありません。介護保険を「あて」にしつつ、自分たちなりの備えを怠らないことが肝要と言えそうです。

介護費用は「巡り合わせ」ではない!計画的な準備を

介護保険制度があるからといって、介護にかかる費用のすべてが賄えるわけではないことにも注意が必要です。

介護保険料は、介護サービスを利用した際の費用の原資となりますが、実際にサービスを利用すると1~3割の自己負担が発生します。

特別養護老人ホームに入居した場合の費用は、平均的な事例で月額20~30万円程度(自己負担額は1~3割)。在宅サービスでも、1日当たりのデイサービス利用で1万円近い自己負担がかかるケースもあります。

介護にかかる自己負担額は、利用者の所得に応じて設定されますが、年金収入のみの高齢者世帯では、毎月の自己負担が家計を圧迫するケースは少なくありません。

「介護が必要になったら何とかなる」といった楽観的な考えは禁物です。「介護は巡り合わせ」などと言われますが、巡り合わせでは済まされません。

公的支援には限界があることを認識し、計画的に資金を準備しておくことが賢明だといえるでしょう。

介護サービスの質や量を確保しつつ、費用負担を抑えるためには、予防の視点が重要になってきます。日頃から健康管理に気を付け、要介護状態になることを防ぐこと。介護が必要となっても、できる限り軽度な状態に留め置くこと。そうした予防の取り組みは、社会保障費の節減にもつながります。

行政による介護予防事業の充実化や、ボランティアなどの地域資源の活用、高齢者の社会参加の促進など、地域ぐるみの取り組みが求められています。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる地域包括ケアシステムの構築。それこそが、私たち一人ひとりの老後の安心につながるはずです。

介護保険料を抑える制度の利用と資産形成のコツ

一定以上の所得がある高齢者にとっても、毎月1万円近い介護保険料は大きな負担です。しかし、所得の低く生活が困難な方は、申請により介護保険料の減免を受けられる場合があります。

注意したい点は、一時的な収入の減少などを理由とした減免申請は、なかなか認められないということです。

介護保険料の支払いが困難になった場合には、まずは市町村の窓口に相談することが大切です。分割納付や納付延長など、個別の事情に応じた柔軟な対応を求めることも可能でしょう。

一方で、老後の資産形成は現役時代からの計画的な取り組みが欠かせません。公的年金の支給開始年齢の引き上げなど、今後は私的年金の重要性がさらに高まると予想されます。

老後資金の貯蓄には、個人型確定拠出年金(イデコ)の活用も有効です。イデコは、加入者が自身で運用商品を選び、積立金を運用しながら資産を形成できる制度。掛け金は全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税が軽減されるメリットもあります。

また、介護に備えた保険商品に加入するのもひとつの選択肢。ただし保険料は安くないので、自身の収入や支出とよく照らし合わせて、加入の要否を判断する必要があります。

いずれの方法であれ、老後の生活設計に基づいて必要額を算出し、早めに備え始めることが何より重要。介護保険料も視野に入れながら、無理のないペースで着実に資産を積み上げていきたいものです。

人生100年時代を見据えた老後資金づくり。それは私たち一人ひとりに突きつけられた課題と言えるでしょう。公的保障の限界を認識し、自助努力の必要性を改めて考えさせられる問題提起と受け止めるべきかもしれません。

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