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【データで振り返る静岡県知事選】学者出身の川勝平太知事の後を担うのは中央官僚?それとも政治家?過去の静岡県知事選は3対3のイーブン

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「データで振り返る静岡県知事選」です。先生役は静岡新聞の市川雄一ニュースセンター専任部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年4月22日放送)

実質的に火蓋を切った静岡県知事選

(山田)今日は政治部出身の市川さんですから、やはり静岡県知事選の話題ですね。

(市川)そうですね。川勝平太知事の辞職に伴う静岡県知事選は5月9日告示ということで、法律的にはこの日から選挙戦が始まることになりますが、既に前哨戦は始まっています。ご存知の通り、これまでに元副知事の大村慎一さんと前浜松市長の鈴木康友さんが立候補を表明し、県内各地で街頭演説などを展開していて、実質的にはもう選挙戦が始まったという様相です。

(山田)もう活動してもいいんですか?

(市川)投票を呼びかけることはだめです。選挙期間中でないと選挙違反になってしまいます。ただ、自分の顔を売るというか、たすきを着けずに「私はこういう人です」と演説することは、選挙活動ではなく政治活動のジャンルに当たるため、一応セーフとされています。

(山田)そうなんですね。

(市川)リニア問題などで全国的に注目が集まっている今回の静岡県知事選ですが、今日は過去にはどんな選挙戦が展開され、どんな知事が誕生してきたのか、静岡県知事の歴史から未来を展望してみようと思います。

まず、出身から考えてみたいのですが、現在、名乗りを上げている大村さんは旧自治省(今の総務省)の中央官僚出身で、鈴木さんは衆院議員と浜松市長を務めた政治家出身です。戦後の静岡県知事は、川勝さんを含めて7人誕生しています。

(山田)僕は川勝さんと石川嘉延さんしか知らないですね。

(市川)そうですよね。皆さんもそれぐらいかもしれません。これまでの7人のうち、中央官僚出身が3人、政治家出身が3人と官僚と政治家が拮抗しています。

(山田)ほう。

(市川)残り1人が川勝さんで大学教授出身です。仮に今回大村さんと鈴木さんの一騎打ちになれば、今は官僚対政治家は3ー3のイーブンですから、どちらかが一歩リードすることになります。

(山田)興味深いデータですね。

静岡県知事選は5選も現職の落選もない

(市川)さらに、静岡県知事選の歴史を振り返ると、実は過去、現職が負けたことは一度もないんですね。これはなかなか珍しいことです。そして5選した人もいませんでした。

(山田)へぇー。

(市川)4選したのは、前の知事である石川嘉延さんと、1951年から4期務めた斎藤寿夫さん、そして現知事の川勝さんの3人です。もし、川勝さんが任期途中で辞職せず、来年予定されていた知事選に出馬していたら、静岡県知事の歴史が変わるところでした。

(山田)現職が、という点ですか。

(市川)当選すれば史上初の5選ですし、負ければ史上初の現職の落選でした。川勝さんがもしも来年の知事選に出ていれば、勝っても負けても静岡県の歴史で史上初がかかっていました。

「史上初」ということはなかなか起きないと言いますが、これが今回1年前に途絶えてしまったという部分は、やはり歴史の面白さなのかもしれません。

(山田)なるほど。

(市川)4選を果たした知事は過去3人いたという話をしましたが、4選を果たした知事の後の新人対決は過去2回あり、今回で3度目となります。

川勝知事誕生の2009年は「政権交代前夜」

(市川)近いところから振り返ると、石川さんが任期途中で退任して行われたのが2009年の知事選です。ここが静岡県政のターニングポイントと言われている選挙で、川勝知事が誕生しました。

何がターニングポイントなのかと言うと、戦後史上初めて自民党が支援した人以外が当選した静岡県知事選であり、民間出身者が当選したのも史上初でした。そういう意味で2009年はものすごい劇的な結果でした。

(山田)川勝さんは浜松市にある静岡文化芸術大の学長をやられてましたよね。

(市川)そこから出馬しました。元々は早稲田大の教授をやられていたりしていたんですが、この知事選には4人が立候補しました。学者出身の川勝さんと、自民党推薦の対抗馬として出たのが旧労働省(現・厚生労働省)出身で静岡県の副知事も経験し、参院議員だった坂本由紀子さん。それに静岡市議、県議、参議院議員など務めた海野徹さん、共産党公認の平野定義さん。

このとき、当時の民主党、国民新党などが川勝さんを推薦し、自民、公明が坂本さんを推薦する与野党対決でした。ただ、海野さんは当時、民主党の参院議員だったんです。野党系は川勝さん、海野さんで分裂選挙になり、さらには共産党も独自候補を出していますから、自民党が有利だと思われていました。

(山田)川勝さんと海野さんはお互い不利になりますもんね。

(市川)そうなんですよ。しかも、2009年までの戦後の静岡県知事選では自民党が支持した候補は負けたことがなかったので、下馬評では自民党推薦の坂本さんが勝つのではないかと言われていたんです。ところが、蓋を開けてみたら72万8706票対71万3654票という本当の僅差で川勝さんが勝ちました。

(山田)それで川勝知事が誕生したんですね。

(市川)当時の静岡新聞の検証連載には「自民、衝撃の敗戦」という見出しが踊っていました。知事選は2009年7月5日に投開票が行われましたが、実は自民党が民主党から政権を取る、いわゆる「政権交代選挙」となった衆院総選挙が行われたのが翌月の8月30日だったんです。つまり政権交代前夜とも言えるのが静岡県知事選で、民主党も政権交代をかけた前哨戦と位置づけていました。

(山田)そうなんですね。

(市川)もう一つの4選からの新人対決は、1967年の静岡県知事選です。僕の生まれる前の出来事ですから、直接は知りませんが、静岡新聞の過去記事によると、斎藤寿夫知事の5選の可能性もあったそうですが、県内選出の自民党の国会議員で候補者擁立の動きがあり、最終的に自民党県連会長で衆院議員の竹山祐太郎さんが出馬することになりました。このとき、自民の県議が分裂し、県職員だった方をかつぎましたが、竹山さんが圧勝しました。投票率は82.32%と今では考えられない高い数字でした。

4選の後の選挙結果は、民間出身1勝、政治家出身1勝ということです。こちらの歴史からは、傾向らしい傾向は見えませんでした。

(山田)でも、データを見ると面白いですね。何か見えてくるものもありますね。

対抗馬擁立の動きにも紆余曲折の歴史が…

(市川)次に川勝さんの4選の歴史を振り返ってみます。自民党は2009年から静岡県知事選で4連敗しています。川勝さんが再選を目指した2013年の知事選では、自民党はスポーツ畑出身の広瀬一郎さんを担いだんですが、このときは推薦をできずに「支持」という形でした。当時、自民党県連は党本部に推薦を上申していましたが、事前の調査で勝つ可能性が低いと判断した党本部が推薦を認めず、支持にとどめたという経緯がありました。

(山田)選挙ではそういう話はよくありますよね。

(市川)そうなんです。推薦より一段下の「支持」という形で戦い、川勝さんは後にも先にもない100万票を獲得するという大勝をしました。

次の2017年の知事選では自民党は候補者を出せませんでした。このとき、新聞紙上で候補者として名前が挙がっていたのが、当時民進党の衆院議員で今は自民党の細野豪志さん。

(山田)おー。県知事候補としてですか。

(市川)はい。それともう1人が今回もちょっと名前が出た衆院議員の渡辺周さん。ただ、細野さんと渡辺さんは共に「川勝さんが出馬しないのであれば」という条件付きでした。実は自民党も独自の候補者を立てられないので、細野さんが出るのであれば支援するというような動きを見せていたんです。しかし、川勝さんがその動きに反発して3選を目指すことになり、細野さんと渡辺さんの出馬の可能性が消滅しました。

(山田)川勝さんが相当強かったということですね。

(市川)当時はかなり人気がありましたからね。自民党としては細野さんの可能性がなくなったことで、党内に「擁立断念やむなし」のムードがある中、当時、自民党県連幹事長だった宮沢正美県議が「責任を取って出る」と名乗りを上げます。しかし、自民党内部から猛反発に遭って断念し、結局「自主投票」という形になりました。

当時、バルセロナ五輪柔道女子銀メダリストで静岡文化芸術大の教授だった溝口紀子さんが川勝さんの対抗馬として立候補を表明したので、自民党の静岡市静岡支部や浜松市の自民党などは溝口さんを支援したんですが、自民党県連としては自主投票だったんです。

(山田)溝口さんのときは川勝さんと同じ静岡文化芸術大の関係者ということで話題になりましたよね。

(市川)そうですね。そして、2021年の前回選。実はこのときに名前が取り沙汰されていたのが今回立候補を表明した鈴木康友さんです。しかも、自民党が擁立するという形で報じられていました。ただ、当時、鈴木さんは浜松市長で、浜松市の行政区再編をやり遂げなければならないという熱い思いがあるということで出馬を断念しました。

2021年は“リニア一点突破”

(市川)そこで、自民党の候補として挙がったのが当時自民党の参院議員だった岩井茂樹さんで、川勝さんと一騎打ちの対決になりました。このとき、川勝さんはリニア一点突破ともいうべき選挙戦を展開しました。

当時、川勝さんは街頭演説で岩井さんのことを「国策として進めるリニア推進議連の事務局長をしていた人が候補に出ている」と盛んに言っていました。いわゆるリニア推進の筆頭格だというようなことを主張していました。

ところが、これは不正確でした。静岡新聞は「ファクトチェック」というコーナーを設けて、街頭演説での発言内容を吟味することをしていたんですが、調べてみると岩井さんは推進議連の事務局長は務めていなくて、自民党本部内の組織「超電導リニア鉄道に関する特別委員会」という政策を議論する組織の事務局次長だったんです。政策実現を目指す議連とは性格が異なる組織でした。静岡新聞では不正確な発言だということも記事にしました。

結局、川勝さんは「大井川の水を守る川勝」と「リニア推進派の自民党」という構図に持ち込み、大勝したというのが前回の選挙でした。

(山田)歴史や過去のデータを見ると今回の選挙がどうなっていくかという関心が高まりますね。今日の勉強はこれでおしまい!

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