武蔵野市役所『さくらごはん』でこだわり食材堪能ランチ。郷土名物・武蔵野うどんのコシの強さは想像以上!
井の頭恩賜公園をはじめ豊かな自然が広がる武蔵野市。都心へのアクセスもよく、雑誌などの住みやすさランキングでもつねに上位に挙げられる人気のエリアだ。武蔵野市役所はJR三鷹駅からバスで8分ほどの場所にある。見晴らしのいい最上階でランチタイムにだけ営業する食堂の名物メニューは、本格的な武蔵野うどんだ。
広々とした店内から眺める最高の景色
武蔵野市役所へのアクセスは、JR三鷹駅からバスで8分ほど。三鷹駅に降り立ってグーグルマップを開くと、北口のロータリーから大通りに出てひたすら真っ直ぐだ。取材日はお天気もよかったので、歩いて向かってみた。
三鷹を訪れるのは初めての筆者。きょろきょろと街並みを眺めながらてくてく歩くと、ほどなくして武蔵野市役所へ到着。「もう着いた」ぐらいの感覚だったが、時計を見ると三鷹駅を出てから25分ほど経っていた。けっこう歩いたな。高低差を確認せずに歩き始めてしまったが、平坦な道のりでよかった。
正面玄関から市役所に入り、エレベーターで8階まで上がる。エレベーターを降りて右へ進むと、右側に食堂『さくらごはん』の入り口が現れる。
『さくらごはん』を運営するのは、障害者総合センターなどを運営する「社会福祉法人 武蔵野」。店では障害を持った方もスタッフとして働いている。シェフで店長の小川託矢さんにお話をうかがった。
「障害を持った方に活躍の場を広げてもらえるように、できそうな仕事にはどんどんチャレンジしてもらっています。それぞれの得意分野を生かして、自分の役割をきっちりとこなしてくれてますよ」
店内は2面が大きな窓になっており、とっても明るく眺めが素晴らしい。座席数は60席ほどで、テーブル間にかなりの余裕があるので、トレーを持ってすれ違うのもスムーズだ。ベビーカーも入れるしキッズチェアの用意、さらにはキッズメニューもある。お子さん連れには穴場かも。
注文は対面式でお会計は前払い。役所の食堂で券売機を設置していないのは珍しい。
名物の武蔵野うどんは肉汁うどん800円と鴨汁うどん900円の2種類。麺類はほかに牛筋中華つけ麺900円がある。カレー、丼、定食は日替わりメニューだ。
いつもメニュー選びに時間がかかる優柔不断な筆者だが、この日は武蔵野うどんを食べると決めて来た。さて、肉汁と鴨汁、どっちにしよう……。
よし、肉汁に決めた! そしてメニューに「豚チャーハン付プラス280円」と書かれているのを発見。豚チャーハン付きでお願いします!
かめばかむほど味わい深い、名物・武蔵野うどん
支払いを済ませ、注文メニュー名が書かれたプレートを受け取る。料理ができたら呼び出してくれるそう。
席に座ってぼんやり外の景色を眺めていると、「うどん1、ミニチャーハン付きでお待ちのお客さまー、受取カウンターまでお越しくださーい」とマイクを通してやさしい声が響く。
筆者にとって初の武蔵野うどん。では、さっそくいただきます!
冷水でしめたちょっと太めでコシの強い麺を温かいつけ汁で食べるのが武蔵野うどんのスタイル。太くてしっかりとした麺を、がしっと箸でつかんでつけ汁へ。
うどんを口にした瞬間、いつも食べているうどんに比べ「かたい」と感じるのだが、かんでいるうちにムチムチとした食感に。小麦の風味がしっかりと感じられて、かめばかむほど口の中に小麦の甘みがじんわり広がってくる。これはクセになる味わいだ。
つけ汁は『さくらごはん』のオープン時に老舗そば屋さんにアドバイスをもらって完成させたというかつお醤油味で、具は豚の肩ロース肉。使われているのは山形県酒田市産の庄内豚だ。「コンベクションオーブンを使って調理することで、焦げ目もついてジューシーに仕上がっています」と、小川さんが教えてくれた。
もう一品は豚チャーハン。麺類を注文した場合にしか頼めない特別メニューだ。
ゴマ油の豊かな風味とコクが感じられる本格中華の味わい。それもそのはず、小川さんはもともと中華の料理人なのだそう。なるほど、中華料理店で培った経験が今も調理のベースになっているのですね。すごくおいしくてパクパクとあっという間に完食。
うどんとチャーハンでおなかもいっぱい。大満足のランチでした。ごちそうさまでした!
友好都市の食材を使ったメニューにも注目
武蔵野うどんは古くから東京の多摩地区と埼玉の西部地域で食べられてきた。この辺り、いわゆる武蔵野台地は水はけが悪く、稲作に向かない土地であり、古来、小麦の生産が盛んだったことから、この地域の農家では冠婚葬祭にうどんを振る舞う風習があったという。
店頭のオレンジののぼり旗にある“武蔵野地粉うどん”とは、武蔵野台地で収穫された小麦100%で作られているうどんのこと。武蔵野市産の小麦粉が2%、残りの98%は埼玉県産だ。「2025年現在、武蔵野市内には小麦農家が1軒しかありません。とても貴重な小麦粉です」と小川さん。2026年以降は武蔵野市産の小麦粉は使えなくなるといわれているが、「武蔵野台地で収穫された小麦100%は継続していきたい」と小川さんは話す。
うどん以外のメニューは日替わりで、カレー、丼、定食が用意されている。この日は和風カレー、サバ竜田丼、庄内豚しょうが焼き定食。カレーは和風、キーマ、レッドシュリンプの3種類が基本で、日によってはすべて武蔵野産の野菜を使ったスープカレーが登場することもあるそう(季節限定)。
日替わりメニューには、岩手県遠野市の豚肉や長野県安曇野市の信州サーモン、千葉県南房総市の干物など、武蔵野市の友好都市の食材を使った料理も登場する。武蔵野肉汁うどんにも使われている庄内豚の産地である山形県酒田市も友好都市の1つ。
「せっかく友好都市食材なども使っているので個性的なメニューの方がおもしろいかなと思っていて。ひとひねりしたものを出すというのを意識しています」と、小川さん。新しいことを開拓するのが好きで、豊洲市場にこんな食材入ったとか、安い値段で入手できそうだとか、つねにアンテナを張っているという。
「『さくらごはん』には何年も勤めているスタッフがたくさんいて、お客さま目線も持ちつつ店のカラーをよくわかってくれているので、スタッフたちの意見もどんどん取り入れながら新しい展開をしていくことを考えています。スタッフが私の気づかない部分を埋めてくれるんですよね」
実は武蔵野うどんを食べる前に、厨房でキーマカレーの仕込みを見せていただいた。素材の持つ水分のみを使って調理する無水カレーだ。「市の食堂にしては本格的な感じにしちゃっているので、辛いのが苦手な方には向かないかもしれません」と小川さんは笑う。
刻まれた野菜で大きな寸胴がいっぱいになるところまで見させてもらったが、あの後どんな感じで仕上がるのだろう。次に訪れるときはキーマカレーを注文することに決めた!
さくらごはん
住所:東京都武蔵野市緑町2-2-28 武蔵野市役所南棟8F/営業時間:11:00~13:30LO/定休日:土・日・祝/アクセス:JR中央線三鷹駅からバス8分の「武蔵野市役所」バス停下車、徒歩すぐ
取材・文・撮影=マルヤマミキ
マルヤマミキ
編集・ライター
横浜生まれ、横浜育ち。バンド活動をしたり古文書を読んだりして学生時代を過ごす。好きなことは食べることと飲むこと、うるさい系の音楽を聴くこと、野球観戦、歴史散策。好きな飲み物は日本酒とビールとホッピー(マイ黄金比はホッピー1本でナカ6杯)。