“怒りすぎた…”と後悔するママパパ必見! 子育てのイライラを手放す「6つの即効テクニック」
子育てのイライラ・怒りに悩むママパパ必見。アンガーマネジメントとは何か、専門家が基本から解説。イラッとしたときにすぐ使える6つのテクニック、怒りが生まれる心理的原因、心を整えるセルフケア法まで紹介。
【▶︎画像】矢部太郎「人気漫画家」の才能を育んだ“父のほめ方”とは「また怒鳴ってしまった……」と育児中に自己嫌悪に陥ってしまう。そんな経験はないでしょうか。「私自身、超がつくほどの短気で、子どもによく怒っていました」と話すのは、元保育士で日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントコンサルタント®の野村恵里先生です。
かつては怒ってばかりで「負のループ」にはまっていたという野村先生に、ご自身の経験に基づいた、子育てのイライラと上手に付き合う方法や、感情をコントロールするテクニックについて教えていただきます。
子育てに役立つアンガーマネジメント
「私はもともと、超がつくほどの短気で、子どもによく怒っていました。また、保育士をしていたこともあり、だからこそ『この月齢なら、これくらいのことはできるはずなのに、なんでできないの!』と、つい思ってしまって……。
怒ってばかりの私に対し、長男は次第に私の顔色をうかがうようになり、次男はかんしゃくを起こすように。そして私はますますイライラしてしまう──そんな“負のループ”にはまっていました。
そんなとき、友人にすすめられて出合ったのがアンガーマネジメントでした。衝撃だったのが、『人を傷つけない・自分を傷つけない・物を壊さない』という3つのルールを守れば、怒ってもいいということ。怒りっぽい自分を否定されたわけではないと感じ、心が少し軽くなりました」(野村先生)
アンガーマネジメントは、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。自分の気持ちや要望を相手に伝えるとき、“怒り”という強い感情を乗せてしまうと、反発や摩擦を生んでしまうことがあります。
子どもを上手に𠮟るために大事なのは、まず親自身が怒りの感情をコントロールすることだと野村先生は話します。
「アンガーマネジメントには、いくつかのテクニックがありますが、その中でも実践しやすいものを紹介しましょう」(野村先生)
イラッとしたらすぐ実践! 6つの簡単テクニック
呼吸リラクゼーションはその場ですぐにできるので、初心者でも実践しやすいテクニックです。 写真:siro46/イメージマート
「育児の場面でもすぐにできるイライラが落ち着くテクニックを、6つ紹介します。
〈呼吸リラクゼーション〉
呼吸リラクゼーションは、気持ちを落ち着かせるのに有効な呼吸法です。イラッとしたら、ゆっくり鼻から息を吸い、少しだけ息を止めます。そして、頭の中の考えやイライラを一緒に出すイメージで『ふぅー』と口から息を吐き切りましょう。これを2~3回繰り返します。
〈タイムアウト〉
タイムアウトは、怒りが爆発する前にその場を離れて気持ちをリセットするテクニックです。イライラが高まったと感じたら、『ちょっとトイレに行ってくるから、5分待っててね』など、行き先と戻る時間を伝えて、いったん気持ちと距離をとりましょう。
〈コーピングマントラ〉
コーピングマントラは、自分の心を落ち着かせるための呪文の言葉を唱えるテクニックです。『大丈夫、大丈夫』『この子も成長中』などのほか、好きな『推し』の名前でもOKです。
〈ストップシンキング〉
ストップシンキングは、イライラした心や頭をいったんストップさせるテクニック。まず、『ストップ!』と心の中で唱え、思考をいったん真っ白にします。そのあとは、怒りがスッと抜けていくイメージを描いてみましょう。
〈スケールテクニック〉
『怒っている』『怒っていない』といった二択ではなく、怒りのレベルを1~10の数字で見える化し、自分の感情を客観的に捉える方法です。以前にも同じ出来事が起きたのに、前に比べて数値が上がった場合は、『今は疲れているのかも』と気づけて、自分をいたわるきっかけになります。一方、数値が下がった場合は、『前より穏やかに関われるようになったかも』と自分の成長を感じられるようになります。
〈グラウンディング〉
グラウンディングは、『今、この瞬間』に意識を向けて心を落ち着けるテクニックです。子育ての場面では、私はあえて子どもに意識を向けます。子どもの表情や動きを観察し、どう感じているかを想像することで、かける言葉も変わっていくでしょう。
アンガーマネジメントのテクニックは、人によって合う・合わないがあります。大切なのは、自分に合った方法を見つけて、無理なく続けていくことです」(野村先生)
育児で怒りが生まれる原因
もう怒りたくないと思っていても、つい我が子を怒ってしまう……。そんな経験は、多くのママパパにあるはずです。そもそもなぜ怒りの感情が生まれてしまうのでしょうか。
「根本のところには、親御さんが子どもを大切に思う気持ちや、『こうなってほしい』という期待があるからだと思います。
子育てをしていると、『それをやるとケガしちゃうな』などと、先のことを思ってつい口を出してしまうこともあります。それは、親御さんのほうが長く生きていて、子どもの先を見通せるからこそ起こることなんです。
結局のところ、子どものことを思うからこそ怒ってしまうんですよね。だからこそ、“怒りっぽい自分”を否定せず、受け入れてあげてほしいと思います」(野村先生)
専門家がすすめる3つのセルフケア
根本的な心理的要因のほかにも、そのときの親御さん自身の心身の状態によって、イライラしやすくなることもあると野村先生は続けます。
「『寝不足でつらい』など、ネガティブな感情が溜まっているときもイライラしやすくなります。そのために、行ってほしいセルフケアが3つあります」(野村先生)
1.自分の感情を受け入れる
まずは、自分を責めず『つらいよね』と自分の感情を受け入れることです。自分の中に溜まった感情を言語化し、認めることで、心が少し軽くなります。
2.ネガティブな気持ちをこまめにデトックスする
5分あるならストレッチ、30分あるなら読書など、子育ての合間にできた短い時間で、気持ちをリフレッシュできる自分に合った方法をいくつか持っておくのがおすすめです。
3.『べき』にこだわらない
べき思考とは、『上の子はしっかりする“べき”』など、その人の欲求や願望、理想を総称する言葉です。『べき』は誰もが持っている価値観で、正解はありません。しかし、自分自身を苦しくしてしまうのであれば、『べき』の基準を少し緩めたり、手放してみてください。
感情のコントロールができたら、次に行うのが子どもに「親の気持ちを伝えること」。しかし、その伝え方を間違えてしまうと、さらに子どもは反発して、親はイライラが募ってしまうことがあります。
次回は、アンガーマネジメントを活かした具体的な𠮟り方や子どもに伝わる声かけのポイントについて解説します。
取材・文/阿部雅美
参考書籍:
『とっさの怒りに負けない!子育て』野村恵里(著)/すばる舎
『イライラを爆発させない!パパ・ママが楽になる子どもの𠮟り方:子育てにいかすアンガーマネジメント』野村恵里(著)/中央法規出版
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◆野村 恵里(のむら えり)
日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントコンサルタント®。保育講座専門会社「感情保育学研修所」代表。
20年間、岡山市の公立保育園で保育士として勤務。子どもの心に寄り添う保育を実践してきた経験をもとに、2014年4月「カラフルコミュニケーションズ」を設立し、講師活動をスタート。2025年に「感情保育学研修所」を立ち上げ、「ココロ力を育む気持ちコミュニケーションで保育改革」を理念に掲げ、保育・教育・子育ての現場で役立つ“感情保育学”を全国各地で伝えている。