海の世界を丸ごと体感!『神戸セラボ探検日誌』Vol.3――明石侑成と細見奏仁が今話題の神戸須磨シーワールドへ
神戸で活躍中の演劇ユニット・神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)が神戸のまちをナビゲートする連載『神戸セラボ探検日誌』。第3弾は、10月3日(木)から神戸三宮シアター・エートーで上演するBoys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』【note.2~3】にちなみ、グループ最年長の明石侑成と、音楽的才能を発揮し「若きマエストロ」の異名をほしいままにする元気印の細見奏仁が、神戸須磨シーワールドをご紹介! 2024年6月1日に、JR「須磨海浜公園」駅から徒歩約5分のところにグランドオープン、瞬く間に話題のスポットとなった神戸須磨シーワールドの魅力をレポートする。また、9月に上演された同公演【note.1】の経験が二人に何をもたらしたのか、二人の最新の心情をお届けする。
海の生きものから芝居のヒントが見つかった!?
見るだけでなく、生きものにふれることで命の温もりを感じたり、バックヤードツアーに参加して水族館の裏側も学ぶことができる神戸須磨シーワールド。まずは、ゲートを入ってすぐのところで来館者を出迎えるオルカ(シャチ)のモニュメントの前で記念撮影を。二人とも水族館に行くのは小学生ぶりとのこと。遠足気分で楽しもう!
まずは「タッチングプール」へ。ここではアカエイやネコザメに直にタッチし、その感触を確かめる。活発なアカエイを見て、「この動きに意味はあるんですか?」などスタッフに積極的に質問する明石。細見もテンジクザメとネコザメの触り心地の違いを比較。「サメ肌」とは聞いたことがあるものの、二人はざらざらとした実際の感触に驚きつつも楽しんでいた。
「水の一生」をテーマに瀬戸内海の原風景を再現した展示や、生きものたちの多様で豊かな行動を観察できる「アクアライブ」のエリアで二人のテンションが特に上がったのが、サンゴ環礁の生きものがいる自然環境を再現した「トロピカルライフ」だ。魚たちを見ながら「あのアニメのキャラクターだ!」「キレイ~」と楽しそうに話す二人。ハナミノカサゴに毒があると知った細見は「魚同士でも毒は効くんですか?」とスタッフに質問。Boys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』の劇中に海賊船が出てくることから、毒の対処法も聞いた細見は「今後、海賊船に乗る時に役に立ちそうです!」と豆知識もゲットだ。
イルカのスピーディーなパフォーマンスと、トレーナーとの信頼関係が楽しめる「ドルフィンスタディアム」を見学。イルカと共に水中を自由に泳ぐトレーナーの姿に明石は「マーメイドみたいでした!」と声を弾ませる。細見も「イルカの立ち姿もすごくキレイでした!」と驚きを隠せない様子。興奮冷めやらないまま、「オルカスタディアム」に移動。ここは西日本で唯一、オルカのダイナミックなパフォーマンスを観ることができる。親子のオルカがその大きな体で起こす波しぶきや躍動感あるジャンプは迫力満点。二人も思わず歓声を上げる。
これらのパフォーマンスの感想を尋ねると、「ステージでパフォーマンスをやらせてもらっている身としては、オルカとイルカに学ぶこともむちゃくちゃ多かったです。オルカもイルカもすごく楽しそうにパフォーマンスをしていて、必死な姿も魅力的だと思いますが、演じる側が楽しんでいる姿を見ることはこんなにも素敵なんだなと思いました」と明石、目を輝かせる。細見も「しっかりパフォーマンスとして成り立っているのもすごいなと思いました」とイルカとオルカの高い知能にも感銘を受けたようだ。
「バックヤードツアー」(事前に要予約)にも参加した。こちらは普段は見ることのできない予備水槽や外洋水槽の裏側、動物や魚の餌を保管する大きな冷凍庫など、水族館の裏側をキャストが解説しながら案内してくれるというもので、二人とも熱心に耳を傾けていた。「教科書で水族館のバックヤードの風景は見たことがあるのですが、生で見たのは初めてでした。クラゲの赤ちゃんを飼育していることとか初めて知ることがたくさんあって、興味深かったです」と細見。明石も「魚のえさをどのように準備しているのかとか、そういうこともわかって面白かったです」と話した。
オルカを眺めながらブッフェメニューを実食!
最後はお待ちかね、横幅21m×高さ2.7mのアクリル越しにオルカを眺めながら食事が楽しめるレストラン「ブルーオーシャン オルカスタディアム」でブッフェメニューの試食タイム! 「オルカスタディアム」で大迫力のパフォーマンスを見せた親子のオルカが目の前を悠々と泳ぐ姿に大興奮! 兵庫県産の食材をふんだんに使用したブッフェメニューの実食では、「おいしい!」と二人、思わず笑みがこぼれた。
それでは食レポをお願いします! 細見「いろんなメニューがあって、玉手箱みたいでした! 僕らは10代なので、侑成くんと一番盛り上がったのはお肉でした(笑)。あと、ハリセンボンのまんじゅうが見た目もかわいいし、カスタードクリームも入っていておいしかったです!」。明石「普段はなかなか手に取らないような食材を初めて食べたのですが、全部おいしかったです!」。二人はぺろりと完食。ごちそうさまでした。
「今度は神戸セーラーボーイズのみんなで行きたい」と二人。神戸セラボの制服ともベストマッチな神戸須磨シーワールドを隅々まで体感した。
初めてづくしの公演で神戸セラボはさらに成長!
海賊に憧れる少年と夢を諦めた青年を中心とした会話劇で展開するBoys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』。海賊がモチーフと聞いた当初、二人はどんな印象を持ったのだろうか。「悪者みたいな、ちょっと野蛮な感じなのかなと思っていた」と話すのは明石。だが、作品を深めていくうちに印象は変わってきたと続ける。「ほさかようさんのこの脚本でお芝居をしてみたら、意外とキラキラした印象の作品になっているのかなと思います」。細見は「夢に向かって進むお話なので、確かにキラキラしたイメージもありますね。でも海賊らしいしぐさや動き方をしていると、男らしくワイルドな印象にもなりました」と話し、それぞれ個性をのぞかせた。
そして、神戸セラボにとって初めてづくしの公演でもある。まず、初めて約800席キャパのAiiA 2.5 Theater Kobeを飛び出して、小劇場の神戸三宮シアター・エートーで上演する。「シアター・エートーは客席との距離がすごく近いので、お芝居ではいい緊張感があって、見られているという意識が高まっています。ライブパートではお客様の表情が見えるので、よりお客様との一体感が楽しめます」と明石。細見は客席との距離感を「僕たちが神戸須磨シーワールドの水槽を見ている時と同じ」と表現した。そんなに近いのか!? 「神戸須磨シーワールドでタコを見ていた時と同じぐらいの距離だと思います(笑)。近いからこその臨場感がすごくいいです!」と、まさに至近距離でのステージアクトが楽しめると続けた。二人とも「ライブでは客席をガッツリ見てます!」とのこと。「自分のカラーのペンライトを振ってくれたら、そっちの方ちゃんと見るのでぜひです!」と声を揃え、ファンサも万全とアピールした。
初めてのストレート会話劇でもある。二人は「難しい!」と言う。だが、「(脚本・演出の)ほさかようさんにお芝居のことを1から教えてもらって、ちょっとずつ(芝居で)会話ができるようになりました」と手ごたえを感じている明石。細見も「今回は劇中で歌がなくセリフのみだし、マイクを使わない分、どういうふうに声を届けるかとか、拠点としているAiiA 2.5 Theater Kobeでの広さとは違って細かな表現をすることにいつもより気を配っていて、すごくいい経験になっていると思います」と充足感を湛えた表情で話した。
全公演5人、最大でも6人のステージとなる。普段は10人で活動している神戸セラボ。少数精鋭での舞台の感想を聞いた。明石はこう話す。「最初は10人で出ている時と同じ熱量を届けられるのかなという不安があったのですが、小劇場ということもあって、公演が始まってからは、この熱量をいつも以上に届けられるんだということが分かりました」。細見も「(少数でも)違和感はない」と言い、さらには新たな楽しみもできたという。「いつもは10人と偶数なのでセンターがないのですが 、今回は5人なので、初めてセンターができました! これまでは誰か一人が真ん中に立つことがなかったので、センターがあるという違いは大きいです!」。二人ともセンターに立つとテンション爆上りとのこと、その際の表情も客席からしっかり確認できるだろう。
一方、メンバーの存在感も改めて感じたと振り返る。「少人数で公演して、普段、どれだけみんなに助けられていたかと実感しました。MCも、芝居も、「この人がおらんだけで、こんなふうに違うんや」と思いました」と細見。明石も「10人でいるときの安心感はやっぱりありますね」と、神戸セラボの間で信頼感や結束力が醸成されていることをうかがわせた。
本番を迎えるまではスランプもあった。細見が次のように語る。「全てが初めてのことだったので、一度だけですけど、稽古中にみんなの精神力が弱くなってきて、わ~! ってなったんです。だから、ちゃんと話し合おうと言って、みんなで作品について語り合いました。そのできごとによっていつもより2、3歩先に成長できたような気がします」。明石も「芝居の解釈やお芝居の仕方など、みんなで話し合えたことですごく成長できたかなと思います」と打ち明けた。
楽屋見舞いの上田堪大がかっこよすぎた件
様々な困難を乗り越え、【note.1】は幕を開けた。すると、2024年8月に上演した定期公演vol.2 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』にリキ役で出演した彼らの「アニキ分」上田堪大が劇場に顔を見せたという。「『銀牙 -流れ星 銀-』の千穐楽から約1ヶ月、経っていたのですが、「成長スピードが速い」と言ってくださって、めちゃくちゃ嬉しかったです」と話す明石。
上田の言葉は「本当に嬉しかった」と念を押しつつ、何よりもインパクト大だったのは、神戸セラボの楽屋を訪れた上田の行動だったと明石が続ける。「僕たちが楽屋で歌を歌っていたんですよ そしたら、遠くの方からすっごいキレイな歌声がどんどん近づいて来て、誰!? 誰!? 誰!? ってみんなで言いながらパっと廊下を見たら、堪大さんがいました(笑)」。
この時、不在だった細見は「いいな~。めっちゃかっこええし~」と羨望の眼差しを向ける。「でも、その前に堪大さんとお会いできて、「(Boys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』を)めちゃくちゃ楽しみにしてる」と言ってくださったので、幸せ~♡ってなりました(笑)」。
明石侑成と細見奏仁、実は〇〇な関係!?
Boys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』では石原月斗と共に全公演に出演する明石だが、2023年11月に『ロミオとジュリアス』の2本立てで上演した定期公演vol.1『Water me! ~我らが水を求めて~』では初めて座長を経験した。「『Water me!』は僕にとってのターニングポイント。この作品も5人でのお芝居だったのですが、演出の古谷大和さんに芝居の空気感の作り方や掛け合いの仕方など、いろいろ教えていただきました。今回もその経験が生かされていると思います」。
細見は、定期公演vol.2 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』で披露した神戸セラボの新曲「MAGIC MUSIC」を手掛けたことが大きな一歩となったと話す。「「MAGIC MUSIC」は、作曲を僕が、メンバーの皆から集めた言葉を使った作詞を(中川)月碧くんと僕でやって、振付も月碧くんが手がけるという、神戸セーラーボーイズの力が存分に発揮された曲を作ることができました。それは僕にとって神戸セーラーボーイズとしての夢だったのですごく嬉しかったし、作詞ができたからこそ作曲に対する考え方に深みが出たと思います」。
ちなみに、細見は神戸セラボ一人一人の楽曲を手掛ける夢があるという。「このメンバーがこういう曲を歌ったら合うだろうなとか、こんな歌を歌っている姿を見てみたいなと思うので、ぜひやりたいです。いつもとは違うジャンルの曲を歌う練習をしたら、めちゃめちゃ成長できるんですよ。その成長も込みで、いろんな曲を歌っていきたいし、作りたいです」。
最後に、今回、神戸須磨シーワールドを探検した明石×細見コンビの関係性を聞いた。「マジのネタ枠(笑)」と笑う細見。「かなてぃ(細見のニックネーム)がいたら安心する」という明石は、一方では「僕の弟子」とも。これには細見も「弟子!?」とビックリ! 「僕は何を習ったらいいんや……」と戸惑いを見せると、「そうですね、舞台人としての心構えとか」と明石が急に先輩風を吹かせた。そんな姿に「侑成君は最年長の愛されキャラです!(笑)」と細見、二人はなんでも言い合える良好な関係性を短い掛け合いの中でにじませた。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=福家信哉