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倉敷屏風プロジェクト 〜 倉敷芸術科学大学の学生が、屏風本体を一から作る日本画の作品制作

倉敷とことこ

倉敷屏風プロジェクト 〜 倉敷芸術科学大学の学生が、屏風本体を一から作る日本画の作品制作

2002年に地元の人の尽力によって復活した「倉敷屏風祭」。
阿智神社の秋季例大祭に合わせて開催され、町家を一般のかたに開放し、室内には屏風が飾られます。

そのなかに実は、倉敷芸術科学大学 芸術学部 日本画ゼミの学生が制作した屏風があります。しかも、その屏風は絵だけでなく、屏風本体も自分たちで一から制作しているのです。

2018年から続き、2025年で6回目を迎える「倉敷屏風プロジェクト」を紹介します。

倉敷屏風プロジェクトとは

2018年の屏風祭で展示された《愛する街》

「倉敷屏風プロジェクト」は、倉敷芸術科学大学 芸術学部 日本画ゼミの学生が、倉敷屏風祭にオリジナル屏風を制作して参加する取り組みです。

倉敷芸術科学大学 芸術学部と倉敷未来プロジェクトが共同し、岡山県表具内装協会の協力を得て、2018年(平成30年)から始まりました。

屏風制作を通じて日本の伝統・具体的形にふれる

ことを目的に、新作の屏風を制作し出品することで伝統と現代をつなぐとともに、作を通じて伝統への理解を深め、活動の継続についても考えています。

2025年で6回目の出展となり、年間を通した屏風制作をおこない、先輩から後輩へノウハウが受け継がれるなど、継続できる仕組みも整ってきているそうです。

出展履歴・1回目:2018年
・2回目:2019年
・新型コロナウイルス感染症のため中止:2020年・2021年
・3回目:2022年
・4回目:2023年
・5回目:2024年
・6回目:2025年

倉敷芸術科学大学における屏風制作の流れ

屏風材料(画像提供:倉敷芸術科学大学)

2018年の開始からしばらくの間、岡山県表具内装協会の表具師のかたがたから指導を受けながら屏風を制作していました。

その後、2023年3月に「倉敷芸術科学大学屏風制作マニュアル」を作成し、現在では学校関係者のみで屏風を制作できるようになっています。

制作の流れは以下のとおりです。

制作方法はあくまでも一例です

骨締め
木枠に大きな紙を1枚貼ってあるパネルの上から、小さな和紙を貼り重ねていきます
蓑(みの)押さえ
さらに上から和紙を重ねていきます
ノコ入れ
蝶番(ちょうつがい)を作るための印をノコギリで入れていきます
蝶番作り
蝶番(つなぎ目)を作り、扇と扇をつないでいきます
受け貼り
さらに上から小さな和紙を貼り重ねていきます。
本紙受け貼り
本紙(絵を描く紙)の補強のため、裏から和紙を重ねます
絵を描く
本紙を貼った屏風に絵を描いていきます
別に描いておいた絵を屏風に貼り込む場合もあります
裏地貼り
絵が完成したら、屏風の裏に布を貼っていきます
尾背(おぜ
側面の部分(つなぎ目)にきれいな紙を貼っていきます
縁打ち
最後に屏風の周囲に木の縁を作ります
隠し釘という釘が見えない技法で作っています

週1回3コマ(5時間)の授業で、約3か月かけて制作しているそうです。

そして、屏風祭の期間中、学生は自分の作品の前で屏風について解説します。また、自分の作品を他の人に説明することで、作品がどのように受け取られるかを学ぶ良い機会にもなっています。

2025年の屏風祭で屏風制作にチャレンジする3名

2025年10月18日・19日に開催される屏風祭では、芸術学部 日本画ゼミ3年生の3名が屏風制作を進めています。

・藤原桜さん《澄むまなざし》
・角田沙雪さん《幻想へようこそ》
・平塚壮さん《二つ巴》

指導するのは芸術学部芸術学科 助教の原田よもぎさんです。

2018年の「倉敷屏風プロジェクト」開始時に大学院生だった原田さんは、現在教員として学生を指導しながら、日本画家として屏風祭で自身の作品も展示予定です。

作品制作中の学生3名と指導する原田先生にインタビュー

左から原田よもぎさん、角田沙雪さん、藤原桜さん、平塚壮さん

2025年10月18日・19日の屏風祭に向けて、作品を制作する芸術学部 日本画ゼミ3年生の藤原桜(ふじわら さくら)さん・角田沙雪(すみだ さゆき)さん・平塚壮(ひらつか そう)さん、指導する助教の原田よもぎさんにインタビューしました。

──屏風祭向けの作品として、統一テーマのようなものはあるのでしょうか。

原田(敬称略)──

学生には「倉敷をテーマにしましょう」と伝えています。

これは、制作した屏風を屏風祭に出品することを目指しているためです。このため、作品のどこかに「倉敷要素」を入れることになっていますが、それ以外は自由に制作してOKとしています。

作品を鑑賞する際に、「どこにどういう倉敷が入っているんだろう」と思いながら見てもらえると楽しいかもしれないです。

──では改めて、現在制作している作品のテーマを教えてください

藤原(敬称略)──

私は、倉敷の市鳥である「カワセミ」と、市木の「クスノキ」を組み合わせて描いています。

倉敷がテーマだったため、実際にはカワセミとクスノキが一つの場所で一緒に見られることは少ないのですが、理想としては一緒に見られたらいいなという想いを込めて、クスノキに止まっているカワセミを描こうと思っています。

角田(敬称略)──

私は、倉敷をテーマにすることになったとき、「倉敷美観地区の風景」を描くことにしました。

はじめて倉敷美観地区を訪れたときに、風景がとても幻想的なように感じたので、そのときの気持ちを表現したいと思ったんです。

なので、倉敷美観地区を幻想的に描いています。

平塚(敬称略)──

僕が今回描いているのは、倉敷美観地区の古いものと新しいものの関係性です。

対立するとまではいきませんが、古いものを教わりながら、新しいものも発展していく、そのような新しい倉敷の姿を絵に表現できればと思っています。

──古いものと新しいものをどのように表現しているのでしょうか?

平塚──

「龍」を古いもの、「鶏」を新しいものとして表現しています。

龍は長寿のイメージがあるので古いほうを表し、鶏は成長した若い鶏で、良いライバル関係を表現したいと考えています。これらを歌舞伎の「見得(みえ)」のように、にらみ合うようすとし、そこに光が差すイメージで倉敷美観地区を表現できればと思っています。

──学生を指導する上で、意識していることはありますか

原田──

あくまでも授業なので、「屏風を一から作る」という体験を重視しています。
それが他の大学ではできない貴重な体験であると考えているためです。

授業が始まった当初は、岡山県表具師協会の職人のかたがたが大学に来て、「屏風とはこういうものだ」という作り方を指導してくれていました。

最初の数年で技術が受け継がれたため、今ではおもに先輩から後輩へとその技術が教え継がれており、この伝統が続くように指導がおこなわれています。

現在は8年目になり、日本画ゼミの3年生の授業に組み込まれた「特色の一つ」となりました。

──作品の見どころ、注目ポイントを教えてください

藤原──

「カワセミをぜひ見てほしいです。
題名に「まなざし」という言葉が入っているので、カワセミの目線や、どこを見ているかという点にも注目してほしいです。

角田──

奥行きのある構図で描いているので、その雰囲気を感じていただきたいです。
あと、風景画のなかにを少し入れています。

倉敷美観地区にいる猫が目立つような感じにしたいと思っています。

平塚──

龍と鶏の表情に注目してほしいです。
にらみ合っているけれど、敵対まではしていないくらいの表情を目指して書きたいと思っています。

──最後に読者にメッセージをお願いします

藤原──

屏風は普段あまり馴染みがないと思うので、屏風祭を通して、少しでも身近に感じてもらえたらうれしいです。

おわりに

倉敷芸術科学大学の学生が屏風祭で、毎年作品を披露していることは知っていたのですが、「屏風そのもの」を一から作っていることは知りませんでした。

取材時はちょうど屏風作りをしていたときで、絵を描くのではなく、どちらかといえば力仕事を3人で協力して進めていました。

屏風祭の当日、藤原さん・角田さんの作品は「上島提灯」平塚さんの作品は「ジャズ喫茶アヴェニュウ」で展示予定です。

会場の上島提灯(画像提供:倉敷芸術科学大学)
会場のジャズ喫茶アヴェニュウ(画像提供:倉敷芸術科学大学)

屏風祭当日には、学生たちが自分の作品について解説もおこなう予定なので、ぜひ足を運んでみてください。

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