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吉祥寺・井の頭公園のほとりにある『喫茶余白』。琥珀糖ソーダ水とぷるぷる生わらび餅を静かに味わうカフェタイム

さんたつ

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吉祥寺のシンボル・井の頭恩賜公園のたもとにたたずむ古い一軒家。その2階に『喫茶余白』がある。静かな時間を提供したいという主人の思いから、店内では極力私語はしない“きまり”だ。カラフルで素朴な甘さがクセになる琥珀糖ソーダや手作りの生わらび餅をいただきながら、まるで図書館のような穏やかな空間でカフェタイムを堪能しよう。

喫茶余白(きっさよはく)

誰もが約束された静けさと穏やかな時間を堪能できる喫茶店

吉祥寺駅から井の頭公園を通り、京王電鉄井の頭線井の頭公園駅まで歩いてくると、古民家で営業する『喫茶余白』を見つけた。

右側のドアを開けると1階で営業する琥珀糖専門店『シャララ舎』へ、左側は2階の『喫茶余白』へ続く階段がある。

2階の『喫茶琥珀』を目指し階段を上がっていくと入り口に利用方法が掲示されている。お客さんの静かな時間に干渉しないようにするため「いらっしゃいませ」の声がけをしないことや好きな席に座り、注文、会計は自席で都度行うこと、料金は現金で支払うことなどが書かれている。少し変わった喫茶店だけど、木で統一された店内はなんともいい雰囲気だ。

築60年の古民家を改装したというが、昔からこの姿だったかのような雰囲気。満席のときは「OPEN」のランプが「FULL」に変わる。

店内は1人がけのテーブル席のみで、本棚や壁に仕切られ半個室状態になっている。席により広さや装飾、壁の色が違っていておもしろーい! 全9席あるから、来るたびに新鮮なカフェタイムが体験できそうだ!

窓際の席は自然光がたっぷり入って明るい。卓上や本棚の本は自由に読んでいいし、空席があれば移動も可能だ。

窓際の席に着くとマスターが説明書きとメニューを持って来てくれた。説明書きは40ページに及ぶもので、この店でのルールがマスターの語り口で読みやすくまとめられている。

冒頭の3ページほどを読めば、こうしたルールを決めたのは“来店した誰もが静かで穏やかな時間を過ごす”ためだとわかる。たとえば「音が出る写真撮影は最大2回まで」、「私語はなるべく禁止し会話は筆談で」などといった内容でそれほど厳しいものではない。むしろ、この店のルールが明解なのでマスターは誠実だな、と思った。

狭くてちょっと暗いが押入れの中にいるかのような心地よさを体感できる席。

通常、店内で私語は禁止なのだが今は取材で店内に筆者のみだったのでマスターが話を聞かせてくれた。

「この店は本八幡にあった『シャララ舎』の喫茶としてスタートし、2024年2月に開店しました。初めて来た方にも常連さんと同じように安心してこの店を利用していただきたくて、読書喫茶『fuzkue』の店主の阿久津隆さんに相談したり、かつて勤めていた高円寺の『読書喫茶室アール読書館』での経験を踏まえてこの説明書きを作りました。僕は店主というよりお客さまの心地よい環境を作る管理人のような存在ですかね」

各席にはノートが設置され、利用者が好きに書き込めるようになっている。

うっかりルール違反をしてしまいそうで緊張しますね。

「『一切の音を許容しないピリピリした静寂の時間』ではなく、あくまで『穏やかに過ごすこと』が目的の店です。珈琲を淹れる音、本を捲る音、微かな呼吸音など。誰かが同じ時間と空間を共有して存在しているという環境音はラジオやレコードの心地よいノイズのようなものと考えていて、それが『1人だけど独りじゃない』、穏やかなグルーヴ感というか一体感に繋がると思っています」

製本された説明書きからお客さんへの丁寧な気遣いが伝わる。

1人だけど“ぼっち”ではない絶妙なつながりが心地いいことってありますよね。店の入り口から始まったこの店の“きまり”は長すぎるかもしれないけど、素直に受け入れられた。さあ、ここでどう過ごしてみようか。店内にある本も面白そうだけど、勉強や創作、ただぼーっと過ごすのもアリだ。

眺めていたくなる水槽みたいな琥珀糖ソーダとプニプニ生わらび餅

メニューは自家焙煎のコーヒーをはじめ、紅茶、ハーブティー、ウイスキーなどドリンクは一律700円、生わらび餅やクッキーの盛り合わせといったお茶請けは450円だ。え、ブレンドコーヒーは好みの味にブレンドした豆で淹れてくれるの⁉︎ スゴイ……。

メニューのオーダーにもきまりがあり、ドリンク代700円に席料300円が発生し、お茶請けや追加ドリンクなどを注文することで席料がなくなるシステム。1ドリンクのみでは3時間、追加注文すれば4〜5時間ゆっくりできる。

明確な料金設定だから心置きなく楽しめる!

これもお客さんが「ドリンク1杯で長居したら悪いな……」という不安を解消するためのルール。「3時間、堂々とのんびりしてほしいです! 追加オーダーで延長もできるのでお気軽に。また、お気に入りのフードの持ち込みも可能です。ここにくる前にお気に入りのパンやケーキ、クッキーなど買ってきて食べてもいいですよ。極端に匂いの強いもの以外は問題ありません」とマスター。

それはいい! 次は何か持ち込めるものを買ってくるとして、今日は数あるメニューの中から、琥珀糖ソーダ水と生わらび餅を選んだ。ちなみに琥珀糖とは、寒天と砂糖、水を混ぜて煮詰め、型取って乾燥させた江戸時代からある和菓子だ。

琥珀糖ソーダ水700円と生わらび餅450円。

グラスに注がれたソーダ水は小さな泡がチリチリと浮き上がっていて、まるで水槽の中みたい。グラスの底には1階の『シャララ舎』で作っているカラフルな琥珀糖が入っている。一人時間、何も考えなくていい充実感。ほおづえをついて金魚の形や水槽に敷き詰められた琥珀糖をしばらく眺めていた。

一口飲んでみると、梅の風味がしてほんのり甘い。琥珀糖をすくって食べるともちっとしておいしかったが、入れたままにしておくと時間が経つごとに琥珀糖が溶け甘みの変化を楽しめる。

小皿の琥珀糖を食べてみると、シャリシャリとした不思議な食感であっさりとした甘さがあり、色によって違うフルーツの味がした。

この日はネコの琥珀糖が入っていた。

生わらび餅もぷるん&もっちりした食感で、甘酸っぱいミックスベリーがよく合う。わらび餅はきな粉や黒糖をかけて食べるのが定番だけど、こういう甘酸っぱいテイストもアリなんですね。

ぷるるん&もっちりの生わらび餅。あっさりとしているからお茶やコーヒーにも合う。

琥珀糖のシャリシャリした食感が忘れられない。帰りにショップへ寄ってみよう。

絵本で見た“キラキラの実”を再現した琥珀糖専門店『シャララ舎』

1階にある『シャララ舎』は店主の尾高みつえさんが独学で琥珀糖の製造技術を身につけ、2012年から間借りで商品を販売するようになったことから現在にいたる。コンセプトは「自分だけでなく大切にしたい誰かの為に贈り物を選ぶ店」。店頭に並ぶ琥珀糖は食べずに飾って置きたくなるほどキレイだ。

 

店内にはすべて手作りの琥珀糖が並んでいる。

尾高さんが琥珀糖に魅せられたのは、子供の頃に読んだ絵本に出てきた“キラキラの実”の思い出がきっかけになった。

「ちょっと本のタイトルを覚えていないのですが、空からキラキラの実が落ちてきて、それを森の動物たちが食べるというお話なんです。この絵本が大好きでいつか私も食べてみたいと思っていたんですけど。大人になったある日、琥珀糖を見つけて“これはあのキラキラの実だ!”と思って作り始めました」

人気のMotifシリーズは、かわいい動物たちがいっぱい! 贈答向けの箱詰めセットもある。
小瓶に入れた琥珀糖はプレゼントにも最適。通販も行っている。

見た目だけでなく味にもこだわり、果汁やリキュールを使って味わい豊かに作っているのも面白い。「一般的な琥珀糖は、砂糖の味だけとか、薄いハッカや桜の味を利かせたものなんですけど、私はコーヒーや紅茶に合い、ちょっと懐かしい味わいの琥珀糖を作りたくなっちゃいますね」と話す尾高さん。

味も形も季節感を意識した期間限定商品も販売。秋はモンブランやワイン、正月向けに“縁起物のザクロ味”も登場するという。

井の頭公園を散歩した先で見つけた新しい隠れ家と琥珀糖。口に含んだ琥珀糖をシャリシャリ噛みながら行きとは違うルートで井の頭公園を歩いて帰ってみよう。

喫茶余白(きっさよはく)
住所:東京都三鷹市井の頭3-31-4/営業時間:12:00〜22:00(シャララ舎13:00-19:00)/定休日:水・木(シャララ舎 火水木たまに金)/アクセス:京王井の頭線井の頭公園駅から徒歩1分

取材・文・撮影=パンチ広沢

パンチ広沢
ライター・ドローンパイロット
学生時代、爆笑問題さんにインタビューしたのをきっかけに阿佐ケ谷に住み始め、以来30年もの中央線沿線ウロウロLIFE。グルメ、旅、エンタメいろんな仕事を幅広く担っているが、とどのつまり人の話を聞くのが好きなんだなあと思う今日この頃。2024年二等無人航空機操縦士の資格を取得しドローン関係の仕事も開始!

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