川越産サツマイモの焼き芋ブリュレを食べ歩き!『COEDO HACHI』のパリパリ&ねっとり新感覚スイーツ
川越で何を食べよう? そう聞かれ、パッと思い浮かぶものの一つ。それは、サツマイモ。栽培が盛んになったのは江戸時代中期で、江戸っ子には「サツマイモといえば川越」と評判だったとか。“川越いも”と呼ばれ、親しまれてきた人気は今も変わらず、この土地の名産品。昔の人が思いつかないような令和ならではのサツマイモスイーツを探しに、いざ出発!
2カ月間熟成した究極のサツマイモ
川越がサツマイモの名産地となってから、かれこれ300年以上。蔵造りの建物が立ち並ぶ一番街を歩くと、まるで時代を遡ったような気分だ。重厚な街並みに映える、「八」と書かれた白い暖簾(のれん)に導かれ、店の引き戸に手をかけた。やって来たのは、2022年にオープンした焼き芋専門店『COEDO HACHI』。
さまざまなサツマイモスイーツに出合える川越。王道から創作菓子までバリエーションは幅広いが、シンプルな焼き芋を食べられる店は意外と少ない。しかし、いろいろあるからこそ、本音を言うとまずは素朴な焼き芋を食べたい。そう思ったら、行き先は『COEDO HACHI』に決まり!
「シンプルな焼き芋」と表現したが、実はこれがタダモノではない。川越産のサツマイモを湿度80%の貯蔵庫に保管し、2カ月間熟成することで、糖度を30度まで引き上げている。それを今度は2時間かけて壺焼きにするのだが、遠赤外線を用いて、全体を均一にじっくり加熱。つまり、ものすごく手間がかかっているのだ。
そしてできあがった、熟成つぼ焼き芋。2つに割ってかぶりつくと、ねっとりした舌触りでトロッととろける。食べ進めるごとに濃厚な旨味、甘みが広がり、ふくよかな香りがフワッ。サツマイモ本来の魅力を見せつけられ、うっとりしてしまった。
令和ならではのサツマイモスイーツが登場
『COEDO HACHI』は、地元で人気の『炭火 鳥もと』の姉妹店。「もともと炭を使うことには自信があった」そうで、「壺焼きも炭を使うという点が共通しています」と『COEDO HACHI』の店主・山﨑利貴さん。壺焼きは、江戸時代から行われている焼き芋の製法。伝統ある一番街で新しいことを始めるにあたり、「川越に古くからあるサツマイモ文化を今に伝えたい」と考えたことも、店を始めたきっかけだ。
もう一つ、ここに来たらぜひ食べておきたいのが、さつまいも全国No.1を決める「さつまいも博2023」で実行委員会賞に選ばれ、来場者人気投票でも4部門中3部門で1位を獲得した焼き芋ブリュレ。看板商品の熟成つぼ焼き芋をアレンジしたユニークなサツマイモスイーツだ。食べ歩く姿を遠くから見るとアイスクリームを食べているようだが、何を隠そう、手に持っている部分は半分にカットした焼き芋。その上には、カスタードクリームが盛り付けられている。
注文ごとに、スタッフが熟成つぼ焼き芋を半分にカット。断面にくぼみを作り、中までしっかりカスタードクリームを注入する。上からザラメを振りかけ、バーナーで炙ったらできあがり。受け取るとほんのり温かく、気持ちまでほっこりする。
スプーンで表面をすくって口に入れると、パリッとした歯触り。ベッコウ飴のような甘みが楽しい。ふんわりしたカスタードクリームと、ねっとりしたサツマイモが口の中でなじむのもたまらない。こんな和洋折衷のアレンジを江戸時代の人が食べたら、きっとアッと驚くに違いない。
時代を超えて、江戸っ子と川越の醍醐味を分かち合う
店の脇に用意されたベンチもありがたい。もし歩き疲れていたら、サツマイモの甘みにホッと癒やされつつ、ゆっくり休憩していこう。
店頭には、おみやげにぴったりの芋けんぴや芋チップス、干し芋も並ぶ。保存料や着色料は不使用、過度な味付けも控えているという。シンプルにしても、大胆にアレンジしても味わい深いサツマイモスイーツ。「サツマイモといえば川越」と言った江戸っ子に強く同意する!
COEDO HACHI(コエド ハチ)
住所:埼玉県川越市元町2-1-6 蔵の街てらす内/営業時間:10:30~16:30(土・日・祝は〜17:30)/定休日:無/アクセス:西武鉄道新宿線本川越駅から徒歩16分
取材・文・撮影=信藤舞子
信藤舞子
ライター
北海道弟子屈町生まれ、札幌市育ち。現在は東京在住。雑誌、WEBメディアを中心に、街歩きや旅、日本の文化について執筆する。なかでもおやつには目がなく、近著は『東京おやつ図鑑 和菓子編』(交通新聞社)。レコードや着物も好き。