多様な人材をいかす経営は企業の競争力向上につながる 経産省、「ダイバーシティレポート」を公表
経済産業省は4月7日、企業価値向上につながるダイバーシティ経営の考え方や、具体的取り組みをまとめた「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」を公表した。
レポートは2024年11月から4回実施した「多様性を競争力につなげる企業経営研究会」の議論を踏まえたもので、イノベーション創出を目指す企業、国際競争力を高めたい企業の取締役会、社長・CEOら経営陣といったダイバーシティ経営の担当者を読者に想定した。
経産省「多様性を企業価値向上に結び付けることに難しさを抱えている企業も」
経産省では、「多様な人材をいかし、能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」を「ダイバーシティ経営」と定義している。
企業でも多様な人材の活躍を推進するための制度構築・整備を進めてきたものの、経産省は「多様性を企業価値向上に結び付けることに難しさを抱えている企業も多く存在している」と分析。
「グローバルな経営環境や労働市場の供給構造が大きく変化し、多様な人材が十分に活躍することができない同質性の高い組織は、変化に対する柔軟な対応力に乏しく、中長期的な競争環境下を勝ち抜くにはリスクが大きくなる」として、企業価値向上につながるダイバーシティ経営の考え方や具体的な取り組みをレポートに取りまとめて公表した。
ダイバーシティ経営の課題と解決につながるアクションを紹介
レポートには、「企業の競争力強化のための手段としての多様性」という観点で、企業がダイバーシティ経営に取り組む際に直面する課題と、解決につながるアクションを取り上げ、「経営陣へのメッセージ」、「多様性推進に関する経営陣の課題感の解消に向けて」「実際にダイバーシティ経営に取り組む際の課題感と競争力強化につなげるための対応とは」といった内容を盛り込んだ。
「経営陣へのメッセージ」では、取締役会と社長・CEOら経営陣双方に対して、自社の競争力強化の観点から、「なぜ多様性推進に取り組む必要があるのか」について、アステラス製薬(東京都中央区)やオムロン(京都市下京区)、日立製作所(東京都千代田区)の事例を交えて解説した。
その上で、「成長の機会として多様性推進を捉え、真の目的である企業価値向上を追求していくことは重要だ」と指摘している。
経営観点での課題「事業上の必要性がわからない」
「多様性推進に関する経営陣の課題感の解消に向けて」では、経営観点から見た多様性の必要性に関する課題感に答える形で、競争力につながるダイバーシティ経営の考え方を取り上げた。
経営観点での課題感について、レポートでは「事業上の必要性がわからない」「性別、年齢、障害の有無、国籍などの観点のみの対応となっている」「競争力強化へのパスが不明瞭」「倫理的対応がベースであることがわかりづらい」などに整理した。
また、ダイバーシティ経営の取り組み方針を考えるためのステップも紹介、進め方としては「取り組みを仮説として設計し、変化する環境に応じて不断の見直しが求められる」としている。
「実際にダイバーシティ経営に取り組む際の課題感と競争力強化につなげるための対応とは」では、担当役員や担当者が具体的取り組みを進める際に抱えている課題感に答える形で、企業に求められる具体的なアクションを取り上げている。
課題としては、「グループ・事業部門で一律的な取り組みを行うのみでは効果が得られない」「ダイバーシティ経営の考え方自体が理解されにくいケースがある」「取り組みの優先順位付けが困難」などが挙げられた。
経産省の発表の詳細は同省の公式ホームページで確認できる。
また、経産省では、METIジャーナルでも「ダイバーシティ経営」の進め方について解説している。