森保ジャパンのW杯最終予選を読む。長谷部誠コーチの誕生が日本代表にもたらすもの…予想スタメンは…
【サッカージャーナリスト・河治良幸】森保一監督は9月にスタートする北中米W杯アジア最終予選のホーム中国戦とアウェーのバーレーン戦に臨む27人のメンバーを発表した。伊東純也(スタッド・ランス)が今年1月のアジアカップで途中離脱して以来の復帰となったほか、パリ五輪を経験した19歳のDF高井幸大(川崎フロンターレ)、圧倒的なフィジカル能力を備える22歳のDF望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)の2人が初選出。そして今年現役を引退し、フランクフルトで指導者のキャリアをスタートしていた長谷部誠コーチの入閣も発表された。
静岡メディアの視点ではドイツの名門バイエルン・ミュンヘンに加入したDF伊藤洋輝やパリ五輪からのA代表への飛躍が期待された関根大輝(柏レイソル)が怪我で招集外となったのは残念だが、やはり長谷部コーチの誕生は嬉しい話題だ。
今後もフランクフルトのU-21チームでコーチを続けながら、インターナショナルマッチデーで“森保ジャパン”に合流という形になるが、山本昌邦ナショナルチームダイレクターによれば、2026年の北中米W杯まで代表スタッフの一人として貢献してもらうことを視野に入れているという。
森保監督は「長谷部コーチの就任に関しては、私が協会の方々にお願いさせていただきました。これから我々が世界一を目指して戦っていく中で、長谷部コーチが持っている欧州での経験は間違いなく我々が前進していくためのいろいろな刺激になる」と理由を説明した。
ゲームキャプテンを任された2010年の南アフリカW杯(当時のチームキャプテンは川口能活氏)から、2014年のブラジルW杯、2018年のロシアW杯と3大会でキャプテンを担い、厳しいアジア最終予選を乗り越えた長谷部コーチの経験は頼もしいが、ドイツの第一線でトップ選手たちと間近に接してきた基準が加わることで、欧州組を中心とした今後の選手選考にも大きな助けになるのではないか。
初戦は手堅い戦いを選択か
今、日本代表の目の前にはアジア最終予選が待っている。前回のカタールW杯予選ではホームの初戦でオマーンにつまずき、アウェーで中国にはなんとか勝利したものの、続くサウジアラビアとのアウェーゲームにも敗れて、過去最大級の窮地に立たされた。北中米W杯から本大会の出場数が48カ国に拡大されており、アジアに8・5枠が与えられていると言っても、アジアのレベルが急速に底上げされており、日本であっても決して予選突破が約束されない状況だ。
しかも、初戦でぶつかる中国は前回オマーンを指揮したブランコ・イバンコビッチ監督が率いており、森保監督も「徹底的に分析して戦いに挑んでくる。我々は戦術面も、メンタル面も上回って行けるように準備しないといけない」と警戒を強めている。
そういう意味でも、特にホームの初戦はこうしたシチュエーションに慣れているメンバーを中心に、手堅く勝利を狙う選手起用になるはず。今回は伊藤に加えて本来の主力である冨安健洋(アーセナル)も怪我で外れており、現時点でベストの陣容とは言い難い。今の状況下では“第三のシステム”として注目される3バックも一旦封印するのではないか。
初戦のスタメンは…
スタメンを予想すると、GKは鈴木彩艶(パルマ)、最終ラインは右サイドバックから菅原由勢(サウサンプトン)、板倉滉(ボルシアMG)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、町田浩樹(ユニオン・サンジロワーズ)というセットか。約1年ぶりの代表復帰となった中山雄太(FC町田ゼルビア)のアピール次第では左のファーストチョイスになる可能性もある。
中盤はキャプテンの遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティングCP)の2ボランチを描きやすいが、プレミアリーグ進出を果たした鎌田大地(クリスタル・パレス)も開幕戦からゲームに絡めており、十分にファーストチョイスになりうる。
二列目は右から伊東、久保建英(レアル・ソシエダ)、三笘薫(ブライトン)という3人のセットを待望する声は多いが、南野拓実(モナコ)がフランスリーグで絶好調。堂安律(フライブルク)もブンデスリーガの開幕戦で決勝点をあげており、そう簡単にスタメンを明け渡すとは思えない。また6月の2試合で2得点1アシストの活躍を見せた、左サイドの中村敬斗(スタッド・ランス)もしかりだ。
旗手(静岡学園高出身)の立ち位置は…
激しい2列目のレギュラー争いが予想される中で、静岡県勢では今回、唯一のメンバーとなった静岡学園出身の旗手怜央(セルティック)がどう競争に食い込んでいくか。夏の移籍市場では英プレミアリーグをはじめ、5大リーグへのステップアップの噂も多く流れた旗手だが、すでに開幕しているスコットランドリーグで3試合2得点と順調な活躍を見せている。新しいレギュレーションになった欧州チャンピオンズリーグで、国際レベルの価値を高めたいところだ。
まずは日本代表でのアピールが求められる中で、もし森保監督が中国戦かバーレーン戦で4−3−3を採用すれば、得意ポジションである左インサイドハーフのファーストチョイスになってもおかしくない。
前田は正念場
FWは上田綺世(フェイエノールト)を筆頭に、タイプの違う5人の選手が争う構図だが、小川航基(NECナイメヘン)や新天地のスペインで存在感を増す浅野拓磨(マジョルカ)がスタメン起用されてもおかしくない。
旗手の同僚でもある前田大然(セルティック)は所属クラブでウイングを担っており、森保監督もサイドの起用を視野に入れているはず。ただ、右は伊東、左は三笘が復帰した状況で、両サイドの戦力は充実してきており、ここは正念場と言えるかもしれない。パリ五輪代表でエース的な存在だった細谷真大(柏レイソル)も、今後に向けて重要なアピールの場になってきそうだ。
最終予選のスタートで大事になるのは勝利。ここで2連勝できれば、最終予選の中で最も難しい戦いが予想されるアウェーのサウアラビア戦にも、前向きなメンタルで挑むことができる。その時には伊藤の復帰、また静岡県勢から一人でも多くの選手が食い込むことに期待しつつ、まずは9月の2試合を現場から見守りたい。