4月から小学生 食べる練習できてる?【学校給食の悩み・不安】好き嫌い・遅い・小食・牛乳…管理栄養士・松丸奨が全回答
はじめての給食についての心配ごとと困りごとに、人気管理栄養士の松丸奨先生がお答えします! 2回目は、新1年生が困りがちな、「牛乳」「カトラリー」についてです。
「新1年生」の親が知っておきたい家庭でできる給食の心構えを人気管理栄養士が教えます!新1年生の保護者に向けて、学校給食の「心配ごと」について、管理栄養士・栄養教諭の松丸奨先生(以下、松丸先生)に教えてもらう連載2回目。今回は、子どもたちがはじめての給食で「困ること」についてです。
まさかの「ストローなし」「紙パック」で牛乳に苦戦 どうする?
松丸先生は現在、都内の公立小学校にて、管理栄養士・栄養教諭として働いています。
小学校入学前の保護者会では、保護者の方へ「牛乳」や「お箸とお皿」のことをまずは伝えるとのこと。
「SDGsの観点から、牛乳パックをストローレスで直飲みをする学校が増えていると感じています。ホームページなどに給食の写真をアップしている学校も多いので、お子さんが通う学校給食の牛乳が、紙パックなのか、瓶なのか、ストローはありかなしか、を事前に確認すると安心です」(松丸先生)
松丸先生の学校でも、牛乳は紙パックでストローなし、直飲みスタイル。
「新1年生向けの保護者会で、牛乳については必ず説明するようにしています。まず、紙パックを開けたことのないお子さんがとっても多いんです。となると、飲む以前に、開けるまでがとても大変です。どうにか開けられたとしても、そこから直飲みするのもさらに難しい。
開け口がきれいに三角にならなかったり、傾ける角度がわからなくてこぼしてしまったり、など。最初は牛乳に苦戦する子が本当に多いですね」(松丸先生)
「紙パック」 すすいで開くまでの学校も!
最近は、紙パックをすすいで洗って開いて、リサイクルに出すところまで子どもたちで作業する学校もあります。
「ご家庭でも、その一連の流れを予習しておいてもらえると、学校でもスムーズにできるので、ぜひやっておいてもらいたいですね」(松丸先生)
また、「牛乳が苦手」「200ml全部飲めないかも」という保護者からの不安も聞くと言います。
「牛乳は飲み切らなくても大丈夫。そのうち体育の授業が始まったり、入学時より気温が高くなるにつれて、難なく飲み切る子が増えてきます。子どもたちは、4月の入学時とは考えられないような成長をみせてくれますから」(松丸先生)
食べる練習はちゃんとできている?
あと家庭でやってきてほしいのは、お箸で食べる練習と松丸先生。
「お箸を使うのが苦手そうな子が一定数います。給食の和食献立のときは、箸で食べるので、お家でしっかり練習してきてくれると、給食を食べるときの困りごとが減ると思います」(松丸先生)
また、給食に慣れていない子どもにとっては、お皿の扱いも食べやすさに関わってきます。
「食器は、扱いやすさ重視で割れない軽い素材の食器を使っている学校もありますし、うちの学校のように、きちんと重量感があり、落としたら割れる陶器を使っている学校もあります。もちろん、こちらも学校ホームページで公開されている給食写真を見て、どんなお皿を使っているのか確認してもらうといいと思いますね」(松丸先生)
普段から軽い食器で食事をしている家庭は、学校が給食で陶器を使っていたら、子ども用の陶器のお茶碗に変えてみる、などの工夫をしてみて。
「自分で上手に食べられるかどうかは、給食を楽しむためのベースになります。入学前に少しずつ意識してもらえたら嬉しいです」(松丸先生)
子どもに「食べることの意味」を伝える便利な方法はこれ
食に関する興味を持ち、楽しく給食を楽しんでもらうためには、「子どもたちに、食べることにはどういう意味があるのか知ってもらうことが大事」と松丸先生。
そこで松丸先生がおすすめしてくれたのは、『栄養素キャラクター図鑑(日本図書センター刊)』という図鑑。
「たべることがめちゃくちゃ楽しくなる! 栄養素キャラクター図鑑」(日本図書センター)
「キライがスキに大へんしん! 野菜と栄養素キャラクター図鑑」(日本図書センター)
「うちの学校の子どもたちも大好きな図鑑です。栄養がかわいいキャラクターで描かれ、『ビタミンCちゃんは肌がきれいになるよ』などというように、野菜や栄養素が解説されています」(松丸先生)
どんな栄養素なのか、不足したり、摂りすぎたらどんな影響があるのかなどがわかりやすく解説されているので、子どもたちが食に関して身近に感じられるようです」(松丸先生)
苦手が食べられたら目一杯褒めて
新年度、帰宅した子どもに聞きたいことは山ほどあると思いますが、給食について心配ごとがあるご家庭は、毎日「今日の給食、どうだった?」と聞いてみて、と松丸先生。
「野菜嫌いな子が『今日は、サラダをひと口食べられたよ』と報告してくれたら、『すごいね!』と、いっぱい褒めて。そして、『その野菜を食べられたってことは、身体にこんないいことがあるね』など、少しでいいので、栄養のことも会話に取り入れてください」(松丸先生)
「いろいろな食材をたくさん食べることは、自分にとってメリットがあること」と、家庭内で伝え続けてほしい、と松丸先生。
「自分の身体のためになるものがこの食材に入っているんだ、と子どもたちに伝えていくことで、苦手意識を少しずつ変えていくことができます。食べる意味を理解することは、健やかな食生活を送っていく上でとても大事なことなんです」(松丸先生)
親の食べ方を子どもは見ている!
さらに、「子どもは親をすごくよく見ています。だから食事も大人の真似をすることがあるんですよ」と松丸先生は言いますが、それってどういうこと?
「最近、『糖質オフ』が流行っていますよね。夕食ではご飯を食べない、炭水化物ダイエットをされている保護者の方も多いかと思います。また、『昨日食べすぎちゃったから、今日はごはんなし』なんてことも、大人になると普通にやってしまいますよね。それを身近で見た子どもも、いずれそのような食生活を真似するようになります。『お母さんが食べてないんだから、私も食べなくていいでしょ』なんて、小学校高学年の女の子のなかにいたりします。
でも、成長期の子どもたちはしっかりと必要な栄養素を摂らなければいけない時期です。家庭の食事で、『食べることは身体を作ることだ』という意識を保護者の方にもしっかりと持ってほしいと思っています」(松丸先生)
給食に対してポジティブな気持ちで入学を
食への不安がある親子にとって、はじめての給食は緊張することも多いでしょう。
「だからこそ、『食べ切れるか時間が心配だね』など、不安をあおるよりも、学校のホームページで給食の写真を見ながら『こんなメニューもあるんだね』『これが美味しそう!』なんて話をしておいてほしいですね。さらに保護者の方は『こんな給食が待っているなんて羨ましい!』と、子どものワクワク感を増やしてあげてください。
『時間』や『好き嫌い』などの心配ごとは、全部私たち学校に任せて、安心して入学していただいて大丈夫です! だから、親子ともに給食に対するポジティブなイメージを持って入学してきてくださいね」(松丸先生)
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「『学校で一番好きなのは給食の時間』『給食が好きだから学校へ行くのが楽しい!』という子もいるほど、給食が子どもたちの学校生活に占める割合は大きいんです」と松丸先生。
親子ともに、はじめての学校給食に対するワクワク感を持ちながら、新しい学校生活を楽しんでくださいね。
撮影/日下部真紀
取材・文/遠藤るりこ
松丸先生の新1年生の給食記事は全2回。
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