高齢化で減る防犯ボランティア。支えるのは日常の“ながら見守り“
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今日から仕事始め。昨年は物騒な事件を耳にすることも多かったので、年末年始には家族で「防犯対策」について話し合ったご家庭も少なくなかったのではないでしょうか。
走りながら地域を見守る「パトラン」
そんな中、地域を見守る新しい形として、何かをしながら行う「ながら見守り」という活動が、全国で広がっているので、その取り組みについて取材しました。まずは、「パトラン」東京チームの代表を務める渡部 信隆さんに伺いました。
「パトラン」東京チームの・代表 渡部 信隆さん
パトロールランニングですね、略して「パトラン」。防犯パトロールと、ランニングを掛け合わせた造語なんです。趣味で走ってる方とか、そういった方々がこういった赤い服を着て、みんなで「こんばんは」とか「こんにちは」という形で声かけたり、街を走って見守りもやってるという感じなんですよね。
1人で活動するときは、挨拶すると僕なんか逆に不審者に思われちゃうんで、1人だとしないんですけども、2人以上で活動するときは「お気をつけて」とか、結構スムーズに挨拶が交わせます。この挨拶っていうのはなぜかというと、これから何かやろうかなっていうふうに企んでる人がいたとしたら、そのやる気を萎えさせる効果があるんですね。「目を見られた」「声かけられた」ということでやりにくいなと、そういった効果を狙って、挨拶をしていると。
<パトロールしながらランニング「パトラン」の皆さん>
日常のランニングに防犯パトロールを組み合わせた「パトラン」。10年ほど前に福岡で始まったボランティア活動で、全国で3000人のランナーが登録しています(東京都内では、およそ150人の登録者が、複数人で日時を決めて一緒に走っている)。
一回に3キロ~5キロの距離を、1時間ぐらいかけて走って、住宅街や人気の少ない路地を巡回。これまでに、行方不明の高齢者を見つけたり、倒れている人を発見して通報するなど、人命救助につながるケースも多く、全国で1000件以上の街の異変を報告してきたそうです。
きっかけは運動不足
挨拶すると犯罪の抑止力につながりますが、走りながら見回るので、趣味と実益を兼ねているということですが、今回は、新宿区を中心に活動するチーム(月2回程度実施)のランニングに同行しました。参加者の声と、実際に走る様子をお聞きください。
パトラン参加者1
太っちゃって、運動したいなっていうのがきっかけで、大学3年生のときに走り始めました。パトランやってるところに遭遇して、向こうから挨拶が来て、「この集団なんだろう?」って思って入ったっていう感じです。
パトラン参加者2
今日が2回目になりますね。もうね、月に150キロぐらい走ってるんですよ。せっかくねそんなに走ってるんだったら、それが誰かの役に立つ、防犯になるっていうんですからね、お試しで参加したらハマっちゃったっていうか。
パトランの様子
渡部:じゃあ、こっから走ります。こんばんは~。こんばんは~。お気をつけて~。
田中:もっといつも早いですか?
渡部:こんなもんです。だんだん慣れてくるんですよ。
ペースはゆっくりですが、走りながら挨拶をするため息も上がりました。夜の7時過ぎ、暗い中を走る、5人のメンバーに同行。帰宅途中の女性や、塾帰りの子どもが行き交う道を見守るようにパトロールします。
<時間外のゴミの不法投棄も撮影します>
<放置自転車を発見!>
走っていて驚いたのは、道端の異変に気づくとスマホのカメラでその場を記録していたこと。不法投棄されたゴミや放置自転車、街灯切れを見つけるとその都度立ち止まって、写真を撮影。新宿区や渋谷区では24時間対応の道路通報アプリがある。それを活用して行政に情報提供も行っているそうです。
犬の散歩をしながら見守り「わんわんパトロール」
日によってはゴミ拾いをしながら走るメンバーもいたりして、このように小さな異変を見逃さずに改善していくことで、街の治安維持に貢献しているるそうですが、さらにこうした「ながら見守り」は、ランニング意外にも広がっています。千葉県獣医師会・会長の、市川 陽一朗さんに伺いました。
千葉県獣医師会・会長 市川 陽一朗さん
「わんわんパトロール」っていうんですけれども、児童の登下校の時間に合わせて犬の散歩をしてもらうね。「ながらの見守り」、散歩をしながら子供たちを見守っていって、犯罪被害を防止に繋げる。登録いただいて、飼い主さんには隊員証をお渡ししてて、犬は「わんわんパトロール」のバンダナをつける。犬種は特に限定はありません。ですから大きい犬もいれば、チワワのような小さな犬種でもOKです。
県内で子供の犯罪被害が続いて、それを防止を強化するために、千葉県警本部と一緒に始めた活動です。日常の活動の普通の生活の一部が、犯罪の抑止になってくれればいいなという感覚だと思います。
「わんわんパトロール」、可愛いらしいネーミングですが、真面目な「ながら見守り」。千葉県獣医師会と千葉県警が連携して2018年にスタート。散歩しながら挨拶をしたりして、延べ568頭の犬が参加しています。
こうした取り組みの背景には、防犯ボランティアの担い手が高齢化によって減少している現状があるそうです。地域の見守りやパトロールを担う人が少なくなる中、「地域の目」をどう維持していくかが課題となっていて、だからこそ「ながら見守り」が大事になってきます。
隣に住む人が何をしているのか分からなくなり、地域のつながりが希薄になっているいま、全ての世代が積極的に関わることで、防犯意識が高まります。こうした地道な活動で地域に「人の目」を増やしていくことが、地域全体にとってプラスに繋がることが期待されています。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)