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二軍なのにスクールに行かない息子。気持ちが足らないように見えるが、やる気を出させるのも親の役目なのか問題

サカイク

ほかの子と差がついてきて二軍の息子。チームメイトたちは個々にスクールなども通っているけど、息子はスクールに行きたくないという。

周りとの差にいろいろ考えてしまう。やる気を出させる、スクールに行きたいと思わせるのも親のかかわり次第なの? というご相談をいただきました。ほかの子と比較して焦ってしまうのはよくあることですよね。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<週何回行くべき? 自主練習は何をしたらいいの? サッカーの「習い方」がわからない問題

 

<サッカーママからのご相談>

この春、小学三年生(8歳)の息子のサッカーチームの活動について今後どうして行くべきか教えてください。

息子は幼稚園の時に園庭で毎週行われていたサッカー教室に興味を持ち『僕もやってみたい』とサッカーを始めました。

小学校に上がる時にサッカーを続けると言うことで、お友達にサッカーチームを教えてもらい、体験会に参加し、そこのチームに入ることを決めました。

練習や試合を土日に行い、二年生からは火曜日にある練習にも参加出来るようになり、体調が悪い等の理由でなければなるべく週3回の活動には参加しています。

お友達も多く練習には楽しく参加していました。

ですが、だんだんと個々のレベルの違いも出て来て息子は言うなれば二軍チーム、親としてはまだまだ二年生(編集部註:投稿時)だしな......と思う部分と、やはりチームスポーツが故に試合に出させてもらった時に上手い子達に迷惑がかかるのではないかと言う気持ちにもなりこのままこのチームで続けていいのかと考えてしまいます。

息子は、サッカーは好きで引き続き今のチームでやると言っています。

チームメイト達はほとんどの子がこのチーム以外のスクールへ行っていますが、息子はスクールには行きたくないと。周りとの差は明らかに感じますが、息子なりに始めた頃に比べれば色んなことが出来るようになり、たまに驚くプレーをする事もあります。

ですが、「上手くなりたい」とか「もっと試合に出たい」とかそういう気持ちがまだまだ足りないと感じます。

その気持ちはあるといいますが、今はそこまでサッカーに集中する様子はなく、見ていて歯がゆいところでもあります。

習い事については私たち親がやってみたらと勧めて始めることはなく、自分が興味を持ちやってみたいと言って来たことには反対する事もなくやらせて来ました。

親は周りとの差に色々と考えてしまいどうしたら良いのかと日々考えます。

やる気を出させるのも親の責任なのか、スクールに行きたいと思わせるのも親次第なのか......。

チームの親御さんをみていると自分の関わり方なのかと考える事もあり、サッカーだけではなく、こうした事は普段の生活にも影響が出ているように思います。

今後どうしたら良いのかわからないのが現状です。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

さて、人の子の親になると、何事も「子どもにしっかりやらせなくては」と肩に力が入りがちです。なぜなら、正しい方向に導くことが「親の責任」「親の役目」だと考えているからです。

私自身も似たようなものでした。共働きだったので、しっかり勉強を見てあげなければ、子どもの才能を伸ばしてあげなけばと力んでいました。ところが、見た目の結果が良かったとしても、その子の力になっていないことは残念ながら多々あります。

 

■「親に言われたから嫌々やる」という"負の習慣"が身についてしまうことも

例えば、プリントや問題集を早くやらなくては「ママに怒られる」と恐れるがあまり、解答ページをみながら答えを丸写したとしましょう。何も知らない母親は満足するかもしれませんが、なんら成長につながらないうえ、その子は「親に言われたから嫌々やる」という"負の習慣"が身についてしまいます。

私の息子はラッキーなことに、私がやらせようとすると「嫌だ!」と激しく拒否する子どもでした。いわゆる「自分」というものを持っていました。そして、宿題でも、お手伝いでも、こちらが我慢強く待っているとやりだすのです。子どもには自分のタイミングというものがあるのです。

 

■息子さんがちゃんと「自分」をもって意思表示ができているのは、とても良いこと

お母さんの息子さんも同じです。たとえ二軍だとしても「サッカーは好きで引き続き今のチームでやる」とか「スクールには行きたくない」と、ちゃんと自分の意志を伝えています。うちの息子と同じように「自分」を持っています。

わが子が自分の意志を表明できたことを、ぜひ喜んでください。心配することなど何もありません。お母さんは、息子さんにとって「何を言ってもいい」安全基地になっている証しです。

家庭(親)が子どもにとって安全基地であれば、子どもは学校やサッカーチームでさまざまなことにトライできます。良い成果でなくても、安全基地の家庭はそのことを責めたりしませんから。

 

■やる気を出させるのは親の役目?

逆に、「上手くなりたいとか、もっと試合に出たいっていう気持ちが足りないよ!」などと、怒られたり、「やる気はあるって言うけど、本当にサッカーに集中してる? してないよね?」などとなじられたら、家庭は子どもにとって「危険エリア」に変わります。

気持ちが足らないとか、集中していないなどと子どもに言い渡し子どもを震え上がらせれば、「はい、頑張ります!」と、その日一日は頑張るかもしれません。が、それは「恐怖学習」もしくは「一発学習」といって、一度しか効き目はありません。

「やる気を出させるのも親の責任なのか、スクールに行きたいと思わせるのも親次第なのか......」と書かれています。

これについては、やる気が出るようなポジティブな環境を整えるのは親の役目ですが、スクールに行きたいかどうかは子どもが決めることだと私は考えます。

 

■アドバイス① これ以上何もせず見守って

そこでお母さんに3つアドバイスさせてください。

ひとつめ。相談文に「今後どうしたら良いのかわからない」とありますが、どうかお母さんはこれ以上何もしないでください。ただひたすら見守ること。

まだ3年生が始まったばかりです。息子さんの好きなようにさせてあげましょう。

 

■アドバイス② お子さんをプロにしたいのか、どうしてサッカーをさせているか今一度確認を

2つめ。お母さんは、なぜ息子さんにサッカーをやらせているのでしょうか? 絶対にプロサッカー選手にならないといけませんか? 一度そのあたりを家族で確認してください。

お母さんは「習い事については私たち親がやってみたらと勧めて始めることはなく、自分が興味を持ちやってみたいと言って来たことには反対する事もなくやらせて来ました」とあります。とても良いことです。

その方針はブラさず維持してください。成果主義ではなく、ただありのままのわが子を愛することを心がけてください。

もちろん、容易いことではありません。なぜなら、私たち親世代の多くが、なにかできたり秀でなければほめられなかった人が多いからです。

私たちはつい育てられたように育てるものですが、ぜひサカイクで子育てを学んで、それを乗り越えてください。

 

■アドバイス③ 他の子と比較するより、子どもの内発的動機づけを育てる事に目を向けよう

最後の3つめ。お母さんが書いた「チームの親御さん」がどのような方々なのかわかりませんが、他人の子育てに振り回されるのはやめましょう。

子どもを他の子と、夫を他の方の夫と比べて何かいいことがありますか?

例えば、サッカースクールに行く理由が「親がうるさいから、2軍だと怒られるから」と取り組む際のモチベーションは「外発的動機づけ」です。

反対に「サッカーが楽しいからもっとやりたい」と、自分の中からわき出た感情や感覚に従って取り組むことを「内発的動機づけ」と言います。教育心理学の分野では、多くの実験や調査によってすでに証明されています。

小学生までは外発的な動機づけでも、ある程度の成長は望めますが、子どもの自我が確立される中学生以降は、内発的な動機づけがある子がぐんと伸びます。

主体性がある子と、何事も親から叱られたり世話を焼かれながら生活している子の差がどんどん開いていくのです。

例えば「一軍を目指す」ことは一見内発的なものに見えますが、もしかしたら違うかもしれません。結果が出ている時は良いのですが、失敗したり成果が上がらないと途端に意欲を失くしてしまいます。

  

■頑張っている自分が好きになると、どんなことにも意欲的に取り組める好奇心につながる

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

したがって、結果をほめるのではなく「毎日よく頑張ってるね」「楽しんでる姿を見られてお母さんも嬉しいよ」というようにプロセスを評価してあげてください。

そうすると、頑張っている自分、サッカーをしている自分を好きになります。そこで育まれた自己肯定感が、どんなことにも意欲的に取り組めるエネルギーや好奇心につながるのです。

何のためにサッカーをやらせるか。

私の答えは「豊かな成長のため」です。お母さんが責任をもつとしたらどこにコミットするか。それは、豊かな成長の邪魔をしないことです。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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