「IQ高ければ配慮はいらない」と言われるも、入学後トラブル多発で転校…。私の後悔【読者体験談】
監修:森 しほ
ゆうメンタル・スキンクリニック理事
就学先の選択、入学後のトラブル、転学……わが家の体験
私には現在8歳になる息子がいます。4歳の時ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。多動や癇癪があり、勝敗や順位へのこだわりが強い性格です。一方で「学校へは行かなければいけない」「授業は受けなければいけない」と守る真面目な面もあります。
そんな息子の就学に際しては選択の難しさや迷い、そして入学後にさまざまなトラブルを経験することになりました。
今回は、就学相談でのやりとりや小学校生活での先生とのトラブル、そして転学についてお話しさせていただきます。同じように発達障害のあるお子さんをお持ちの方々の参考になれば幸いです。
「IQが高ければ、配慮はいらないですよ」就学相談で一方的に決めつけられ……
わが家が住む自治体には自閉症・情緒障害特別支援学級自体がなく、また知的障害特別支援学級は学区外の学校にしかありませんでした。また、知的障害特別支援学級には、基準のIQ内では入れないと聞いたため、悩んだ結果、わが家では学区内の学校の通常学級に在籍しつつ、通級指導教室の利用を希望することにしました。
就学相談前に知能検査をすることになりました。普段なら座っていられず、一方的な会話をしたり話を聞けないことが多いのですが、「大人と1対1で質問をされ答える」という形式が息子は楽しかったようで、離席もあまりせず実施できたようでした。そして迎えた就学相談、知能検査の結果が「きちんと座って検査を受けることができた」「IQが高い」というものだったため、「通常学級で問題ない」と勧められたのです。
私は息子の落ち着きのなさ、座っていられないこと、話を聞けないこと、一方的な話をすること、勝敗や順番へのこだわりが強いこと、切り替えが苦手こと、癇癪あることなどを説明しましたが、「通級指導教室も必要ないと思いますよ。現在の教育現場では、ある程度個別対応可能ですし、1年生になるまでに成長する部分もありますから」「IQが高いですし、配慮はいらないですよ。むしろ通級指導教室に1人だけ教室移動することを本人が嫌がると思いますよ」と、こちらが話す隙がないほど担当の方が喋り続けられて……。
このままいくら話しても聞き入れてもらえなさそうと感じた私は、その日は通常学級ということで話をまとめ、終了するしかありませんでした。
「何を考えてるか分からない」「強く叱っても効果がない」担任の先生の無理解に苦しんで
結局、その後再度事情を話して別の方と就学相談をし、最終的に「通常学級+通級指導教室利用」で決定となりました。しかし、入学した学校では大変なことが連発しました。
入学後息子について担任の先生に面談の時間をとってもらいました。そこで息子の特性について説明したのですが、担任の先生は「みんな同じように接します。特別扱いはしません」と宣言。息子を叱るときは強い口調だったそうです。
「学校=怒られるところ」となってしまうも、真面目な息子は『学校には行かなくてはいけない』ということを守ろうとしました。ですが、校門の中に入ると不安感が押し寄せ癇癪を起こすようになってしまったのです。通級指導教室の先生は寄り添ってくれましたが、担任の先生と連携をとっていたのかは分かりません。
その後息子は授業中も癇癪がでるようになり、担任の先生から「何を考えてるか分からない」「強く叱っても効果がない」と言われるようになりました。
ここにいては息子がつらい思いをするだけだと感じるようになり、私は毎日悩んで泣く日々でした。
『追い出されてしまった』癇癪を起こさず静かに涙を流す息子の姿
そんな時、担任の先生から面談をしないかと提案され承諾すると、校長も同席すると言われました。当日は最近の様子や問題行動などの報告を受けたあと、ほかの保護者の方からのご意見もあるなどと言われながら、最終的に特別支援学級を見学に行ったらどうかと提案されました。
息子は「転校する」ということにとてもショックを受けていました。学校でみんなと一緒に授業を受けることが楽しみだったので、『適応できなかった』『追い出されてしまった』『先生に嫌われてしまった』というような気持ちがあったと思います。本当に嫌なことは態度や口に出さない息子。転校を告げた時は癇癪を起こすこともなく、騒ぐこともなく、ただ静かに話を聞いて涙を流していました。
私が「ごめんね」と言うと、「大丈夫だよ。泣いてないよ」と言われました。その姿が忘れられません。
就学時の選択に後悔。わが家の場合は「先」よりもまず「現在」に目を向けたい
転校し所属するようになった知的障害特別支援学級では、受け入れてもらえているという感覚が息子にも感じられるようで、先生にたっぷり甘えさせてもらいながら通学しています。宿題を嫌がったり、できなかったことや勝敗などで騒いでしまうことは多々ありますが、ひどい癇癪はなくなりました。行き渋りも全くなくなり、楽しく通学しています。
先生方も不適切な言動はしっかり指導してくれますが、その行動は愛情たっぷりです。息子にはとても合っている環境だと思うので転校してよかったと思っています。
ただ、今の私は後悔しかありません。最初から特別支援学級を選んでいれば、息子をたくさん傷つけることはありませんでした。通常学級に在籍することが息子にとってどのくらい負担になるか考えが及ばず、特別支援学級に行ったら選べる進路が少なくなるのではないかと先々への心配を優先した結果、息子につらい思いをさせてしまいました。もっとよく考えて入学先を考えてあげていれば、今抱えている問題ももう少し良い方向に進んでいたかもと思うことばかりです。
今は先のことよりも息子の「現在」のことを考えていきたいと思っています。
イラスト/志士ノまる
エピソード参考/わかめ
(監修:森先生より)
わかめさん、お子さんの支援につながるまでの体験談を聞かせてくださってありがとうございます。 発達の偏りでお悩みの方の中には、高IQのために障害に気づきにくかったり、困っていても支援につながりにくかったという方が少なくありません。
「IQが高いのだから配慮はいらない」と思われて必要な支援を受けられないと、問題が起きた際に周囲から頭ごなしに怒られてしまい、学校そのものに苦手意識を持ってしまう、ということにもなりかねません。 また、学校内での支援を受けられても、担任の先生との連携がうまくいかなかったり周囲の理解が得られないと、つらい思いをすることもありますよね……。理解のない環境で生きづらさを感じ続けて、二次障害につながってしまうケースもあります。 ただ、学校に入学して生活を送るまでは、担任の先生やクラスメイトの雰囲気などの環境によるところが大きく、実際のところどうなるかわからない部分は大きいのではないでしょうか。
わかめさんがお子さんの様子をしっかりと見て、学校や支援機関に相談を続けていたからこそ、今の支援につながることができたのです。素晴らしいことではないでしょうか。 保護者の方が、自分のつらい気持ちを受け入れてくれる、ベストな道を手探りでも探してくれるということはお子さんに伝わります。それはお子さんの自己肯定感につながるでしょう。 これからもお子さんの「現在」に目を向けて、その都度その都度最善の選択肢を探していけるように願っております。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。