贅を尽くして建てられた登録有形文化財「旧岡田邸」で食べる手打ちそば【旭川】
JR旭川駅からタクシーで7分ほど。旭川の中心部からほど近い5条通16丁目にある「旧岡田邸」は、国の登録有形文化財に指定されている貴重な建造物です。
現在は「動態保存」という考え方で、蕎麦と料理が楽しめるお店『おかだ紅雪庭』として活用しながら大切に守られています。
国の登録有形文化財指定「旧岡田邸」
昔の旭川には十数社もの酒蔵があり、「北の灘」と呼ばれるほど日本酒造りが盛んでした。
北海道を代表する銘柄の一つ「北の誉」も、明治40年から旭川支店で日本酒の醸造を行っています。
この「北の誉」の創設者の一人、岡田重次郎が自宅として建てたのが、現在も5条通16丁目に残されている「旧岡田邸」です。
「旧岡田邸」が建てられたのは、今から90年以上も前の昭和8年です。
「見積りの無い建て方」と呼ばれた贅を尽くした建物で、完成までには2年の歳月を要しました。
歴史的にも芸術的にも価値が高いことから、平成24年に国の登録有形文化財(建造物)に指定されています。
贅を尽くした見積もりの無い建て方
正面玄関には当時としては珍しい外国製のステンドグラス、3メートル以上ある高い天井にはクリスタルのシャンデリア、階段には西日を美しく見せるための銅が入ったガラス窓、和室には精巧な細工が施された欄間など。
当時の内装やインテリアが、ほとんどそのまま残されていて、至る所に「本物」を見ることができます。
各部屋にはスイッチ式の照明、地下室にはラジエーター式のボイラー室があり全館スチーム暖房という、昭和初期としては夢のようなお屋敷です。
応接室として使われていた部屋に置かれているピアノは、昭和11年にヤマハが製造したもの。鍵盤には象牙が使われていて、家が1軒建つほど高価なものだったそうです。
皇室の方もご宿泊された旭川の迎賓館
2階にある広い和室には、昭和9年と昭和13年に皇室の方がご宿泊されるなど、「旧岡田邸」は旭川の迎賓館的な役割も担っていました。
部屋の前の廊下には、ご宿泊された閑院宮春仁殿下と賀陽宮敏子妃殿下が、岡田重次郎家族と一緒に正面の玄関前で撮影した写真が飾られています。
岡田重次郎から三代に渡って岡田家の自宅として使われた「旧岡田邸」ですが、平成15年に京都の資産家が所有することになり、取り壊しの危機を迎えます。
そこで旭川や札幌に住む有志が、「旧岡田邸」を守るために「旧岡田邸200年プロジェクト」を発足、財団を立ち上げます。
平成23年に財団で「旧岡田邸」を買い取りました。
建物を楽しみながら味わう手打ち手切りの本格蕎麦
現在は「旧岡田邸200年財団」が、建物に新しい息吹を与え活用しながら未来に残すという「動態保存」という考え方で、蕎麦と料理が楽しめる「おかだ紅雪庭」を運営。
当時、応接室として使われていた部屋などの貴重な空間で、職人が毎日手打ち、手切りする本格的な蕎麦や会席料理を味わうことができます。
最近では、海外からの観光客も多く訪れるなど、満席や蕎麦が売り切れる日もあるので、予約してから利用するのがおすすめです。写真は道外や海外のお客さんに人気の「海鮮もり天そば」。なお、夜の営業は完全予約制です。
「旧岡田邸」は、別名「紅葉館」とも呼ばれていました。窓から見える落葉樹を巧みに活かした美しい日本庭園も見どころです。晩秋から初冬にかけては、「おかだ紅雪庭」の名前の由来となった真っ赤な紅葉の上に積もる真っ白な雪の景色が楽しめます。
「旧岡田邸」の建物と庭園の魅力をより多くの人に知ってもらおうと、市民有志の実行委員会が中心となって、毎年写真コンテストを開催。昨年で第10回を迎えたコンテストの入賞作品は、アルバムに整理されて応接室に置かれており、自由に見ることができます。
「旧岡田邸」は国の登録有形文化財に指定されている貴重な建造物ですが、入館料は不要です。
「おかだ紅雪庭」のおいしい蕎麦や料理を味わいながら、歴史ある建物を楽しむことができます。
今回、お話を伺ったのは財団の代表理事で「おかだ紅雪庭」の女将の高橋富士子さんです。手の空いている時には、建物の中を案内してくれます。歴史や建物に興味のある方は、ぜひお願いしてみてください。
おかだ紅雪庭
所在地:北海道旭川市5条通16丁目(JR旭川駅からタクシーで約7分)
電話番号:0166-22-5570
営業時間:昼の営業 午前11時30分~午後3時
夜の営業(完全予約制)午後5時30分~午後9時30分
定休日:水曜日
駐車場:あり
(上記の情報は記事作成時点でのものです。
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