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<インタビュー>“クラシックファン”甲斐翔真が語る、自身初のオーケストラコンサートへの想い

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甲斐翔真

ミュージカル界で躍進を続ける甲斐翔真が、ビルボードクラシックスで初めてのオーケストラコンサートに挑戦する。今年再演となった『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』で主要キャストのひとりであるクリスチャン役を務め、ミュージカル『next to normal』のゲイブ役や、来年予定されているミュージカル『キンキーブーツ』ではローラ役への抜擢が発表されるなど、その勢いは増すばかりだ。そして、甲斐の一番の趣味はクラシック鑑賞だという。ミュージカルとクラシックを愛する甲斐が、フルオーケストラとの融合で新たな魅力を届ける。また、スペシャルゲストに、小池徹平、愛希れいか(ともに東京公演)、城田優、昆夏美(ともに京都公演)を迎え、夢のコラボレーションにも期待が高まる。オーケストラコンサートへの思いを聞いた。

ーーオーケストラコンサート開催が決まってどんな思いですか?

まずは、オーケストラ自体が好きなんですよ。ミュージカルやジブリでオーケストラに触れてきて、ここ数年クラシックのコンサートにも自分で行くようになって、いつかこの大きなオーケストラを背負ってコンサートをできるようになったらいいなと思っていたら、ありがたいことに思ったよりも早く機会に恵まれました。ただただ楽しみですし、本当のことを言うと、歌いたくないんです。セットリストを勝手に決めて、僕が聴きたい演奏を、ただコンサートとしてやりたいんですが、残念ながら歌わないといけないので(笑)。

――いつもミュージカルをご覧になっているお客さまにはどんなことをお伝えしたいですか?

いつもミュージカルをご覧になるお客さまは、クラシックコンサートに行ったことのない方のほうが多いと思うんです。ミュージカルのオーケストラを聴いたことがある方はいらっしゃっても、コンサートホールでしっかりとしたフルオーケストラを耳にすることがなかなかないと思いますので、皆さんにオーケストラの魅力も伝えていきたいと思っています。オーケストラの魅力に気づいてほしい気持ちのほうが大きいかも知れません。

――甲斐さんのプレゼンの機会なんですね。そういうお仕事もできますね。

そうですね(笑)。先日、某番組でピアニストの清塚信也さんとご一緒させていただいた時に、「素人だからこそ素人にクラシックを伝えられるんじゃないか。クラシックを伝えていきたいんです」と言ったら、「それは俺の仕事だから」と怒られました(笑)。でも本当に素人だからこそ伝えられる魅力もあるんじゃないかと思いますので、そういう意味では今回本当にいい機会だなと思います。

――オーケストラの魅力について、ぜひ甲斐さんの言葉でお聞かせいただけますか?

今回は僕が歌わないといけないので、スピーカーなどもついてしまうのですが、あれだけ大きなホールの中で、本当はホールの反響を使って、生音で音楽を紡いでいきます。クラシックは新曲がないじゃないですか。数あるいろんな人たちが演奏してきた曲でも、その場所や人や国や指揮者によって、何もかもが違ってくる面白さや、スピーカーを通さない生感がいいんですよね。まさに、今出ているその音を聴く、そこが魅力的だと思いますし、自然界の音ではないですが、人間ってここまで美しい音を作り出せるんだというすごさも魅力ですね。

――甲斐さんは、どなたかのフルオーケストラとのコンサートを聴きに行かれたことはありますか?

歌のあるソロコンサートはありませんが、ガチのテノール歌手とかでしたらあります。もちろんマイクも使わないクラシックコンサートです。もしかしたら、今回僕もマイクを使わないかもしれません。

――ホールに甲斐さんの生声が響く機会があるかもしれないですね。

ミュージカルではその機会がないじゃないですか。絶対にマイクがついていますから。生歌や生声をお届けできる機会はなかなないので、可能性はありますね。今思いつきました(笑)。

甲斐翔真

――オーケストラの魅力に初めて気づいたのは、どんな瞬間でしたか?

ミュージカルの舞台で、奈落にオーケストラピットの皆さまがいらっしゃるのを聴いた時に、「うわ、なんてすごいんだ」という初めての感覚になりました。もともとアーティストのライブに行くのは好きで、生で聴くということは好きだったんですが、楽器、オーケストラというものがこんなに素晴らしいんだと気づいたのは、初ミュージカルの『デスノート THE MUSICAL』の時です。生まれて初めて間近にオーケストラサウンドを聴いた時に、「こんなすごい世界があるんだな」と気づき、そこからいろんなクラシックの曲を調べていたら、ラフマニノフに出会いました。

――出会う作曲家がマニアックというか、玄人というか。

モーツァルトとかじゃないんですよね。すごく美しい曲で、交響曲第二番第三楽章のアダージョ(ラフマニノフ)です。そこからハマっていき、今沼にいるという感じです。

――きっと甲斐さんにとっての大切な、大きな趣味なんでしょうね。

打ち合わせでも、普通にクラシック談義をしていましたね。

――沼にいる目線で、構成などを考えているんですね。

オーケストラが素晴らしいので、ぜひ来ていただきたいですね。オーケストラという大きな規模のもとで歌を歌えるということ、ミュージカルの曲を歌えるということは、皆さんすごく喜んでくださると思います。あの曲をオーケストラで聴けるのかと思われるのではないかなと。オーケストラのアレンジではないものをオーケストラ用に編曲してお届けすることも考えているので、楽しみにしていていただければと思います。

――例えばロックな曲が、オーケストラになったり?

そうですね。僕も楽しみです。

――選曲は当日までのお楽しみということですが、どういう風に選んでいますか?

まずは僕が初オーケストラコンサートということで、お客さまも分かりやすい、ザ・オーケストラを考えています。オーケストラのすごさが分かりやすいような曲を、最初に皆さまにお聴かせしたいなと思っています。

――それはどんな基準なのでしょうか?

いつもミュージカルをご覧になっている皆さんが「ああ、これね」と誰もが知る曲です。そこで、「オーケストラってすごい!」と感動してもらいたいんです。聴いたことのある曲を生で聴くことによって、知っている曲だけれど、より素晴らしく聴こえるところを楽しんでもらいたいです。そして、いろんな意味でただ楽しんでいただければ。空気感の流れみたいなところは意識しつつ選曲しています。

――ご自身の出演作品ではないものも入ってくるんですか?

はい。せっかくのオーケストラなので、出演作には縛られずに。初めて歌う曲もあります。今から練習しないといけない曲もあります。どんな曲だろうと、想像しながら楽しんでいただければ。コンサートによっては先にセットリストを出すじゃないですか。僕はそれがあまり好きじゃないんです。観るときもやるときも、その場のサプライズ感というのが大事じゃないですか。セットリストが分かっていたら、イントロがかかっても「わ~っ!」とならないじゃないですか。最初から心の準備ができてしまう。それを防ぎたくて、今回はサプライズを大事にしています。あとは、日本のミュージカルでも、生オケではなく、録音音源で上演しているミュージカルも多いですが、そういう曲を生オケで演奏することを、今回は考えています。ミュージカルファンの方々にとっても「生でこれを聴けるんだ」という曲もあると思います。

――バラエティに富んでいるミュージカルの楽曲で構成されているんですね。

オーケストラに合った演出から始めようかなと思っていて、そう来たか、というのもあります。一幕の始まり方と、二幕の始まり方にギャップがあって、それもまた面白いと思います。

甲斐翔真

――豪華な4名のゲストがご出演されますね。

この方だったらきっと素敵に歌ってくださるだろう、というイメージでお声がけさせていただきました。本当におこがましいですが、僕が楽しく一緒にやれるなという皆さんで、スターの方々です。女性ゲストのおふたりとは共演していますが、男性ゲストのおふたりとは舞台での共演経験はないので、夢の競演になるのかなと。ようやくデュエットが叶う曲も、なるほどと思っていただける曲も、やっぱり歌うんだと思われる曲もあると思います。

――それぞれの方への思いをお聞かせください。

ちゃぴ(愛希)さんは事務所の先輩です。『エリザベート』では、ちゃぴさんはエリザベートを演じていて、僕は息子のルドルフでしたが、楽しかったですね。舞台上でのキャッチボールが心地よくて。毎回毎回表情が違いますし、投げる球も返ってくる球も違うので、すごく印象に残っています。

――ルドルフとエリザベートが舞台上で出会うのは、エリザベートが宮殿に帰ってきた、あの瞬間だけですよね。

あの瞬間だけなんですが、だからこそ毎回強烈に脳裏に焼きついています。今回はどんな間柄でデュエットできるのかは、皆さんのご想像にお任せします。また母と子なのか、恋人なのか、愛人なのか……。いろんな関係性が想像できると思いますので、想像していただいて、本番では「やっぱりそうなんだ」と聴いていただきたいです。

――昆さんはいかがでしょうか。

昆ちゃんは、『マリー・アントワネット』でマルグリットとフェルセンでしたが、ふたりのシーンもありました。パワーがすごいですが、繊細な方なんですよね。すごくいろいろ考えていて、舞台に出たらドーンとやるというタイプの女優さんだと思うんです。だから今回のデュエットがどういう風になるのか、今、すごく楽しみです。ドラマチックな感じになりそうな気がしています。

――小池さんはいかがでしょうか。

遥か前に、実はドラマで共演したことがあるんです。『覚悟はいいかそこの女子。』という、中川大志くんが主演のドラマだったんですが、その映画版の先生役で出ていらして、僕が生徒役でした。まさかミュージカル界でつながるとは思いませんでした。本当に頼れる兄貴という感じで、今回は何を歌うんでしょうかというところです。

――何かミュージカルについて話したりしますか?

2020年に僕が出演した『デスノート THE MUSICAL』を観てくださった時に、ドラマでも面識がありましたので、当時から観てくださった感想をいただけました。「とにかくそのまま羽ばたいて、スターになってくれ。本当に(ミュージカルが)向いているからやり続けて」というメッセージをいただいて。そこから早4、5年。帝国劇場までたどり着いて、そのお言葉に従ってよかったなと思いますし、そしておこがましいですが、今回の自分のオーケストラコンサートにゲストでお招きすることができて、ある意味恩返しと言いますか、あの言葉がなければやっていなかったかもしれませんし、感動の再会です。自分のコンサートにお呼びできるというのは、ちょっと感動しちゃいますよね。すごく楽しみです。

――城田さんはいかがでしょうか。

直接は共演したことはないのですが、遥か前に、地球ゴージャスの『The Love Bugs』で稽古場に2回くらい見学に行ったんです。この仕事をはじめて間もない頃に、勉強としてマネージャーさんに連れて行ってもらったのですが、その印象が強いです。そこから、2018年のAAA(『Act Against AIDS』)で僕がハンサムライブの一員として出ている時に、三浦春馬くんと「闇が広がる」を歌っていて、その印象が強烈です。その時にLINEを交換するくらい仲よくなったんです。おそらく、AAAの打ち上げで話したのかと思うのですが、当時『RENT』のロジャー役が決まっていて、「今度ミュージカルやるんです。これから頑張ります」とご挨拶した記憶がありますね。そこからの仲なので、今風に言うと「エモい」ですよね(笑)。

――城田さんとはそれ以来、ミュージカルのお話をされたり、現場でお会いすることはなかったんですか?

2022年AAAで「闇が広がる」を一緒に歌う予定だったのですが、城田さんが体調不良で出演できなくて、その時は『エリザベート』の公演中だった古川雄大さんが助っ人に来てくださって歌いました。そのため、城田さんとはまだデュエットは叶っておらず、今回になります。

――城田さんとも、リベンジというか、夢が叶うというか。

そうですね。そういうドラマがある方々にお声がけさせていただきました。

――最後に、コンサートに向けて、お客さまへのメッセージをお願いします。

クラシックコンサートではないので、カジュアルな場所ではないですが、きっかけにしてほしいというのが僕のテーマで、皆さんにオーケストラに出会ってほしいです。気負う必要は何もないので、何も考えずにいらしてください。「生まれて初めてオーケストラを聴くんです」という方にも、本当にいい機会なので来ていただきたいと思っています。きっと、結構そういう方が多いと思いますので、同じ仲間だと思って来ていただきたいですし、何回も言いますが、きっかけにしてほしいです。会場でお待ちしています!

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