『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live "AVATAR 2024"』+『ReoNa ONE-MAN Concert "Birth 2024"』ライヴ・フィルム上映+リリースに寄せてインタビュー|音で、声で、映像で“あの日”の追体験を――
この夏放送開始のアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』のオープニングテーマに起用された新曲「End of Days」を、8月6日(水)にシングルとしてリリースすることが決まっているReoNa。アーティストデビュー5周年というアニバーサリーイヤーを経て、次の季節のステップを踏み出している。そして、そのアニバーサリーイヤー――いや、ReoNaという存在を語るうえで欠かせないのが、TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の劇中アーティスト・神崎エルザの存在だ。
6月1日、全国18都市20館にて上映されたライヴ・フィルム『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』『ReoNa ONE-MAN Concert “Birth 2024”』。ReoNaの音楽キャリアにおける「これまで」と「これから」をつなぐ、大きな節目となった2日間の公演を記録した映像作品であり、6月4日にはパッケージとしてリリースされた。
劇場では、5.1chサウンドで体感できるという豪華仕様。臨場感あふれる音響で、ステージ上のReoNaの姿、会場全体の空気までを楽しむことができた。改めてReoNaに、この2日間のことを聞いていく中で、ライブを共につくる演出チームやスタッフとの信頼関係や音へのこだわりが浮かび上がってきた。
【写真】エルザとの旅、まだ終わらせたくない――ReoNaインタビュー
この2本だったら映画館でも楽しんでもらえるかも、と。
──今回の上映タイトルが“ライブ・フィルム”というのも印象的でした。まさに映画のような作りになっているように感じたのですが、このタイトルにはどんな想いが込められているのでしょうか?
ReoNaさん(以下、ReoNa):今言われてハッとしたのですが、“ライブ・フィルム”という言葉自体は自分の中ではあまり意識してなかったんです。ただ、今回はライブドキュメントといいますか、これまでだったら映像には残さなかったような、最後のあいさつなど、カットせずに入れています。“その場にいた人がもう一度戻れる”、そして“その場にいなかった人には、その瞬間がどうだったのかが伝わる”ような、そんな仕上がりになったんじゃないかなと。
──ドキュメントならではと言いますか、"Birth 2024"でのMCも結構入ってますよね。
ReoNa:ワンマンコンサートで、ここまでMCが残っているのは初めてなんです。日本武道館でのライブ映像作品(『ReoNa ONE-MAN Concert 2023「ピルグリム」at日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~』)は、あの日、あの場所のとくべつにしたくて、MCは削ぎ落として、お歌を中心に構成しています。その後「ReoNaのライブの中でMCも音楽のひとつだよね、大切なパーツだよね」という意見があって、今回は残す形にしてもらいました。自分でも不思議な感じです。そこはひとつ、これまでリリースしてきた映像作品と違うところですね。
──MCが入ることで、その次の曲がより立体的に伝わってきますよね。言葉の合間の吐息や間も含めて、歌だけでは伝わらない体温みたいなものが映像に残っている感覚といいますか。
ReoNa:もう一歩、もう半歩、なんでこの順番でこのお歌たちを届けたのか、どんな思いで紡いだのか、そういったことをより感じてもらえたら良いなと思っていました。
──それを映画館で、というのはあらかじめ考えていたんですか?
ReoNa:ライブが終わってから話が本格的に始まりました。私だけではなく、スタッフさんたちも含めて、ライブ当日の手応えがすごくあって。良いものだからたくさん届けたいというか……“映像として残したいよね”っていう空気は、現場にいた全員が感じていた気がします。その果てに、映画館上映にたどり着いた感じです。映画館でこの2日間のライブを届けられることが決まったときに、“この2本だったら映画館でも楽しんでもらえるかもしれない”って、すごくワクワクしました。
──会場でサービス映像を観たときも驚いたのですが、映像でもさまざまなアングルからライブの魅力が伝わってきました。
ReoNa:そう言っていただけるとすごく嬉しいです。“濃ゆかったなぁ”と、改めて感じています。スタッフや関係者、たくさんの人たちが全力で作り上げたライブだったからこそ、“よくぞこの形にできたな”って、改めてチームのみんなに感謝しました。
──本当に圧巻のライブでした。エンドロールのクレジットを見ても、多くの方々の力が結集されているのが伝わってきます。
ReoNa:私もクレジットを見て、“こんなにも多くの人が関わってくれてたんだな”と実感して。ひとりでは絶対にできなかったことが、たくさんの力が集まることで、ああしてカタチになった。そのことにも、すごく大きな意味を感じています。もちろん、普段から顔や名前を知ってるスタッフさんがほとんどなんですけども、今回の映像には、私が直接会ったことのない方のお名前もあって。それだけ多くの方がこの2本のライブを映像にするために力を尽くしてくださったんだなって、噛み締めました。
──しかも今回は5.1chでの上映。これにはどのような意図があるのでしょう?
ReoNa:音響に関しては、実は私自身がすごく専門的に語れるわけではないんですが。レコーディングエンジニアの渡辺敏広さんがライブ当日の音、ライブ映像の音、そのすべてを手掛けてくれていて。今回の5.1chの上映は、その音作りを最大限に活かせる機会になったんじゃないかなと思っています。
──渡辺さんとの音作りも、気づけばもうずいぶん長くなってきましたよね。
ReoNa:トシさんとは、2019年の「Till the End」(『ソードアート・オンライン』原作小説刊行10周年記念テーマソング)以降、トシさんこだわりのアナログミックスで、楽曲制作を共に歩んできてます。そして「ReoNa ONE-MAN Live Tour 2022“De:TOUR”」からは、ライブにも入ってもらえるようになって。私はReoNa以外のアーティスト活動をしたことがないので、それがどれほど特別なことなのか、あまり自覚がないところもあったんですけども、本当にありがたいことだと思っています。
──ReoNaさんはライブならではの“生感”を強調する方向とは違って、あえて原盤のクオリティに近づける方向を大切にされています。でも、それが逆に、ライブだからこそ感じられる熱や空気を、よりリアルに浮かび上がらせているようにも思いました。そこがすごいなって。
ReoNa:ライブだからといって“違うものにする”のではなくて、むしろ“音源そのものをライブで再現する”というチャレンジにこだわっていて。ライブ演奏なのに、CDで聴いているような、でもちゃんと“その場で鳴っている音”として感じられる。その絶妙なラインをトシさんが作ってくれているんです。楽曲の構造や私の声の特性を熟知しているからこその音作りをしてくださっているというか……。そういう方がライブの音も担ってくれているからこそ、密度の高い、一体感のあるライブが生まれているのだと思います。
──シアターの音響環境で実際にReoNaさん自身が音を聴いてみたときはどういう印象がありましたか。
ReoNa:前の方の席だと、まるで音の渦の中にいるような感覚で、ライブの“熱”が直に届く。一方で、後方の席だと音の細かい作り込みがよりクリアに感じられて、“あ、こういうふうに構成されてるんだな”って、全体像が見えるような音になっている印象がありました。私がReoNaとしてステージに立つライブを、観客として疑似体験させてもらったような、不思議な感覚でした。私が参加したのは試写会だったので、拍手や声援はなかったんですけども、うっかり拍手しそうになってしまいました(笑)。それくらい、没入できる空間でした。
「AVATAR 2024」と「Birth」、それぞれのコンセプト
──ライブについては以前のインタビューでも振り返らせていただいてはいるのですが、改めてお話を聞かせてください。今回は2日間、それぞれにまったく違うコンセプトがありましたよね。
ReoNa:1日目は“神崎エルザ✕ReoNa”という形での“対バン”、そして2日目は久しぶりに“Birth”としてお届けするReoNa単独のライブ。それぞれ全く違うものにしたかったし、だからこその悩みもたくさんありました。でも、その違いを意識して分けたからこそ、お届けできたものもあったと思っています。
──1日目『神崎エルザ starring ReoNa ✕ ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』はReoNaさんが綴っている音声のみの動画日記「こえにっき」からはじまりました。CLUB CITTA'で開催された“ Re:AVATAR”のライブを思い出すような作りでしたね。
ReoNa:“AVATAR”と“Birth”も、今回が初めての形ではなく。“神崎エルザ starring ReoNa”としてデビューしてから、最初のライブが“AVATAR”でした(2018年7月25日/東京・赤坂BLITZ)。当時はまだ曲数もそんなに多くなかったですし、私としてのReoNaパートも3〜4曲くらい。その後の“Re:AVATAR”も同様、曲数という意味ではそこまでなくて。
でも3回目となった今回の“AVATAR 2024”では『ELZA2』のリリース前ではあったものの、10月のタイミングにおける“エルザの過去曲”をすべて聴いていただけるライブになっていて、さらに「Girls Don't Cry」のような新曲までお届けできるようになって、日笠陽子さんにもご登場してもらって。
──“AVATAR”を始めた当初、現在のような展開になるとは思っていましたか。
ReoNa:まさか“AVATAR”がここまで大きな展開になるとは思っていませんでした。“AVATAR”を始めた当初は、エルザの胸を借りるような感覚もあったような気がします。逆に言うと“神崎エルザ starring ReoNa”、ひとりとしてのワンマンライブではないというのが“AVATAR”の面白さなのかもしれません。
──言われてみれば、あくまでReoNaとエルザの対バンライブという形。“神崎エルザ単独のワンマンライブ”という形はまだないですね。
ReoNa:あくまで“エルザとReoNa”のツーマンというか、“ユニットではないけど、対になる存在”としてのライブとなっていて。だからこそ生まれたものもたくさんあるように感じています。
──日笠陽子さんの出演には驚きました。「もしかして?」と思うような瞬間もあるにはあったんですけども……。
ReoNa:アドリブで声を入れてくださっている瞬間もあったので、「いまのは?」と感じた方もいらっしゃったかと思います。そういう“揺らぎ”を感じてもらえたのも、結果としてライブならではの臨場感につながったのかなと。
──「日笠さんがいてくださったことが、私にとって本当に大きかったと思います」と、インタビューでもおっしゃってくれていました。日笠さんがいたからこそ、生まれたものもたくさんあったんだろうなと。
ReoNa:本当にそうでした。初めての試みが多かったので、ReoNaチームとしては暗中模索の状態が続いていて。台本やセットリストが少しずつ形になっていく中で、何かが足りない、まだ“ピース”がはまっていない、そんな空気がありました。でも、最後のリハーサルで日笠さんが実際に登場してMCをしてくださったとき、ふっと霧が晴れたような感覚がありました。“あ、自分たちがやりたいのって、こういうことだったんだ”って、ようやく輪郭が見えてきた瞬間でした。
しかも今回は東京ガーデンシアターという大きな会場。設備的にも自由度が高いぶん、逆に“何でもできるからこそ難しい”という壁にもぶつかりました。でもその中でチーム全員がフルパワーで向き合ってくれたからこそ、最後にピースが“ドンッ”とはまった、あの感覚があったんだと思います。誰もが真剣で、ひとつの目標に向かって走っていた。そのエネルギーが、今の“AVATAR”につながっているんだと、あらためて思います。
──前述の話とも被ってしまうかもしれませんが、そもそも、いわゆる“IP(キャラクター)アーティスト”とアーティストのツーマンライブという構成自体がかなり珍しいですよね。
ReoNa:そうだと思います。そもそもなぜこういった構成になったのか……いま振り返ってみると、その原点はどこだったか思い出せないくらいなのですが、その果てで、エルザに命を吹き込んでいる日笠さんの声と共にライブに出るという、今までにない体験をさせてもらって。普段のReoNaのライブではやらないことも、エルザの存在があったからこそ挑戦できたという感覚があります。日笠さんもおっしゃってくださっていましたが、“2人で1つ”という意識がとても強くて。“これは1人じゃできないライブだな”と思う瞬間がたくさんありました。
──さらに『SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』から始まった、ReoNaさんとしての道のりを思い出すような瞬間もありました。それだけ、特別な作品であるということが伝わってきます。
ReoNa:『SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』の放送が決まって、その直前の7月には『SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の再放送があって……7月の再放送の段階からもうワクワクしっぱなしだったんです。なんというか、2024年に再び『GGO』に向き合えることが、本当に嬉しかったんです。
それは私だけじゃなくて。チーム全体が“この作品に誠実に向き合いたい”と強く思っていたからこそ、(今年3月に行われた) “SQUAD JAM”まで走り抜けることができたんだと思います。12月に最終回が放送されて、その後、神崎エルザ starring ReoNaとして『ELZA2』を出して……(放送が)終わっても、終わりたくない。そんな気持ちもありました。その想いが、今回の映像化に繋がったのかもしれません。
今考える“守っていきたいこと、新しく踏み出しても良いこと”
──“Birth”のセットリストは悩まれたのではないでしょうか。
ReoNa:聴いてほしい曲は本当にたくさんあるけれど、全曲をやるわけにはいかないので、そこから厳選する作業は、きっとこの先どんなライブでも続くんだろうなって思っています。
毎回チームのみんなで悩みながら決めているのですが、今回の“Birth”では、あえて“文脈を無視して歌いたい曲”を選ぼうという枠も作ったんです。そのときに真っ先に浮かんだのが「原作者」でした。何も考えずに、でも本能的に“今この曲を歌いたい”って思えた曲です。
──私個人としては、「いかり」「原作者」の流れがとても好きで。その次につながるのが「トウシンダイ」でした。「トウシンダイ」の主人公も、この場につれてきてもらって喜んでいるでしょうね。
ReoNa:「トウシンダイ」が生まれた頃は、こうして“Birth”という未来にたどり着いて、一緒にステージに立てるとは……18歳当時の私は思いもしなくて。きっとあの頃の自分が見たら驚くだろうなって思います。“Birth”はまさに「絶望年表」のように、ReoNaという存在がどうやって生まれて、どうやってここまで歩いてきたのか、その歴史のようなものも詰まっているんじゃないかなと思っています。何かが生まれ落ちた日であり、生まれていく場所でもあるのが、“Birth”なのかなと。
──「絶望年表」が更新されていく場所でもあるのかもしれないですね。あの楽曲のライブ演出自体もとても印象的で、何度でも見返したくなるような強さがありました。
ReoNa:「絶望年表」は自分の弾いたギターにミュージシャンがただただ、寄り添ってくれる楽曲ですけども……それに寄り添ってくれるミュージシャンの温かさが本当に伝わる映像になっています。一方で、「生命線」ではとんでもないレーザー演出が炸裂している。そのコントラストも含めて、1曲1曲に違う風景があって。
──「生命線」「Let It Die」などの演出に、現場の積み重ねが色濃く反映されているように感じました。
ReoNa:「生命線」のレーザーは、私と一緒に「ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2023 “HUMAN”」から歩んできてくれた照明スタッフの方が、“これ、かっこいいでしょ”って、集大成のような気持ちで照らしてくれているように感じました。あと、「ガジュマル」の演出も個人的にとても気に入っていて。照明が“ガジュマルの木”になっているんです。ああ、ニクイことをしてくれるなあ、って思う瞬間がたくさんありました。
それと、今おっしゃってくださった「Let It Die」は、ライブで歌いがいのある曲なんです。だから、この“Birth”の2曲目でお届けできたことというのは、1曲以上の意味があるように感じています。アルバムの中に収録されている1曲ですけど、そのずっとずっと前からライブで歩んできた曲で、二度として同じ「Let It Die」ってなくて、リハと本番すら違う。その日の温度、声、音で出来ていく。「ライブだとこうなるんだ」と思ってくださったら嬉しいなと思っています。
──その一方で、「シャル・ウィ・ダンス?」からの怒涛の流れは、映像で見がいがあるものですよね。
ReoNa:私の本番の記憶が薄くなっているブロックですね……(笑)。皆さんに自由に踊っていただきました。ReoNaのライブはすごく静かな曲も多いので、だからこそ解放されるようなパートだったと思います。
──少し話は逸れますが、ReoNaさんのライブ自体、静かに見守っている方が多いですよね。自然とそういったスタイルが定着していった印象があります。
ReoNa:“立って盛り上がりたい人は立っていいし、座ってじっくり聴きたい人は座っていていい”というのが、私のライブのスタート地点なんです。ライブハウスで
やっていた頃は、スタンディングで2時間近く、静かな曲ばかり聴いてもらっていた時期もありました。基本的には自由に楽しんでもらいたい、って思っているんですが、でもそれって実はすごく難しくて。たとえば、目の前の人が立ったら、自分も立たないと見えなくなってしまう。今はセットリストの“ドライブ感”を意識して構成しているところがあります。
──セットリストにあえて緩急をつけることで、それぞれの聴き方で楽しめる流れにされているということですね。
ReoNa:“自由に楽しんでもらいたい”。言うことは簡単だけど、一人ひとりに自由に楽しんでもらうためにはどうすれば良いのか……そこは今も悩み中ですね。
──ライブ”と“コンサート”、あるいは“フェス”やふあんくらぶ限定ライブなど、規模も形も演出も多様化してはいるものの、「一対一で寄り添いたい」という基本の気持ちは変わってないからこそ、悩むところなんだと思います。
ReoNa:そこはずっと変わらないですね。踊りたい人もいれば、踊りたくない人もいるかもしれないし、ペンライトが光っていたら気になる方もいるかもしれない。もしかしたら全員の気持ちに寄り添うことは難しいかもしれないんですけど……やっぱり、それでも寄り添いたいなって思います。
──変わらず大切にしている想いがある一方で、周囲の声や変化も柔軟に取り入れて、ライブを進化させていっているところがReoNaさんのライブのすごいところですよね。
ReoNa:いろいろな出会いがあって、いま一緒にライブに取り組んでいる方々の「こうしたら良いんじゃない」という意見も今回はたくさん取り入れさせていただいたんです。変えずにずっと守っていきたいこと、続けていきたいことと、新しく踏み出してみてもいいのかもしれないこと。そのバランスを探りながら、一つひとつのライブをつくっています。
──さきほどエンディングのクレジットのお話がありました。そのいろいろな出会いがあってこその、あの人数で。ぜひ最後まで、余すことなく噛み締めてほしいですね。
全ての出会い、別れにありがとう
──“AVATAR”“Birth”の2日間で約40曲。ある種現段階における“ReoNaベスト”的なライブとも言えるのではないでしょうか。
ReoNa:確かに、そんなライブだったと思います。2日間を通して観てもらえたら、きっと“ReoNaってこういうアーティストなんだ”って知ってもらえるんじゃないかなと。そういう意味でも“プレイリストのようなライブ”だったなって思います。「私たちの讃歌」の歌詞の〈全ての出会い、別れにありがとう〉という言葉を、確かめていくような……。
──とても印象的だったのが、“Birth”では「何のために吸って吐いてるかわからないこの息でお歌を紡いできた」といった言葉がありました。“Birth”のセットリストには、そういった問いが込められていたように感じます。
ReoNa:“Birth”は、ReoNaとしてのこれまでの歩みに加えて、自分自身が人間として歩んできた20何年間の人生の時間も重ねていたように思います。1曲目に選んだ「BIRTHDAY」は、“生きる理由”なのか、“死ななくてもいい理由”なのか……自分でもまだ手探りだった時期のことを、堀江翔太さんに楽曲にしてもらっています。
ずっと逃げ続けてきて、でもその先でアニメや音楽と出会って、今がある私と、どこかで何かから逃げてきた方がいるかもしれない“あなた”と出会えた“Birth”。そう思いながら、客席にいる一人ひとりのお顔を観たときに……何度も何度も“止まっちゃえばいいのに”って自分を呪ってきた呼吸で、それでも吸って吐いて、お歌を歌って、これだけの人と出会えたということに、改めてグッときてしまいました。
──ライブ後、ReoNaさんがステージから客席をじっと見つめていた時間がいつもより長かったような気もします。
ReoNa:やっぱり、ステージから見るあの景色って、何にも代えがたい特別だなって思います。
──今回の映像では、ReoNaさんの見ていた景色を共有できるシーンがいくつかあり、“ああ、こうやって見えてたんだな”と感じる場面がありました。逆に、ReoNaさんからは普段、観客側の景色は見られないわけで。
ReoNa:そうなんです。ReoNaのライブを、みんなと同じ目線から見られるというのは、本当に特別なことだなと思いました。同じ時間を同じ空間で過ごしていても、やっぱり私はステージの上にいて、みんなは客席側にいる。だからこそ、今回この映像で“みんなと同じ目線”になれたことに感動がありましたし、一足先に劇場でこの作品を観させてもらったときも、とても胸にくるものがありました。ときには「ああ、私ってこんな表情をしながら歌っているんだな」とハッとする瞬間もありました。
──ReoNaさんの笑顔が多く映像に抜かれていたのも印象的だったんですよね。それを見られるのも映像ならではで良いなと。
ReoNa:恥ずかしい……(笑)。ライブはお客さんと鏡になる瞬間があるんです。泣いているかたを見つけるとその涙に引っ張られそうになったり、楽しそうにしてくれているとつられて笑顔になったり。自分でも意識していない表情の変化がそのまま映像に残っているところを見つけると、ちょっとこそばゆくもあり、うれしくもありました。
──今回のステージは。ある意味、節目とも言えるライブでありながらも、まだ続いていく物語の途中でもあることも感じさせます。最後にこれからについても教えてもらえますか。
ReoNa:今振り返っても“AVATAR”と“Birth”は自分にとってターニングポイントだったなって思います。“これから自分はどう進んでいくんだろう?”という……まだ答えはないけれど、それを考えるきっかけにもなったライブでした。その後、“SQUAD JAM”で久しぶりにスタンディングのライブをやって、そしたら(アコースティックの)“ふあんぷらぐど”のような静かなステージが恋しくなったんです。不思議ですね。今、“ふあんぷらぐど2025”に向けてすごくワクワクしているところです。そして、先日3rdアルバム「HEART」の発売と「ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2025 “HEART”」の開催も発表されました。8月6日には11thシングル「End of Days」もリリースされます。
……私は、本当に未来のことを考えるのがなかなか上手にはなれないんですが……毛蟹さんがくれた〈透明な過去に 不透明な明日に〉という言葉通り、私は今と過去、何度も何度も後ろを見ながら前に進むみたいな生き方をしてきた人間が、ガーデンシアターという場所にたどり着くことができて。さらに今回のライブ映像がこうして形になったことは、すごく大きな意味を持っている気がします。これからも、本当に少しずつではありますが、そうやって未来に進んでいけたらいいなと。
インタビュー・逆井マリ