『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』Dr.ゼノ役 野島健児さん&スタンリー・スナイダー役 遊佐浩二さんインタビュー|千空たち科学王国に立ちふさがる闇の科学王国。大人ならではの合理的な考えが垣間見える
アニメ『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』最終(ルビ:ファイナル)シーズン第1クール最終回が目前!
人類石化の黒幕・ホワイマンの本拠地“月”を目指す千空たちはゼロから宇宙船を作るビッグプロジェクトへと乗り出し、その第一歩としてアメリカ大陸に向かいます。しかし、その先には新たな脅威が待ち構えていました。
物語がさらに盛り上がりをみせるなか、闇の科学王国よりDr.ゼノを演じる野島健児さん、スタンリー・スナイダーを演じる遊佐浩二さんにインタビュー! 作品の印象はもちろん、クラフトにまつわるトークも伺いました。
【写真】『Dr.STONE』ゼノ役・野島健児&スタンリー役・遊佐浩二インタビュー
ありえるかもしれない世界
ーー作品の世界観や原作をご覧になった感想をお聞かせください。
野島:最初は「石になりたくねぇ〜」と(笑)。
一同:(笑)
野島:何千年もの間、意識を保ち続けるなんて恐ろしいことです。でも、それが何故起きたのかと考えた瞬間から最後まで読まざるを得なくなったといいますか、それくらいのめり込んでしまいました。自分がもし石になったらどういう風に過ごすんだろうと考えさせられてしまうんですよね。
最初は突拍子もないように感じましたが、どこかリアリティがあって。僕自身、趣味が畑で、自然科学の中で生きています。畑と科学は切っても切り離せないもので、植物はもちろん自然科学ですし、植物が育つための窒素、リン酸、カリウムとか土の中にも科学があって。この作品はそういったリアルな科学を扱っているからこそ、石化だってありえそうに感じますし、面白い角度から科学を見つめているんだなと思いますね。
遊佐:僕がこのような状況に陥ったら絶望してなにもできないんじゃないかと思いました。でも作中の彼らは自分たちでクラフトして、この先どうやって生き延びるのかを考えているので、非常に強い人ですよね。もちろん石化はしたくないですが、全文明が滅びるということはありえなくもないのが今の世界ですから、そういった意味でも勇気をくれる作品だと思います。
野島:究極の自給自足をしていますよね。
遊佐:うんうん。僕は服すら作れないよ。
野島:僕は辛うじて野菜が作れるくらいです。あとは食べられる草を探すくらい(笑)。
ーーあの世界で畑を作れるのはかなりの強みでは?
野島:そうですね。ただ、土作りはすごく大変なことです。畑を作り上げた千空たちは強い人だなと思います。
遊佐:3000年経っているから、文明が傷つけた土壌も少しは良くなっているかもね。
野島:そう思うんですけど、実は雑草が生えることで苔ばっかりになって土壌としてダメになってしまうんですよ。それには虫とか動物も必要になってきて。
ーーそうだったんですね。もともと農業がお好きだったのですか?
野島:農業が好きになったのは最近です。子供の頃もやっていましたけど、当時は山奥に住んでいて、なにをするにも自分たちで作るほうが早かったからという理由でして。でも、それはお芝居も一緒で、実際に見に行くのはハードルが高いので、友達と脚本を書いたりしました。
遊佐:友達をクラフトしたの?(笑)
野島:(笑)。近所で友達をクラフトして、それからミニ演劇を親たちに見てもらうみたいなことをしていました。科学ではないですけど、そういうクラフトもしていましたね。遊佐さんはクラフトをしていましたか?
遊佐:全くクラフトしてなかったですね。昔は電子ブロックで組むラジオとか、科学的なものをクラフトできる雑誌の付録とかありましたけどそういうのも触れていなくて。もちろん科学の授業は受けていたんですけど、「実験室の椅子に背もたれがないのはいざという時にすぐ逃げられるため」みたいな無駄な知識をクラフトするだけで(笑)。
野島:「コックさんの帽子が長いのは、いざという時に水を汲んでかけられるように」みたいな話ですね。
一同:(笑)
野島:あと、僕は梅を漬けているんですけど、梅はそのままだと青酸が入っている毒だけど漬けることで毒性がなくなるんですよね。本編でもガムシロップを作っていて、そこは近しいものを感じました。
ーー作品を通して、科学についての新たな発見、考えに変化などはありましたか?
野島:個人的に科学はケミカルなものという印象があったんですけど、実は日常にナチュラルに入り込んでいるんだなって。今、ちょうど春菊を育てているんですけど、だんだん双葉が出てきて、そこから光合成をして、土の中とか空気中で呼吸して二酸化炭素とか窒素をタンパク質に変化させて、という流れは完全に科学なんですよね。それだけ日常の中に科学があるんだと実感しました。
ほかにも、おまんじゅうを作ったとき、皮を膨らませるために膨らし粉を入れたんですけど「なんで膨らむんだろう?」って。そういう風に、この作品を通して日常にある科学の見え方が変わってきて、本当に毎日が「唆るな」と思いました。
遊佐:僕は科学的な素養がないんですけど、この作品に触れて「知っておかないと生きていけないな」と思いました(笑)。個人的にはバニラをクラフトできることに驚きましたね。というように、生きるための知恵としていろいろなことを知っておくのは良いことだと考えるようになりました。
ゼノとスタンリーの信頼関係
ーー演じられるキャラクターの印象をお聞かせください。
野島:最初にゼノのグラフィックを見たときはすごく悪そうな雰囲気を感じましたが、原作や台本を読んでいくと彼には彼なりの正義があるんだなと。僕としては悪だとは思わず、自分の正義を貫いているキャラクターとして演じさせていただいています。
そのうえで、血も涙もないような性格はどうやって生まれたんだろうと。それはきっと天才ゆえの孤独みたいなものを心の中に抱えながら生きてきているからで、人に対する接し方だったり自分がトップに立とうとする想いみたいなものも幼少期の経験や育ちの過程が原因になっているのかなと考えたりしました。
ほかにも、彼は付け爪をしていますが、それは自分の心を守るためのアイテムなんじゃないかなとか。ゼノはビジュアルから性格を感じられるキャラクターだなと思っています。
遊佐:スタンリーを一言で表すとプロフェッショナルですね。非常にクールですし、確実に仕事をやり遂げる、そしてゼノに絶対の信頼を寄せている、そこが彼のすべてかなと思います。多くは語らないですけど、頼まれたことを成し遂げるためにはどんな手段も使うところは冷徹であったり、質実剛健、有言実行といいますか、そういったものでできたパーフェクトな人です。
ーーあまり喋らないキャラクターですが、少しのセリフで人間性を醸し出したり?
遊佐:そうですね。難しいところではありますが、そこはトーンを調整したりですね。最初にキャラクターを拝見したときは唇がつやつやで美しかったので女性かと思ってしまいましたが、中身は非常にハードで、多くを語らない、そこにゼノから信頼を受けているという頼もしさもあるので、それらを表現するために気を使いました。
ーーお互いのキャラクターの印象をお聞かせください。
野島:絶対的に成功をしてくれる、科学者で言うところの“再現性の高い存在”なので、そこに対する信頼があります。また個人的に、石化するときにスタンリーがゼノを庇おうとしていたところは人間らしさみたいなものを感じて。あのシーンにふたりの関係性のすべてが詰まっていましたし、やっぱり信頼し合っているんだろうなと思いましたね。
遊佐:スタンリーはプロフェッショナルとお話しましたが、Dr.ゼノもプロの科学者なんですよね。もっと言えば、ルーナは別ですけど、僕らのチームはみんなプロです。だから、勝ちます(笑)。
一同:(笑)
遊佐:そんな意気込みでやらせていただいています(笑)。
ーー実際に掛け合った感想をお聞かせください。
遊佐:Dr.ゼノはこうなんだなと思いました。そもそもいろいろなイメージがあるキャラクターなんですよね。年齢は不詳気味ですが、頭を使っているからか老けた感じもしなくて。
野島:生き生きしていますよね。スタンリーは見た目はもちろん、仕事に対しての美的感覚が印象深くて。演じながら、その華麗な仕事ぶりに美しさを感じていました。そして、実際に掛け合う中、男性にも女性にもつかないルックスが遊佐さんの声にぴったりハマっていって「スタンリーはこの声だ」と。
遊佐:イメージが湧かないよね。自分としても原作を読む段階であんまり声が入ってこなかったんですよ。
野島:原作を読んでみて自分の中に声が響くことがあるんですけど、スタンリーはなかったですね。僕としてもどうやって役を作っていくのか気になったところです。
ーーおふたりのキャラクターからは内なる狂気や黒いものを非常に感じられました。
遊佐:黒と言えば黒なんですけど、ふたりとしては正しいと思ったことをやっているだけなんですよね。
野島:正義感がありますよね。
遊佐:もともとの文明で発展を妨げている人たちをスポイルして新しい文明を作ろうとしているわけで。
野島:考え方に共感できるところがたくさんありますよね。新しいものを生み出すゼノのような人がいれば、それを利権争いとかで排除しようとする人たちもいて。そういう非合理的なところで苛立ちを感じていたからこそ、彼らは自分の正義を貫いているんだろうなと思いますね。
遊佐:本編で千空たちは未来を感じると言いましたけど、それは大人の世界を経験していないからこそという部分があるんですよね。大人になると「ぐぬぬぅ!」と言いながら生活するわけじゃないですか(笑)。
野島:本当に歯を食いしばりながら生きることになりますね(笑)。
遊佐:それがなくなったわけですから。そうなれば、もう、選ばれた人たちで良い世界を作ろうとしてなにが悪いんだと。
野島:結局、ゼノもスタンリーも天才が故に孤独になっちゃったんですよね。学校でいつも100点を取ったとしても、徐々に「あいつは天才だから」と努力を認められないことってあると思うんです。そんな中、ジャンルは違えど天才同士のふたりには信頼関係が芽生えますし、親友にもなれるんじゃないかなって。あとは「自分たちが自由に研究をする」という思いも根本にはあるんでしょうね。
遊佐:ゼノの意見に賛同できない人もいたでしょうね。
野島:そうですね。そういう非合理的なものに嫌悪感を募らせていたと思います。
遊佐:それでも彼らは切磋琢磨し続けてプロフェッショナルにたどり着いたんですよね。
野島:自分たちの居場所を守っているんでしょうね。そのために強くしているわけで。
遊佐:みんな、居場所を守るためにマシンガンを放っているんですよね(笑)。
野島:そうです、そうです。付け爪もそのために必要になったわけで(笑)。
ーー千空たち目線では強大な敵として映りますが、演じるうえでは悪い人たちという認識はなく?
野島:そうですね。演出的に悪役のような見え方が必要だったりしますが、僕としては悪という認識ではないです。
遊佐:千空たちからすると、自分たちとは違う方向を向いて科学を使っているから悪いように見えるかもしれませんが、彼らに対して一緒にやろうと言ってあげていたりもしますからね。
究極のアマチュアチームを迎え撃つ
ーーおふたりのキャラクターたちに立ち向かう千空にはどんな印象をお持ちですか?
野島:こちらのプロチームに対して、究極のアマチュアチームを率いる人物ですよね。ゼノと千空は対比できる関係で、同じ科学者であるものの、世界に対してある種ネガティブな捉え方をしているゼノ。一方、千空は仲間を大切にしたり、自分のためだけではない科学の使い方をしていたりして。そんな千空だからこそ仲間が集まったり、人望があるのでしょうから、やっぱり真ん中に立つべき存在なんだろうなと思いますし、個人的には憧れのようなものも感じます。
あとアマチュアということで、思考がちょっと凝り固まっているプロにはできない柔軟な発想力が“世界を変えてしまう可能性”を秘めていて。僕としても夢があるキャラクターだなと思っています。
遊佐:間違いなく天才ではあると思うんですけど、それ以上に努力の人ですよね。好奇心を満たすための貪欲さもあって非常に未来を感じさせてくれます。
先ほど僕らのキャラクターはプロフェッショナルと言いました。実際、僕らのキャラクターは元の世界をよく知っているからこそ、復元することだって可能だと思います。しかし千空は、そこでなにができるのかと先を切り開いていく人なんですよね。そこは少年ならではの可能性を感じます。
ーー最後に、今後の展開を楽しみにされている方々へメッセージをお願いします。
遊佐:第4期は大変です。
野島:でもようやく出会うべき相手と出会い、精鋭メンバー同士が拮抗していく様子というのは、これまで見てくださった方にとっては集大成のように感じるんじゃないかなって。そこは期待してほしいところですし、本当に僕らは一番おいしいところで出てきたなと(笑)。熟した同士がどうぶつかり合うのか、千空たちがどれだけ成長したのか、そしてゼノやスタンリーがどれだけ大人なのかを味わっていただけたら面白いんじゃないかなと思います。
遊佐:これまで千空たちは科学でリードしてきた立場でしたが、今回は相手側がリードしています。そんな中でどうやって生き抜いていくのか、それとも生き抜かないのか(笑)。千空たちはそれほど苦しい立場に追い込まれていくので、ぜひとも見守っていただければと思います。
[取材・文・撮影/MoA]