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黒澤映画の魂に、「スター・ウォーズ」の“楽しさ”を乗せて――『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume3『The Duel: Payback』水野貴信監督インタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2021年、世界中のクリエイターが独自のビジョンで「スター・ウォーズ」を描く画期的なプロジェクトとして始動した『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。

その待望のシリーズ第3弾となる『スター・ウォーズ:ビジョンズ』Volume 3が、2025年10月29日(水)より、ディズニープラスにて独占配信中です。

本シリーズに参加する作品の一つが、神風動画+ANIMAによる『The Duel: Payback』。今作は、Volume 1で発表され、黒澤明監督の時代劇への深いリスペクトを込めた作品として世界中のファンから絶賛された『The Duel』の続編。主人公である謎の浪人(ローニン)が、新たな仲間と共に再び熾烈な戦いへと身を投じていきます。

今回、前作に続き監督を務めた、水野貴信監督にインタビューを実施。偉大な前作から受け継いだもの、続編だからこそ挑戦できた新たな“ビジョン”について、じっくりと伺いました。

 

 

【写真】『スター・ウォーズ:ビジョンズ』『The Duel: Payback』水野貴信監督インタビュー

再び「スター・ウォーズ」を作れる喜び

──前作『The Duel』から約3年、再びこの企画に参加が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

水野貴信監督(以下、水野監督):前作『The Duel』を作り終えた直後から、すでに「次の作品も作りたい」という気持ちがありました。それから1、2年ぐらい経った頃に今回のお話をいただき、「また作ることができる!」という喜びでいっぱいでしたね。

──前作は世界中から大きな反響があったかと思います。ファンからの声は監督の元にも届いていましたか?

水野監督:「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン  2025」に登壇するまで、正直どれだけの方が『The Duel』を支持してくださっているのか、あまり実感する機会がありませんでした。ですが、会場を歩いているとファンの方から声をかけていただいたり、日本のファンの方々の姿を見かけたり、さらに公式で『The Duel』のブースを出していただいているのを目にして、「もしかしてファンの方がいてくれるのかも……!?」と。そこで少しずつ自信がついてきたんです。

そして、登壇時に思い切って英語で「ローニン イズ バック!(浪人が帰ってきた!)」と一言言ったところ、会場がすごく沸いてくれて。「あ、よかった!」と心から思いました。

それまで知らなかったファンの皆さんの熱量を肌で感じることができて、本当に嬉しかったです。

 

黒澤映画へのリスペクトから、「スター・ウォーズ」原体験の“楽しさ”へ

──前作は黒澤明監督作品のエッセンスを取り入れた一作でしたが、続編である今作では、どのような方向性を目指されたのでしょうか?

水野監督:前作では、映像のコンセプトとして、日本の時代劇、黒澤明監督の時代劇の雰囲気を本当に前面に押し出すことを意識していました。ジョージ・ルーカス監督が黒澤監督の作品の影響を受けたという話を聞いて、その影響を最大限に強くしたものを作ろうと。その結果、全体的に空気感の渋い作品になったと思います。

だからこそ今作では、子供の頃に観た「スター・ウォーズ」の楽しさやワクワク感を取り入れたいな、と。特に『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』でイウォークがいっぱい出てくる「エンドア」での戦いの楽しさや、ユーモアを入れ込みたかったんです。

──ご自身の「スター・ウォーズ」原体験が今回のコンセプトに繋がっているのですね。

水野監督:そうですね。多分、僕らの世代の人はみんなエピソード4(『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』)が原体験だと思うんですよ。「スター・ウォーズ」で育ってきた世代と言いますか。

もちろんエピソード4も好きですけど、子供だった自分が一番印象に残ったのはエピソード6でした。イウォークが出てきたり、スピーダー・バイクで森の中を走ったりとか、あの感じがすごく好きだったなと。

──今作にもイウォークが登場しますが、それは監督の希望だったのでしょうか?

水野監督:いえ、デザイナーの岡崎(能士)さんが「イウォークを出したい!」とおっしゃいまして(笑)。

プロットの段階で上がってきたので、個人的にも「やった!イウォーク出せる!」と嬉しい気持ちでした。可愛いですよね、今回は法被まで着ていて(笑)。

──今作のデザインを手がけた岡崎能士さんの「スター・ウォーズ」愛が企画の原点だったと伺いました。

水野監督:そうなんです。そもそも、この企画は岡崎さんが昔から「スター・ウォーズ」が大好きだったことから始まっています。

神風動画代表の水﨑(淳平)がルーカスフィルムからお話をいただいた時に、まず岡崎さんに声をかけて、「どういう『スター・ウォーズ』を作りたいですか?」と聞いたところから、「こんな感じの時代劇で」と提案いただいたんです。

 

 

──ドロイドのデザインも非常にユニークでした。C-3POを彷彿とさせつつ、ボディにはまるで刺青のような模様が入っていたり、和と洋が融合したデザインになっています。

水野監督:そうした和のテイストと「スター・ウォーズ」らしさのバランスは、かなり難しかったです。あまりにも日本っぽくしすぎると、今度「スター・ウォーズ」じゃなくなってしまう。「どのくらい足したらいいのか」「どのぐらいに留めるべきなのか」は色々と試行錯誤しています。

──賭場に改造されたAT-AT ウォーカーのデザインも独創的でした。

水野監督:あのAT-AT ウォーカーのことを、僕らは「AK-BK(エーケービーケー)」と呼んでいるんです。なぜかと言うと、AT-ATを赤べこっぽくデザインしまして。それで、「AK-BK」という名前に(笑)。

今作で一番大事にしたかったのは、AK-BKが崩れていって、その足の裏で戦うシーン。そこはどうしても入れたかった。ただ、簡単に倒れるとチープになってしまうので、ある程度の尺を使って、ゆっくりしっかり倒れていく、というところにこだわりました。

 

映像と音楽がもたらした「スター・ウォーズ」の魂

──神風動画の代名詞とも言えるハイクオリティなCGアニメーションに加えて、今作ではあえてアナログなフィルムの質感を追求されています。

水野監督:フィルムの質感については、前作から引き続き黒澤映画を意識しています。

具体的に言うと、『七人の侍』はフィルムがすごく荒れているんですけど、それだとちょっと荒れすぎかなと。『用心棒』だとちょっと綺麗になりすぎている感じもあるので、その中間あたりを狙っていこうかなと。

分かりやすいところで言うと、風が吹いていて、砂煙がすごく舞っているとか。あとは、望遠レンズで撮ることで生まれる圧縮効果で、奥のものが大きく見えたりする迫力のある絵作り。そういった黒澤監督の作品でよく見られる空気感や手法を意識しました。

 

 

──その一方で、ライトセーバーなどのエフェクトは「スター・ウォーズ」らしさを追求されているように感じました。

水野監督:フィルム的には黒澤映画に近づける一方で、セーバーやブラスターのエフェクトは、「スター・ウォーズ」のままでいきたかったんです。セーバーの動きの残像などは必ず入れるようにして、光り具合も映画の「スター・ウォーズ」に近いようにしています。ちなみに、ライトセーバーの細さもエピソード4〜5へのリスペクトのつもりです。

──音楽も、壮大な「スター・ウォーズ」らしさと、時代劇的な雰囲気が融合した素晴らしいものでした。

水野監督:前作と同じ作曲家の、井内啓二さんにお願いしました。

前作の時は、僕は「時代劇感」を前面に出したい、井内さんは「スター・ウォーズ」を作りたいというせめぎ合いがある中で色々と話し合って、あの形にまとまったんです。

映像を作っている段階で「ちょっと時代劇に寄せすぎたかな」と不安になることもあるんですけど、そこで音楽が入った時に「あ、『スター・ウォーズ』だ!」と(笑)。今作では井内さんとの信頼関係もできていたので、「全面的に自由にやってください」とお願いしました。

 

何を削り、何を残すか。短編ならではの難しさ

──続編を描く上で、物語の構成に変化はありましたか?

水野監督:基本的な設定は引き継いでいます。ローニンとR5-D56(ドロイド)が旅をしていて、赤いカイバー・クリスタルを集めている。前回の旅の続きで、また新しいクリスタルを探している途中で色々巻き込まれていく感じです。

日本の時代劇も、明確な最終回を描かずにずっと旅が続いていく作品が多いので、そういったストーリーの流れを意識しています。

 

 

──短い作品の中に、これだけのアイデアと情熱を詰め込むとなると、尺との戦いがあったのではないでしょうか。

水野監督:そうですね。脚本があって、色々演出プランを考えていく中で、いっぱい詰め込んではいくんですけど、どうしても入りきらない部分が出てきて。

今作でも、最初のプランを固めている時に、前半の雪山での戦いだけで、もう20分ぐらいいきそうになっていて(笑)。いろいろと省きつつ、まとめていきました。

──最後に、シリーズのファンに向けて、メッセージをお願いします。

水野監督:前作『The Duel』よりもさらにパワーアップしたものをお届けできると思いますので、ぜひ観ていただけたらと思います。

そして『スター・ウォーズ:ビジョンズ』は、世界中の「スター・ウォーズ」ファンに、「日本には色々な面白いスタジオがあるんだよ」と知っていただける、すごく良い機会だと思っています。こういった機会を与えていただいて、本当に光栄です。

 
[インタビュー・撮影/失野]

 

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