蓼科の森に佇むオーベルジュで触れる、フランスの「上質な日常」――ホテル ドゥ ラルパージュ――
涼やかな風を追いかけ、信州・蓼科高原へ。蓼科山、八ヶ岳の山々を望む高台に佇む「ホテル ドゥ ラルパージュ」。フランスの邸宅のような美しいオーベルジュで伝統的なフレンチと希少ワインの数々を味わう上質なステイを―。
長野県蓼科高原。遠く蓼科山や八ヶ岳を望む緑豊かな高台に、2024年、オーベルジュ「ホテル ドゥ
ラルパージュ」が誕生した。かつて旧宮家の別邸があった跡地ということもあり、周囲からは適度な距離感が保たれている。「ラルパージュ」とは、フランスのアルプス地方の方言で「夏の高原の牧草地」の意。その名の通り、豊かな自然に囲まれた邸宅の佇まいだ。
なだらかな坂のアプローチを抜け、エントランスから一歩踏み入ると、天窓から太陽が燦々と降り注ぐロビーが広がっている。「ウインターガーデン」と名付けられたこのロビーには、18~19世紀に描かれた絵画の数々やシャンデリアが飾られていると同時に、デザイン性と機能性を持ち合わせたモダンな家具も配置。時空を超えた「本物」が絶妙に調和し、心地いい空気と時間が流れている。
フランスの邸宅に招かれたような「上質な日常」を―。両親に連れられ幼少期から幾度となくフランス各地を訪れたオーナーの戸部浩介氏が自身が触れた上質な暮らしや文化をこのホテルに昇華させた。戸部氏は「使い込んだカシミアの手触りのような上質な日常」と表する。自らフランスを中心にヨーロッパから探し出した美術品や調度品が、ロビーやレセプションなど随所に設えられている。
伝統的なフレンチと厳選されたワインの鮮烈なペアリング
オーベルジュの楽しみは、やはり「美食」。レストラン「ル・ジャルダン」はフランスから取り寄せた極上食材と、地元・長野の季節の新鮮な素材を、伝統的な手法を用いて「毎日でも食べ飽きないフランス料理」を提供する。料理監修は、フランス各地の星付きレストランで腕を磨き、名店で料理長を歴任した故 東敬司(あずま けいじ)シェフ。そのレガシーを継ぐグランシェフ星野辰哉氏の下、料理においても「上質な日常」と「本物」へのこだわりが貫かれている。
「フレンチではありますが、バターやクリームはあまり使わず、食材そのものの味わいを生かしてソースなどでメリハリのある一皿に仕上げています」と星野氏。果実やワインを煮詰めたソースや、スパイスやハーブがアクセントとなる一皿は、食べ応えもあり満足感が高い。が、食後感はなんとも軽やか。確かに明日もまた食べたくなるフレンチだ。
さらに、料理の一皿一皿を引き立てるのがワインの数々。フランス全土から選び抜き、直接輸入した約2000本がそろう。銘醸地のグランヴァンから、日本ではお目にかかれないようなレアワインまでがセラーで静かにその時を待っている。
バイ・ザ・グラスはシャンパーニュ1種、白と赤は各3種を用意。「食材そのものとの相性、ソースや付け合わせの素材と合わせることで生まれる味わいの変化、そして、お客さまの好みから選べるようセレクトしています。ペアリングの楽しさ、好きなワインを味わう喜びを存分に堪能していただきたい」とレストラン支配人でソムリエの小前岳志(こまえ たけし)氏は語る。
ソムリエとして約40年、グランメゾンなどでキャリアを重ねてきた小前氏は、ワインのキャラクターやワインが持つ物語をわかりやすく、生き生きと紹介してくれ、その語り口に引き込まれてしまう。おしゃべりを楽しみながら今宵のワインを吟味し、料理とともに味わう。マリアージュを超えた
目眩く風景が目の前に広がるに違いない。
フランス直輸入の銘醸ワインの数々が静かに時を刻む
ディナーの前には、バー「ル・レーヴ」に立ち寄りたい。日本未輸入の珍しいスピリッツやリキュールもそろう。アペリティフ(食前酒)はもちろん、重厚で落ち着く雰囲気は、ディナーの余韻に浸りながらディジェスティフ(食後酒)を楽しむのもいいだろう。
今回、秘蔵のワイン約2000本が眠るセラーを案内してもらった。ワインはすべて、ホテルオーナーの戸部氏の親交のあるフランスのワイン商から輸入。さらに、銀座の「マキシム・ド・パリ」や「銀座レカン」で活躍した伝説のソムリエ、 下野隆祥(しもや たかあき)氏もアドバイザーとして参画している。
「長旅をさせることなく直接届くので、ワインに負荷をかけず、フランスで味わうような良好なコンディション、みずみずしさが楽しめます」と小前氏。ボルドーやブルゴーニュのグランヴァンをはじめ、未輸入のレアワイン、さらに日本ではなかなかお目にかかれない貴重ワインやバックヴィンテージなど、ワインラヴァー垂涎のラインナップを誇る。
そうした銘醸ワインと料理のペアリングイベントも開催している。初夏に催された『シャトー・ペトリュス 1976年』を含む7アイテムのワインをテイスティングする会は好評を博した。秋にはDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)の『エシェゾー 1979年』を楽しむ会を開催予定だ。
アンティークグッズの展示も。まるでワインの博物館
イベントの際には、小前氏のナビゲートでワインセラーを見学するツアーも行っている。戸部氏が収集したワイングッズのコレクションも展示。まず、黄金の塔がモチーフの看板に圧倒される。オープナーやテイスティングに用いるシルバーのカップ、タストヴァンも18世紀のものからある︒古いだけでなく、特別な用途のものもあって大変興味深い。浮力を用いたアルコール濃度計のような珍しい品もある。いずれもワインの楽しみ方の歴史を感じさせる品々で、これらを手に取って体感できる、またとない機会といえるだろう。
特別なワインと過ごす上質なステイが、蓼科高原の豊かな自然の中で待っている。
秋の2大イベント
秋薫る蓼科の夕べ〜カスレディナー〜
フランス南西地方の郷土料理「カスレ」を味わうディナーイベント。地元・信州の食材を織り交ぜたコースの中で正統派のカスレを、日本未輸入の南仏を中心としたワインと楽しむ“至福のマリアージュ” 。秋の訪れを感じる蓼科高原で心も体も温まる美食のひとときを堪能したい。
【2025年10月11日(土)】
■17:30~ アペリティフ(ミニコンサート)
■18:00 ディナー
■料金:ディナーコース 一人 27,000円(税・サービス料込)
■ワインペアリングセット 一人 10,000円(税・サービス料込)
※ディナープランには含まれておりません
D.R.C.エシェゾーの会
世界に君臨するフランス、ブルゴーニュの銘醸「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(D.R.C.)」が手掛ける『エシェゾー』の希少なバックヴィンテージ、1979年を味わう会。ほかにも厳選したワイン数種が楽しめる。秋の夜長、ディナーコースとの極上ペアリングを。
【2025年11月29日(土)】
■17:30~ アペリティフ
■18:00 ディナー
■料金:イベント 一人 120,000円(アペリティフ、ワイン、ディナー、税・サービス料込)
■宿泊プラン エグゼクティブルーム(1室2名)358,475円(イベント、朝食、税・サービス料込)
※1名、3名の料金設定もございます
HÔTEL de L'ALPAGE「ホテル ドゥ ラルパージュ」
長野県茅野市北山4035-1820
電話:0266-67-2001
[蓼科のホテル【公式】ホテル ドゥ ラルパージュ(HÔTEL de L'ALPAGE)]
text by Asako NAKATSUMI
photographs by Shingo MIYAJI