【コラム第8回】税金の話~どうなった?103万円の壁〜 勝島一真(税理士・行政書士)
ビジネスカツシマの勝島一真です。私たちビジネスカツシマグループでは、開業支援業務、税理士業務、経営・財務会計コンサルティング業務、行政書士業務、事業承継・M&A業務、それぞれの分野を特化させて専門性を磨き経営のお役にたてるビジネストータルサポートを目指しております。
第8回目となる今回のテーマは「税金」についてです。わたくしたちが身近に感じる税金としてモノを購入したときにしはらう「消費税」や給与から天引きされている、また確定申告をおこなう「所得税」などがあります。
所得税や消費税は特に最近、国会でよく議論されています。
所得税については、「103万円の壁」
消費税については、「減税するのか増税するのか」
ひとつだけではない壁
まず所得税の「103万円の壁」についておはなししていきます。会社役員、会社員、パート、アルバイトなど給与所得者の場合、いままでは所得税のかからないラインが「年収103万円まで」でしたが、令和7年分から所得税のかからないラインが「年収160万円まで」引き上げられます。
毎年10月頃になると「103万円の壁」を意識してしまい、もっと働けるのに「103万円の壁」をこえないよう調整をするなど「年収の壁」により働き控えが生じる現象がおきていました。
そもそも「103万円の壁」をこえてしまうと何がおきてしまっていたのか?
年収103万円を超えると、
① 本人の所得税が発生してきた
② 夫婦の場合は旦那さんや奥さんの税金が少し高くなった(税金の扶養から外れる状態)
③ 子供の場合はお父さんやお母さんの税金が少し高くなった(税金の扶養から外れる状態)
このように、いままでは「103万円の壁」をこえてしまうと、本人、家族共に税金面が増えてしまうことになり「壁」を意識した働き方になっていました。
今回の改正で年収160万円まで本人や家族の税金が増えなくなるため、今より働く時間を増やすことができることになります。
しかし他にも注意しなければならない「壁」がいくつかあります。
今回の改正は所得税の壁が改正されたものであり、住民税の壁と社会保険の壁は今までどおりとなります。
・住民税の壁(110万円の壁)
年収が110万円を超えると住民税が発生してきます。
・社会保険加入の壁(130万円の壁)
年収が130万円をこえると、社会保険の扶養には入れず、原則として本人で国民年金や厚生年金、国民健康保険や社会保険への加入義務が発生してきます。
今回の議論では「税金の壁(103万円の壁)」が話題としてよくあがっていましたが、社会保険の壁(130万円の壁)の存在はともても大きなものです。税金の壁が103万円から160万円まで見直されたことにより社会保険の壁(130万円)もこえ160万円ギリギリまで稼いだ方が社会保険や国民健康保険への加入により結果として手取りが増えたことの実感がわきづらいと感じる方もいるかもしれません。
日本の消費税は高いのか低いのか?
日本に消費税が導入されたのは、今から36年前の4月でした。実はそのさらに10年前から消費税の導入は検討されていましたが、ことごとく反対にあい導入を見送られてきた経緯があります。
消費税導入から8年後に3%から5%、平成26年に8%、令和元年に10%と税率が引き上げられてきました。
36年前の消費税の導入当時、小学生だった私はあまり意味を理解していませんでしたが、今まで100円とか50円で買っていたものが103円になったり51円になったりと、何となくキリのわるい金額になったなという印象や、導入前まではあまり1円玉を使うことがありませんでしたが、消費税導入以降1円玉の使うことが多くなったことなど子供ながらに感じた記憶があります。
令和元年の10%引き上げ時には、食品などは8%、それ以外は10%などいわゆる複数税率が導入されました。同じ税金の中で複数の税率が存在する複数税率は、諸外国ではすでによく使われていますが、日本の消費税は今まで3%なら3%、5%なら5%と単一税率であったことから、消費税の複数税率には最初は慣れず、イートインで食べた場合はどっち?など導入前に混乱していたのが最近のように感じます。
諸外国の消費税の税率と見てみると、
1位:ハンガリー(27%)
2位:デンマーク(25%)
3位:ノルウェー(25%)(食品15%)
ベスト3は北欧となっております。
世界の消費税平均税率ラインは17.7%となっており、世界と比較すると日本の消費税10%は42位と低いことがわかります。
消費税はヨーロッパ諸国が高い傾向にあり、アジア諸国は低い傾向にあります。ベスト3の国は消費税がおもに医療や福祉に充てられており国民に分かりやすい形で社会サービスが提供されているため、負担が大きくともリターンが実感しやすくなっています。
消費税に限らず税金の使い道が国民に共有できているかどうかはとても大きなポイントであると思います。また日本は日本なりの確立した医療制度や福祉制度などの仕組みや考え方があるので一概にはいえませんが、税金の使い道をもう少し国民に知ってもらうことが増税をするにしても改正をおこなう上でも納得しやすくなるポイントであると思います。
このように使い道があまり国民に伝わっていない消費税については、増税することもできず減税することもできずというのが現状であると思います。
【勝島一真プロフィール】1976年生まれ。高校からアメリカンフットボールを始め、日本大学、株式会社オンワード樫山でアメフト選手として在籍。2002年税理士である父の急逝にともないアメリカンフットボールを引退し、株式会社勝島経営研究所に入社。その後、税理士法人ビジネスカツシマを設立し代表税理士に就任。税務・会計顧問業務のほか、開業支援や海外進出・M&A支援など様々な角度からのサポートを行う。
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過去の勝島一真(税理士・行政書士)連載コラム
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