「今年、賃上げは本当にあったのか?」全国調査で見えた格差と不満の声|求人ボックス 「2025年 賃上げ実態調査」
2025年、政府主導の「賃上げ推進」が叫ばれる中、どれだけ効果を実感した人がいただろうか――
月間1,200万人が利用する求人情報の一括検索サービス【求人ボックス】では、全国の働く人を対象に「2025年 賃上げ実態調査」を実施。
年代・職業・雇用形態・役職を問わず集まったリアルな声からは、 “賃上げの恩恵を受けた人”と“変わらなかった人”の鮮明な差 が浮かび上がってきた。
本記事では、調査結果とともに、ボーナス・給料に対する満足度や、転職意識の変化までを読み解く。
賃上げされたのは全体の25.6%。雇用形態で大きな差
まず、2025年における賃上げの有無については、 「なかった」と回答した人が74.4% にのぼり、「あった」と回答した人は25.6%にとどまった。
雇用形態別に見ると、 「正社員」や「契約社員」では3割以上が賃上げを実感している 一方で、 「パート・アルバイト」や「派遣社員」では1〜2割程度 にとどまり、雇用形態による格差が顕著に表れた。
賃上げ額の平均は月額6,571円、最頻値は「3,000円未満」
賃上げがあった人に対し、金額(ベースアップ・定期昇給を含む)を尋ねたところ、 「3,000円未満」が最多で120人(40.3%) 。以下、「10,000円〜12,999円」44人(15.3%)、「5,000円〜6,999円」41人(13.7%)と続いた。
加重平均による賃上げ月額(※1)は6,571円となり、全体の53.7%が「5,000円未満」の範囲に集中 している。
雇用形態別で見ると、 「正社員」「契約社員」「派遣社員」では加重平均が6,000円〜7,000円台 で推移しているのに対し、 「パート・アルバイト」は75.0%が「3,000円未満」 にとどまり、賃上げ額にも明確な差が見られた。
給料満足度:「満足」はわずか29.7%。不満の声が多数
給料に対する満足度では、 「とても満足」「まあ満足」を合わせた“満足派”が29.7% にとどまった。一方で、 「やや不満」「とても不満」と回答した“不満派”は約7割 にのぼり、多くの人が現状に不満を抱えていることが分かる。
賃上げ額別に見ると、 「賃上げなし」および「〜4,999円」の層では「とても不満」が最多 となり、「5,000円〜9,999円」では「やや不満」が最多だった。
一方、 「賃上げ10,000円〜」では「まあ満足」が最多となり、満足派は52.4% と半数を超えた。賃上げ額が高いほど給料の満足度も上がる傾向が見られた。
給料・ボーナスについての“本音”コメント(抜粋)
給料やボーナスに対する評価は、賃上げの有無や金額だけでは測れない。職種や雇用形態、ライフステージによって、満足・不満の理由はさまざまある。
ここでは、回答者から寄せられたリアルな声を一部紹介する。
給料・ボーナスに満足している人
「(賃金が)高くなるなら続ける気持ちも高まる。」(30代/看護/派遣社員) 「 60過ぎても下がることなく若干ベースアップしている ので満足している。」(70代以上/点検/正社員) 「会社の利益から考えたらもう少し頂きたいと思いますが、 事務員としては高いほうかなとも思って転職になかなか踏み切れない です。」(50代/事務・受付/正社員) 「 少額でもいいので、基本給は毎年上げてほしい 。6年ほどそのままが現状。ボーナスも6年ほど前に4回から2回に減った。」(30代/事務・受付/正社員) 「給料は悪くないとは思うが、残業や夜勤の手当のおかげで割増でもらえているだけだと考えれば 疲労に見合った給料か分からない 。」(20代/工場・製造/派遣社員) 「扶養内で働いており、金額の調整がめんどくさい。」(40代/介護・福祉/パート・アルバイト) 「 残業をしないとちゃんとした給料を得られない ため、転職したい気持ちの方があります。」(40代/事務・受付/パート・アルバイト)
給料・ボーナスに不満がある人
「今年の5月から給料が下がり、ボーナスもあてにならない。モチベーションがだだ下がりで、 やる気がなくなった 。」(50代/営業/正社員) 「 業務量に対して給与が低い 。見合わないので転職を考えている。」(30代/WEB・インターネット・ゲーム/正社員) 「毎年、 要求に応じてもらえない 。」(30代/コメディカル・その他医療系/正社員) 「 正社員よりも、今は契約社員の方が給料が良い 時がある。」(50代/土木・建設工事/正社員) 「 物価高なのに給料が下がってモチベーションも下がり 益々やる気が起きない。」(40代/工場・製造/正社員) 「 社員並みに働いているが、嘱託なので正社員ほどの給料はもらえない 。」(60代/販売・接客・サービス/嘱託社員) 「正規雇用ではないので ボーナスが支給されない。時給も上がらない。生活が厳しい 。」(40代/事務・受付/派遣社員) 「パート時給。 上がったとはいえ、時給にして5円アップのみ 。」(50代/金融専門職/パート・アルバイト)
「今、転職するなら何を重視する?」の結果が示す“働き方の再定義”
転職時に重視する項目として最も多かったのは「給料・ボーナス・待遇のアップ」 だった。ただし、賃上げの有無でみると、「正社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」では賃上げありの場合、賃上げなしよりも「給料・ボーナス・待遇のアップ」の割合が下がり、 「労働時間の短さ・残業の少なさ」や「企業の将来性・安定」が増える 傾向にあった。
【総評】「賃上げの実感」には、なお遠さも
2025年、政府の賃上げ推進策が話題を集める中で実施した本調査は、多くのビジネスパーソンが「実感なき賃上げ」を抱えている実態を明らかにした。全国のビジネスパーソンに行ったアンケートでは、「今年、賃上げがあった」と答えた人は全体の25.6%。つまり、7割以上の人は給与が据え置きであったと回答しており、「賃上げの波に乗れていない層」が多数派だった。
また、たとえ昇給があったとしても、金額に満足している人は少数派。最も多かった賃上げ額は「月3,000円未満」(40.3%)で、加重平均は月額6,571円。物価上昇が続く中で、この水準では生活実感としての「豊かさ」は得られず、むしろ「実質的な減収」と捉える人も少なくない。さらに、雇用形態ごとの格差も深刻で、正社員や契約社員の加重平均が6,000〜7,000円台であるのに対し、パート・アルバイトでは75%が「3,000円未満」の昇給にとどまっていることから、非正規雇用層の不満や不安が浮き彫りとなった。
給料やボーナスに対する満足度も低調で、「とても満足」「まあ満足」を合わせた“満足派”は全体の29.7%。不満派が約7割を占め、声の多くには「仕事量に見合っていない」「社会保険料に飲まれた」「ボーナスが出ない」といった切実な本音が見られた。つまり、単なる金額の問題ではなく、努力や成果と報酬のバランス、あるいは企業との信頼関係の欠如が背景にあると考えられる。
一方、転職時に重視するポイントでは、「給料・ボーナス・待遇のアップ」が最多であったものの、昇給を経験した層では「労働時間の短さ」「企業の将来性・安定性」などを重視する割合が高まっていた。これは、給与が一定水準に達した後の働き方においては、報酬よりも時間的自由や企業の安定性といった“質的価値”がより重視される傾向を示していると考えられる。特に、昨今の物価高や働き方改革の影響もあり、ワークライフバランスや雇用の持続可能性といった側面が、転職の意思決定において重要な要素になりつつある。
いま、多くの人が「給与だけでは決まらない働き方の正解」を模索していると言えるだろう。
「2025年 賃上げ実態調査」概要
■調査主体:株式会社カカクコム
■調査対象:求人ボックス会員のうち、「正社員」に関する検索履歴がある人に調査を実施。現在、「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」として働く男女1,154名の回答を抽出。
■調査方法:インターネット調査
■調査期間:2025年6月16日(月)~6月25日(水)
※構成比(%)、差分(pt)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合や、少数第1位までの計算とは数値が異なる場合があります。