ジャングリア沖縄の課題は?「交通アクセス・無償運送・人材不足…「日本では出来ず、海外で出来ること」を押さえる
観光やテックビジネスの一線で活躍する企業や事業者、アジア各国のスタートアップが集い、議論や交流を深めるイベント「Asia Newtravel Bootcamp 2025」が沖縄科学技術大学(OIST)で実施された。 沖縄の主要産業である観光業についての議論を中心に据えたプログラムが展開された中で、「テーマパーク、DX、規制緩和から産まれる新たなビジネスチャンス」と題し、「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を巡るトークセッションもあった。 スピーカーはジャパンエンターテイメントディレクターの宮里大八氏、沖縄ツーリスト代表取締役会長の東良和氏が務め、主に現在議論されているジャングリア沖縄へのアクセスと2次交通、そして沖縄の観光業界における人材について話が及んだ。
大きな課題は交通アクセス…観光客からの懸念も
冒頭では宮里氏がジャングリアのテーマについて「沖縄から新しい旅の価値を提案し、変革を起こすこと」と説明し、「Power Vacance!!(パワーバカンス)」というコンセプトにも触れつつプロモーションビデオを放映した。 JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)で現在準備中のアトラクション・施設では、200m上昇する気球やリラックスできるスパ(温泉)などを挙げ、特にアニマルロボティクスによるリアルな造形の恐竜について「動く恐竜に触れられるという体験を提供している場所は世界を見渡しても他にない。 体験価値、没入感を高める環境を整えています」と自信を覗かせる。
一方で、現在地元地域と協議を進めている2次交通については、課題意識を明確に示した。 「やんばるの道をどうするかは課題として捉えています。ジャングリアは美ら海水族館から20分、山の上にあるのでアクセスは難しい。国や県、市町村も含めて交通対策に取り組んでいるところです。関心を持っている観光客の皆さんからも交通に関する声は多く、渋滞やマナーに対する懸念があるのも事実。現在、ホテルからのシャトルバスやオンデマンド交通など、交通の『分散化』を考え、事業者と調整しているところです」(宮里氏)
「無償運送」の規制緩和を2次交通に活かす
これを受け、東氏は「ジャングリアと美ら海水族館の場合は集客が圧倒的なので、シャトルバスを使えば良いと思います。渋滞については近隣住民の方々との調整が続いていますが、私は楽観的に考えています」と持論を述べた上で、「2次交通で役立つこと」として国土交通省の資料を示し、無償運送についての規制緩和を取り上げた。 提示された資料は昨年3月に出された通達「道路運送法の許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」で、地域の宿泊事業者やツアーなどのサービスを提供する事業者・観光ガイドなどが、自家用車を使って顧客の送迎を行うことができる範囲を明確にしたもの。 自家用車による無償運転は、お礼の気持ちベースの謝礼や燃料費、有料道路使用料、駐車料金、レンタカー代などの実費の請求・支払いについては許可なしで自由に行える。一方で、運送そのものに対しての対価が発生する場合には許可が必要という建て付けだ。 こうした事情を踏まえて、東氏が触れた主なポイントは以下の3つ。 ①宿泊施設から駅や空港への送迎の中で、土産物店などへの立ち寄りや観光スポットへの送迎も可能であることが明記された。 ②ツアーやガイドなどのサービス提供者は、運送そのものに対する支払いがなければ、利用者を駅や空港、ツアー実施場所まで運送する許可は不要。 ③通訳案内士などの資格を有する観光ガイドが、ガイドを目的として利用者を運送する場合は、運送に対する支払いが発生しなければ、許可は不要。
道路運送法の許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン
①、②について東氏は「旅行会社としても好機で、宿泊先のホテルごとに無料送迎の体制を事業者同士で協議することができれば、かなり効率の良い活用の仕方ができると考えています」とコメント。 また、③に関しては「通訳案内士が白ナンバーの車でも案内できるようになったことは非常に大きなことで、観光業界としても正しい運用の仕方で旅客の利便性を充実させることが重要だと思います」と評価した。ただし「怪しい人たちが参入してくる可能性もあり、そうするとまた規制がかかるので、くれぐれも正しく使ってほしい」と警鐘も鳴らした。 加えて、③に関連して東氏は「通訳案内士を集めてマッチングサービスを開発すべきだと思います」と提案。「保険なども含めた体制を整えた上で、オフィシャルな形できちんとやれば差別化が図れる。DX、IT企業に取り組んでもらってこれが実現すれば、沖縄観光の中での新しい選択肢になるでしょう」と述べた。
地元人材の採用に注力、一方で観光業界の人材不足は未だ続く
7月の開業を目の前に、JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)の求人採用について宮里氏は「人材を増やしていくともチャレンジの1つで、沖縄の北部エリアにおいていかに地元の人たちに働いてもらうかということが直近の取り組みです」と話す。 規模感については、現在は正社員が200人程度で、JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)が完成すればナビゲーターやパフォーマーなど様々な職種も募り、将来的にはトータルで1300人程度になる予定だという。 人材育成という観点からは「高度観光人材育成に取り組む予定で、JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)だけでなく近隣のホテルなどとも連携しながら大学生をインターンで受け入れ、ゆくゆくはアジアからも人材を招くような人材育成拠点を築く予定です」とビジョンを語った。 一方、東氏はコロナ禍以降から慢性化している観光業界の人材不足について「困惑している部分」と厳しい表情を浮かべ、那覇空港の国際線を例に挙げた。 「例えば、沖縄の国際線の就航状況はコロナ前の8割しか戻っていません。2年7ヶ月もの間、国際線が閉鎖していたのでハンドリングできる人がもういないですよ。人が足りなくて、午後6時以降の国際線の離発着は今や5便しかないんですね。しかし沖縄に飛びたいという航空会社はいくらでもある。人手がいなくて断っている状況にあります。那覇空港には滑走路が2本あるので、本来であれば24時間稼働できる。長い目で見て、夜間も含めて賑わう場になれるポテンシャルがあるので、そういったことも視野に入れた施策をすることで観光地としてのステージが上がると思います」
「日本では出来ず、海外で出来ること」を押さえる
トーク終了後、フロアから「アジアのスタートアップとの競争や連携」についての質問があり、2氏がそれぞれ答えた。 宮里氏は「ジャングリアが新しいテーマパークということもあり、新しいチャレンジが生まれてくるはずなので、その部分で今日話した交通や人材育成のスタートアップの存在が必要になる場面は出てくると思います」と回答。 その上で「ジャングリアの沖縄成功から世界展開があれば、アジアのスタートアップとの連携は可能性として十分あります」と前向きな姿勢を見せた。 続いて「アジアのスタートアップは元気があって、急成長していると感じている」と東氏。ただし、その中で日本は規制がくびきになっていると指摘する。 「どこの資本であっても規制が緩い方に行くというのが自然な流れで、その点で日本は規制によって成長が阻害されている面もあると思っています。特に消費者庁は世界でも日本が最も厳しいのではないか。『日本では許されず、海外では出来ること』を押さえて大局を見ていく必要があるでしょう」