【輝く!昭和平成カルチャー】社会現象化した “たまごっち” 女子高生を中心に日本中を席巻
リレー連載【輝く!昭和平成カルチャー】vol.9:たまごっち
1996年冬、ゲームの中でペットを育てるかつてない携帯ゲーム機が登場
たまごっちの名前の由来は “たまご” と “ウオッチ" を合わせたもの。その名の通り、企画段階においては腕時計型にしてベルトも付ける予定であったが、最終的にはたまご型の本体にキーチェーンをつける形となって、1996年11月23日にバンダイから発売された。
初代たまごっちは当初6万個の製造を予定していたが、販売価格を引き下げるため30万個に変更され、先行して行われたテストセールスの結果がよかったことから最終的に100万個に再変更されたという。画面の中に登場するたまごっちと呼ばれる生物にエサを与えたり、フンの掃除をしたり “あっち向いてホイ” などで遊んだりしながら育てていく。
育て方の要素としては注射・しつけなど8つがあった。まめにコミュニケーションをとれば機嫌がいいが、エサをやり忘れたりフンの掃除をサボると機嫌が悪くなり、最悪の場合、死に至ることも。こうして育てながら数日経つと、“おやじっち” や “まめっち" など様々な生物に変身。どれに成長するかは、たまごっちとのかかわり方や体重、機嫌などに左右されるよう設定されていた。
日本のあちこちで、女子高生の鞄やPHSにぶら下がるたまごっち
たまごっちは、女子高校生をメインターゲットとして開発され、瞬く間に大人気に。ブームの発端は、当時のカリスマ安室奈美恵が音楽番組で持っていたからだとも、テレビドラマ『踊る大捜査線』でいかりや長介演じる和久平八郎が育てていたからだとも言われる。
入荷情報を聞きつけた人々が徹夜で店に並ぶ様子が報道されるなど、テレビを始めとするマスコミが取り上げたことで、ブームはさらに過熱。50個の抽選販売に対して抽選整理券が4,000枚配られたり、ラジオ番組で行ったプレゼント告知に15万通の応募が殺到したりもした。発売元であるバンダイには問い合わせの電話が1日に5,000件かかり、バンダイに直接たまごっちを買い求める人まで現れたが、バンダイ社員でさえ入手できないほどだったという。こうして、発売翌年の1997年を中心に、たまごっちは社会現象になるほど爆発的な人気を誇った。
たまごっちを持っていることがステータスとなり、街には数個のたまごっちを所有する人も。街では女子高生がカバンにぶらさげたり、PHSにつけたりしている姿が数多く見られた。また本来想定していた女子高生以外にまで人気は広まり、小中学生などの場合は学校に行っている間、母親が代わりに育てるという現象も。“ああっ、またフンした!” と、全国のママたちは家事の合間に、たまごっちに翻弄されていたのだった。
ⓒ バンダイ
1998年、第1次たまごっちブームは急速に終焉を迎える
ユーザーの間では “まめっち” “くちぱっち” “ぎんじろっち" などのキャラクターが人気で攻略本も登場。またブームの全盛期には、白いたまごっちが稀少だとして人気が集中し、1個9万円で取引されたり、色を塗り替えて稀少品であるように見せかけた商品が1個18万円で取引されたという話も。そしてたまごっちに似せた “〇〇っち” のようなパチ物も当然のように数多く登場。“買ってきたよ!” という親の言葉にがっかりさせられる子供が続出したのであった。
初代発売から約1年後、1997年12月に「たまごっちオスっち」と「たまごっちメスっち」が発売。大人まで育てたオスとメスを、ゲーム機本体同士を繋げることで結婚させ、子供を産んでくれるようになった。その後も 「森で発見!!たまごっち」「やさしいたまごっち」「サンタクロっちのたまごっち」など、2年半の間に9機種を発売するも、1998年に入ると、ブームは急速に沈静化。人気を受けて増産を重ねたバンダイは不良在庫の山を抱えることになり、在庫保管費などが経営を圧迫。バンダイによると、第1期のたまごっちシリーズは国内で2,000万個、海外で2,000万個の計4,000万個を販売したが、最終的に45億円もの赤字となったという。
2004年の第2次ブームを経て、現在も世界中で愛されるたまごっち
しかし、たまごっちはこれで終わりではない。第2期たまごっちは「かえってきたたまごっちプラス」として、2004年に赤外線通信機能を搭載して復活。他の人が持つたまごっちと “ツーしん” (通信)することで友達になったり、お土産を交換したり、恋愛結婚をして子どもを誕生させられるように進化した。こうした新しい機能を追加したシリーズが世界で展開され、同年11月には「祝ケータイかいツー!たまごっちプラス」が発売。携帯電話との通信機能が追加されたことで当時の中高生に人気が拡大し、新時代のデジタルおもちゃとして2度目の大ヒットを博すこととなる。また2008年には、ついにたまごっち史上初となるカラー液晶機「たまごっちプラスカラー」が発売。これまでのモノクロでは表現が難しかった、時間や天気の変化も分かりやすく表示されるようになった。
ⓒ バンダイ
さらに2023年にはWi-Fi機能を搭載した「Tamagotchi Uni」が全世界同時発売。世界中の人が育てたたまごっちと出会える、メタバース空間「Tamaverse」に行けるようにも進化した。また人気アニメやキャラクターとのコラボ商品も数多くの種類が登場し、現在、子供はもちろん小さい頃にたまごっちで遊んだ経験がある20〜30代、さらには初代たまごっちを持っていた40代まで、幅広い世代が楽しんでいる。
1996年の初代シリーズ発売からこれまでの売り上げ累計は9,400万個(2024年3月末時点)。たまごっちは “昔流行ったおもちゃ" ではなく、現在も世界中で愛されているのだ。