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3.11とそれから―被災者だった私が伝えたい災害を生き抜くための「3つの教訓」とは(前編)【福島県いわき市】

ローカリティ!

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産休中に東日本大震災に見舞われ、生後間もない息子と共に過酷な避難生活を強いられた櫛田(くしだ)さやかさん。インフラが寸断され、情報が錯綜する中で、どのようにして困難な状況を乗り越えたのでしょうか。現在、いわき語り部の会の一員として活躍する櫛田さんが、極限の中で学んだ貴重な教訓と、未来への希望を込めたメッセージを前編・後編でお届けします。
(後編記事https://thelocality.net/3lessons-sinsai2/)

【本記事中の画像一覧】

産休中に襲った大地震

 私は1月に子どもを出産したばかりでした。息子はまだ生後2カ月にも満たず、首も座っていない状態。私自身も産後の回復途中で、体はまだ本調子ではありませんでした。そんなとき、あの大地震に襲われたのです。

 3月11日は、友人が初めて息子に会いに来る予定を翌日にひかえた、ごく普通の金曜日でした。さらに翌週からは勤めていた地元のFMラジオ局に仕事復帰を予定していたため、まさに産休最後のひととき。ちょうど息子の世話をしていたそのとき、リビングの携帯電話から緊急地震速報のアラームが鳴り響きました。

私は息子をしっかり抱きしめ、壁に寄りかかりながら耐えていました。テレビが倒れ、加湿器が棚から転げ落ち、食器棚から皿やグラスが次々に落下し、割れる音が響き渡る。アパートの階下からは住民の悲鳴が聞こえ、まるで世界の終わりのような3分半でした。

揺れが収まった後も余震が続き、鉄筋コンクリートのマンションでさえ不安を感じる状況。私は息子をスリングに入れ、上着を羽織り、いつでも避難できるように備えました。

電話でひとこと「生きています」

 夕方、夫が帰宅し、一緒に避難所へ向かうことにしました。当時、私たちが住んでいたのは、公民館に支所機能があるような比較的大きい住宅地。職員も多く、何かしらの情報が得られると考えたのです。しかし、避難所は人であふれかえり、中に入ることすら困難でした。

そこで私は気づきました。「行政はすぐには頼れない。自宅で避難生活をしよう」と。

 避難所はすでにキャパオーバーで、職員も混乱している。これほどの災害が起これば、結局は自分のことは自分でなんとかするしかないのだと悟ったのです。そのため、在宅避難を決意し、家に戻ることにしました。雪が降る中、余震が続き、避難所では人々が悲鳴を上げている。そんな混乱の中にいるよりも、少しでも冷静な判断できる場所へ戻ろうと決めたのです。

 公民館で役立ったのは公衆電話でした。携帯電話はすでにつながらず、公衆電話には長蛇の列ができていました。夫とそれぞれの両親に「生きています」とひとことだけ伝え、私たちは帰宅しました。

翌日から、私は在宅避難生活を整え始めました。まず必要なのは水です。私は近所の公園に*耐震性貯水槽があることを知っていました。息子との散歩中に見つけていたのです。夫にポットを持たせ、「これに水をいっぱいもらってきて」と頼みました。

 その足でスーパーにも寄ってもらいましたが、すでに何も買えません。店舗も被災し、従業員も同じく被災者なのです。物流は完全にストップし、社会機能がマヒしていることが実感できてきました。

原発事故と新たな問題

 震災翌日、私は熱がありました。おそらく、授乳による負担で乳腺炎を起こしていたのだと思います。しかし、すでに病院機能もマヒしており、受診はできませんでした。

 普段からおむつや食料は多めに買い置いていましたが、水だけはどうしても必要でした。特に心配だったのは衛生面です。ミルクを作るための湯は少量で済みますが、哺乳瓶を清潔に保つための水が確保できない。消毒に必要な水も十分でなく、この状況で息子が病気になったらどうしようという不安が強くなりました。大人ですら医療機関にかかれないのに、乳児が感染症にかかったら命に関わります。

 そこで、私は母乳育児に完全に切り替えることを決意しました。仕事復帰を見据え、混合栄養で育てていましたが、母乳には抗炎症作用や抗菌作用があり、私の免疫を息子に伝えられる。消毒の必要もない。こうなったら人間本来の力に頼るしかない。何があっても私は体調を崩してはいけないのだと必死に思っていました。

 しかし、そこへさらに原発事故が発生。水道水の汚染が懸念され、乳児の摂取制限が始まるという新たな問題が降りかかりました。事態は混迷を極め、私たちはこれからどうやって生活を守り抜いていけばいいのか——模索し続ける日々が続いていくのです。(後編へ続く)

※ 耐震性貯水槽…水道管の一部を太くし、地震の揺れを感知すると両端が自動で閉じ、水が一時的に貯まる仕組みの貯水施設。

昆愛

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